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2004.01.08

陰陽師鬼談 安倍晴明物語

 本日読了。本朝への方術の伝来と聖徳太子のおぞましい秘儀から語り起こし、牛頭天王の化身・丑御前と安倍晴明・源頼光一党の決戦までを描いた陰陽道秘話というべき作品。文庫タイトルでは安倍晴明物語とありますが、むしろ「陰陽師鬼談」の部分が示すように、陰陽道のダークサイドを描いた物語という印象が強くあります。

 内容的には、今昔物語集等で有名なエピソード(芦屋道満との物当て、柱の穴から招く稚児の手、貴船の神の力で鉄輪をかぶって鬼となった女)などを題材にしつつも、この作品ならではの捻った解釈で描かれており、この辺りはさすが荒俣宏、というべきでしょうか。個人的には、結末の一ひねりが皮肉かつおぞましくも哀しい鬼女のエピソードが一番印象に残りました。
 とはいえ、物語的には、えっここで終わるの? 的な結末で、ちょっとどうかな、という気はします。聖徳太子の秘儀や、吉備真備と阿倍仲麻呂の因縁、茨木童子と渡辺綱の秘められたつながりのエピソードなどは非常に伝奇性が高く楽しめたのですが――。
 ちなみに以前の日記で紹介したコミカライズ版は、エピソードの外枠をいくつか借りている(ディテールの部分でも原作のネタをうまく取り込んでいます)ものの、物語の展開としては全くイメージの違う展開。原作が陰陽道の陰の部分を描いたとすれば、こちらは陽の部分を描いた作品と言えるでしょう(原作では猛烈に後味の悪い橋姫のエピソードが、コミックでは洒脱な印象の物語となっていますし)。原作とコミックで、同じ物語が丁度陰陽に分かれたように描かれているのは面白いところです。
 
「陰陽師鬼談 安倍晴明物語」(荒俣宏 角川文庫)

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コメント

後で単行本の方を見てみたら、だいぶ以前に書かれた陰陽道ネタの連作短編を加筆修正したもののようです、この作品。

投稿: 三田主水 | 2004.01.12 01:14

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