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2004.01.22

夢魔の森

 法皇・孔雀院の夢に毎夜現れる白猿。老陰陽師・土御門典明は院の夢の中に入り夢魔を斬るが、夢魔は滅びることなく次々と人々に取り憑き苦しめる。50年前に姿を消した最愛の女・高尾の魂に導かれ、典明は土御門の人々の想いの詰まった5つの屋敷の封印を解くが、そこに秘められていたのは、祖父と父母、高尾の記憶、そして土御門家と夢魔の因縁だった。夢魔の正体は、土御門家の運命は果たして。

 本日読了。あらすじだけ見ると、よくある陰陽師の魔物退治ものに見えますが、(もちろんその側面は強くあるものの)どこまでが現で、どこからが夢なのか、どこまでが過去で、どこからが現在なのか――現実とその向こう側を行き来しつつ、自分という存在を確かめる主人公の姿を描いた、思索的で幻想的な物語という印象を強く受けました。
 夢魔の正体自体は、よくあるパターンではあるので意外性はさほど感じませんでしたが、その夢魔と対峙して主人公が取った選択は、自らの過去の思い出というものを斬り捨てるに等しく、非常に切ないのですが、その果てに示される微かな希望が、またそれだけ強く胸を打ちます。
 人は、人の魂はどこから来てどこへ行くのか。ある意味普遍的なテーマを、幻想文学の殻で包んで描いてみせた、そんな良作でした。


 しかし小沢章友氏の作品をAmazonで調べていたら、結構児童書を書かれていて驚きました。「今昔物語」などの子供向けリライトなど(ものによっては百鬼丸氏と組んでいたり)。児童書は油断できませんネ。


「夢魔の森」(小沢章友 集英社文庫)


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