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2004.05.05

三鬼の剣

 直心影流の青年剣士・毬谷直二郎は、ある晩謎の剣士に立合を挑まれ、その奇怪な剣の前に敗北に等しい引き分けとなる。翌日、二人の剣士が殺されているのが発見されるが、それは直二郎が立ち合ったのとほぼ同刻に、謎の剣士と同じ太刀筋と同じ太刀筋で殺されたものだった。直二郎と岡っ引きの玄蔵は、殺された二人の剣士の比留間道場と遺恨がある長谷川道場に、幻鬼・水鬼・猿鬼という三人の遣い手がいたことを知り、探索に乗り出すが。

 思うところあって最近色々と剣術流派について調べている(≒剣豪ものを読み漁っている)中で見つけた佳品。今でこそ剣豪小説で知られる鳥羽亮先生ですが、スタートはミステリ。本作はそのミステリと剣豪ものの見事な融合たる剣豪ミステリ、いや剣術ミステリでした。
 ここでわざわざ剣術ミステリと言い換えたのには理由があります。剣豪ミステリと言えば、基本的に剣豪が探偵役となって事件を解決するというパターンになるかと思いますが(例えば眠狂四郎シリーズでも狂四郎が探偵役となるエピソードはいくつもあります)、この作品はそれだけでなく、事件の中心に――それも動機だけでなく、犯行手段やトリックに――剣術、剣術の流派が密接に絡み合っているのです。
 物語の中心となるのは、同日のほぼ同刻に、全く別々の場所で二人の剣士がそれぞれ何者かと立ち合い、殺されたと思しき事件。主人公はそれと時を同じくして、犯人と思われる相手と立ち合っており、図らずも容疑者のアリバイを証明する立場に置かれてしまうという趣向。しかもそれは、江戸を揺るがす剣術戦争の引き金となり…と、剣術道場同士の争いを止め、数多くの人間を殺めた凶剣士を倒すため、主人公は立ち上がるわけですが、その敵も一筋縄ではいかない相手、一種の妖剣とすら言える無住心剣流の遣い手で、果たしてこの剣をいかにして破るか!? というところは剣豪ものの面白さが十二分にありました。

 聞けば本作の主人公・毬谷直二郎(そういえば名字が毬谷なのは、無住心剣流の真里谷円四郎をもじったものなのかな)を主人公にしたシリーズはこの後も続いているとのこと、楽しみです。


「三鬼の剣」(鳥羽亮 講談社文庫)


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