幕末の激しい暗闘で敵味方唯一生き残った甲賀小五郎は、自分のルーツを知るというインディアンに誘われ、アメリカ西部に渡る。そこで自分の父がゼミナール族の酋長「黒い野牛」と知らされた小五郎。父の行方不明の陰に、同じく日本から渡ってきた伊賀忍者の存在を知った小五郎は、黒い野牛の名を継ぎ、父に授けられた真空回転うちの秘技で、悪人たちに立ち向かうのだった。
時代劇と西部劇の類似性については、例えば互いに翻案がなされていることなどからも窺われるかと思いますが、直接、大西部に忍者が乗り込んでしまう作品も、少数ではありますが存在いたします。本作もその系譜に連なる作品、西部に渡った甲賀忍者が、ライフル片手に大暴れする痛快作であります。
が、つい先頃「矢車剣之助」が復刊された堀江卓先生が描くだけあって、本作はストーリーといい、アクションといい、やはり色々な意味で衆に抜きん出るものがあります。
例えば、伊賀と甲賀の最後の血戦(これがまたギミック満載で実に堀江先生らしいバトル)が目まぐるしく繰り広げられた末、ただ一人生き残った主人公・小五郎が、自分の前に現れた怪しの忍者を捕らえ覆面を剥いでみれば、その下から現れたのはモヒカン刈りのインディアン! という冒頭の展開だけでもうたまりません。
そしてそのインディアンに誘われてあっさり西部に渡った小五郎が立ち向かうことになるのは、奇怪な「ホロホロ…」という叫びとともに、地中(!)から襲撃を仕掛けてくるホロホロ族というギミック満載の怪人集団というののもまた、堀江イズム満開であります。
さてヒーローであれば、強大な敵に立ち向かうにあたり、個性的で格好のいい必殺技を持っていてしかるべきですが、もちろんその点も抜かりはありません。
忍者ガンマンたる小五郎が操る「真空回転うち」は、高速でライフルを連射することにより作り出した空気の流れによって、弾丸を四方八方に自在に飛ばすというセンスオブワンダーな秘技。文章で説明すると、実に…ですが、しかし、ライフルを肩ひもで袈裟懸けにしたスタイルから、縦横無尽に銃口を向けてみせるアクションシーンは、流石としか言いようのない格好良さであります。いわゆる「オサレ撃ち」の先駆と言っても過言ではないかもしれません。
思えば「矢車剣之助」は、途中から主人公が無限連発銃を手にしたことにより、時代劇ガンアクションと言うべき異次元に突入しましたが、本作は舞台を広大な西部に持っていくことにより、より自然かつ豪快なものとして描くことに成功していると感じます(もちろん、小五郎がガンアクションだけでなく、窮地を忍法で切り抜ける様も実に楽しいのです)。
そして物語の後半はさらにテンションアップ。小五郎と同じ真空回転うちを使うライバル・片目のジャックの挑戦、そしてカナーリの牢獄から抜け出してきたような奇怪な脱獄囚の集団・囚人ほろ馬車隊の出現と、魅力的な悪役の登場に、ストーリーとアクションはいよいよエスカレート。ほろ馬車隊が操るガントリックガン(ジャンゴの機関銃みたいなやつ)の作り手が、妄執で凝り固まったようなお婆というのも、本作ならではのセンスでしょう。
――もちろん、今から五十年近く前に発表された作品、それもつい最近、初単行本化されたものだけあって、全体的な完成度という点で見ると、苦しい部分は色々とあります。インディアンのヒロインがいつの間にか日本名になってたり、何よりも結局主人公と父の因縁が全ては明らかになっていなかったり…
しかし、そうした点も含めて愛するのが、こうした作品を鑑賞する正しい態度ではないでしょうか。少なくとも、堀江先生が目指したであろう、忍者アクションとガンアクションの融合は、素晴らしいレベルで実現していると、私は固く信じる次第です。同好の士は是非ご一読を。騙されても責任は持ちませんが。
なお、本文には現状にそぐわない表現がありますが、当時の雰囲気を出すためご容赦下さい(やっぱり西部劇でアメリカンネイティブはちょっと似合わないですしね…)。
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