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2004.04.13

東山殿御庭

 将軍足利義政の命により建築中の東山殿に夜な夜な起こる怪異。管領畠山政長は怪異の解決のため老境の一休を招く。一休と侍女・森は、東山殿の絵図面に謎の言葉が残されているのを発見するが。

 恒例、朝松健の異形コレクションでの室町ホラーですが、「やられました」の一言。

 室町時代を舞台にして如何に遊園地テーマのホラーを描くか、という難題を軽々とクリアしつつ、ある歴史的事実の背後に潜む「真実」をさらりと伝奇的に解き明かせてみせる業の冴えも見事なのですが、何よりも見事なのは、その怪異の正体というか由来であるアレ(こればっかりはネタバレできないので)の活かし方。
 なるほど、アレならば確かにこのようにも見えるわい、と感心しつつも、それ以上に、アレが作中のある人物の心と記憶に落とした陰の深さと、その陰を知って初めてわかる「怪異」の切なすぎる真の意味(そしてそれが上記の「真実」につながっていく!)には唸らされました。そして何よりも、アレを怪異としか受け取れぬ「時代」の在り方に、より一層の切なさを感じました。
 その時代でなければ描けない怪異を描きつつも、その中に潜むモノは現代に暮らす我々の心にも強く響く。時代ホラーとはかくあるべしと常々私は思っていますが、この作品はその好例と言えるでしょう。

 ちなみに、この作品の結末は、ある意味非常に反則的なのですが、一休シリーズファンとしては――「夏のグランドホテル」同様――一休は永遠のヒーローなのだな、と感じさせられたことです。


「東山殿御庭」(朝松健 光文社文庫「異形コレクション 黒い遊園地」所収)


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