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2004.02.21

闇の大納言

 「夢魔の森」の事件から5年後。都では、美女たちが惨殺され、その体の一部が切り取られるという事件が相次いでいた。土御門家を継いだ若き陰陽師・狼明は探索に乗り出すが、その前に現れたのは、美しい容姿と裏腹の呪われた生を持つ魔人・闇の大納言だった。大納言の最後の標的となった倫子姫を護る狼明は、姫と運命的な恋に落ちるが、大納言の妖術は執拗に二人を狙う。大納言の目的とは、そして狼明の封じられた過去とは。

 先日紹介した「夢魔の森」の続編。前作の主人公・土御門典明は脇に下がって、今作では若く野性的な青年・狼明が主人公。主人公が若返って行動的(というか無鉄砲)になったせいか、敵が最初から明確となっているせいか、物語的な深みは、正直前作に一歩譲る感がありますが、一人の女性を間に挟んで、対照的な「生」を送る狼明と闇の大納言の姿が非常に印象的でした。また、怪奇性も実に濃厚で、物語冒頭、典明と狼明のもとに怪事が語られるシーンでは、末法の世が到来した平安京の闇の底で引き起こされる怪事を、おぞましくも妖しく描いていて、非常に印象的でした。そして何よりも闇の大納言のキャラクターは、あの怪奇小説史上有名な怪物のオマージュということは明白ではあるのですが、それでもなお非常に哀しく魅力的な、この作品ならではの存在として出色だと思います。

 前作が「夢」や「記憶」といった視点から、人とは何か、人の生とは何かを描いたものだとすれば、今作は「肉体」の側から同じテーマを追ったものと言えるでしょうか。生き続ける死と、死の中から生まれる生。哀しくもどこか暖かい、不思議な味わいの小説でした。


「闇の大納言」(小沢章友 集英社文庫) Amazon bk1


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