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2004.03.29

「空蝉挽歌 暗夜鬼譚」全5巻

 いとこの深雪に連れられて市で暴れ牛に出くわした夏樹の危機を救ったのは、久継という男だった。夏樹は、不敵な笑みと魅力をたたえた久継に、理想の兄に対するような好感を抱く。一方、深雪の仕える弘徽殿の女御の周囲では、怪事が頻発。解決の依頼を受けた夏樹と一条だが、意外な強敵の前に、一条が倒されてしまう――

 暗夜鬼譚シリーズ第7弾は全5巻の大長編。一条や権の博士の術すら通用しない強敵の前に、一度はあの一条が冥界送りにされるという大事件が発生。ラストでは天変地異に襲われた京を舞台に、冥界をも巻き込んだ一大決戦が展開され、これまで控えめだった派手さも充分で楽しめました。特に、これまではクールというか極めてシニカルだった一条が、一度は完膚無きまでに敗れた相手に対し、感情むき出しで立ち向かう様は非常に燃えるものがありました。

 …と感想を終われればよかったんですが、正直に言って結末には大いに不満があります。この作品も、シリーズのこれまでの作品同様、どうしようもない人間の業が積もり積もって怪事・惨事が起きてしまうのですが、その業が、夏樹を初めとして登場人物たちが物語の中で背負った想いが、一切拭われることなくスッパリと終わってしまうのが、どうにもすっきりとしない。
 もちろん、物語の中では何も解決することなく、その先は読者の想像の中にゆだねられている、という結末も大いにありですが、この作品はそういう物語ではないでしょう。少なくとも、ここまで延々とひっぱったのであれば、作中のある人物への夏樹の想い(の一部)は、何らかの形で昇華されてもよかったのでは、とつくづく思います。
 まあ、実は同様の形の結末はこれまでのシリーズでもあったのですが、それは前後編などの場合。(非常に即物的に言ってしまえば)5冊かけてこの終わり方は、シリーズということに胡座をかいているんではないでしょうか、と失礼なことも言いたくなってしまうのでした。

 
「空蝉挽歌 暗夜鬼譚」全5巻(瀬川貴次 集英社スーパーファンタジー文庫)


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