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2004.03.20

平蜘蛛の妖し夢 黎明に叛くもの1

 元亀二年晩秋、明智光秀は、比叡山焼き討ち以来、身辺で相次ぐ怪事を封じる法を求めて信貴山の山城を訪れていた。その光秀の前に現れたのは、金髪碧眼の傀儡師「果心」を操る怪老人・松永久秀。その久秀こそは、かつて兄弟子・松波庄五郎――後の名を斎藤道三――とともに、波斯渡りの暗殺術「波山の法」を修め、稚児から戦国の世を左右する存在にまでのし上がった妖人だった。戦国乱世の陰で妖しく輝く明けの明星、黎明に叛くもの松永久秀の過去とは如何に。

 本日読了。先にハードカバーで出版された「黎明に叛くもの」を、4分冊とし、各巻に書き下ろし外伝を収録するという形でノベルズ化されたこの作品、前々から気になっていたのですが、やはり非常に魅力的な、というより蠱惑的な、伝奇ファンとしては堪えられない作品のようです。
 この作品の秀逸な点、最大の魅力は、あの悪名高き松永弾正久秀を、波斯渡りの暗殺術(しかもその由来はかの暗殺教団、ニザリ・イスマイリ!)を操り、金髪碧眼の生き人形その名も「果心」を連れた美貌の妖人として描いているところ。古今、松永久秀を題材にした小説は少なくありませんが、このような魔王ルシファー(いやペルシャだからイブリースですな)にも比されるキャラクターとして描いて見せたのは、空前絶後でしょう。というか、小島文美様の手による表紙に描かれた美青年を誰が弾正久秀と思おうか(笑)。
 この第1巻では、現在(元亀二年)の場面では久秀と光秀の信貴山での出会い、過去の場面では久秀が三好長慶と共に天下を窺う辺りまでと、まだまだ物語は始まったばかり。久秀が、道三がどのようにして戦国の世でのし上がっていくのか、道三は、長慶は何故史実のような運命を辿ることとなったのか、光秀と久秀の過去に秘められた因縁とは何か、そして光秀の運命は…。先が気になるのはもちろんのこと、一気に単行本でまとめて読んでしまうのも手ですが、じっくりと一冊一冊自分を焦らしながら読むのもまた快感。残り3巻、心から楽しみに待とうと思います。書き下ろし外伝も楽しみですしね。


「平蜘蛛の妖し夢 黎明に叛くもの1」(宇月原晴明 中央公論新社Cnovels)


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