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2004.04.26

京都魔性剣 姫巫女烏丸竜子

 京都を守護する烏丸神社の姫巫女であり、鞍馬流剣術の達人である竜子のもとに、岩倉具視からもたらされた依頼。それは、行方不明となった有栖川の姫君の捜索だった。叔父や新たに氏子になった沖田総司の手を借りつつ、幕末の京の動乱の中、探索を続ける竜子だが、事件は複雑怪奇な展開を見せ、竜子にも幾度となく危機が迫るのだった。

 かつて廣済堂文庫で展開されていた沖田総司シリーズのヒロイン、烏丸竜子を主役に据えた新シリーズ。といってもスピンオフではなく、ほとんど同じ世界(前シリーズとは相違点も少なくないので「ほとんど」)で起きた別の事件を、総司の側からでなく竜子の側から描くという印象でしょうか。
 もともと姫巫女というより女王巫女な竜子さんのキャラクターは以前から立ちまくっていたのですが、今作では言霊を剣技に利用した剣の達人という設定も加わって、いよいよますますパワーアップ(しかし総司が純情を寄せているにもかかわらず竜子さんの眼が向いているのは高杉晋作だった、というのはちとショック)。天誅組の蜂起、蛤御門の変、芹沢鴨の暗殺といった目まぐるしい歴史的事件の連続の中、強くしたたかに生きていく竜子さんはやはり魅力的で、ただでさえ珍しい時代ものの女主人公、それもかなり珍しい幕末ものの女主人公として、これからも頑張っていただきたいものです。
 総司のシリーズが、江戸の人間から見た京の混沌を描いたものとすれば、この作品は、京の人間から見た京の魔性を描いたものなのでしょう。


 …しかし、以前から加野厚志先生の作品の独特のノリを説明する言葉がないか探していたのですが、ようやく見つけました。一言で言えば「超展開」。

 先生の作品はミステリ仕立てのものが多いのですが、もう展開が大変に目まぐるしい。次から次へと容疑者が現れては嫌疑がかかったり解けたり、またかかったり。さらに、一つの事件の加害者が別の事件の被害者であったりその逆だったりと非常に忙しい上に、探偵役の主人公が(つまり読者もまた)ミスディレクションにことごとくひっかかるので、物語のドライブ感がより一層強く感じられるのですね。で、結末はかなり「えっ」という形で飛び出してくる。
 一歩間違えるとメタメタになりそうですが、これが逆に不思議な味、魅力となって、読んでいるとちょっと麻薬的な楽しさがあるこのノリを表現するのに、「超展開」という言葉はぴったりじゃないかなあ、と私は今作を読んでようやく気づいたところです。


「京都魔性剣 姫巫女烏丸竜子」(加野厚志 双葉文庫)


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コメント

あー、アマゾンで調べたら「竜子」になってたので、おっかしいなあ、と思いながら書いていたらやっぱり「龍子」でした。
<感想を書く時はちゃんと手元に現物置いて書きましょう

投稿: 三田主水 | 2004.04.27 00:08

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