平安妖異伝
若き日の藤原道長が、あらゆる楽器に通じ不思議な力を持つ少年楽士・秦真比呂と共に様々な妖異に立ち向かう平安幻想ものの連作短編集。
舞台は平安、不思議な力を持つ者と常識人がコンビを組んで怪事件を解決…というと、どうしたって「陰陽師」が頭に浮かびますが、この作品の巧みなところは、収録された十編全てが音楽怪談として成立しているところ。
怪事を引き起こすきっかけや、はたまた怪事そのものが皆、音楽に絡めて描かれるのが実に面白く、さらにそれに立ち向かい、解決する手段もまた音楽、というのがこの作品の優れた独自性と言えましょうか。
華やかな平安貴族文化を支えた要素の一つである音楽、その音楽にも歴史の陰で栄枯盛衰があり、そしてその流れを、怪異に仮託して描いた作品、とも言えるかもしれません。
ただ一つ、苦言を呈すれば、主人公の一人である道長の個性があまりはっきりと描かれていないところで、ここのところ、もう少し突き詰めて描けば、さらに面白い作品になっただろうなあと残念に感じます(少なくとも――キツい言い方ですが――文庫版の解説で持ち上げられているほど「いい男」には思えませんでした)。
この作品、最近続編が発売されたようなので、面白かった点も残念だった点も含めて、果たして如何あいなりましたか読んでみたいと思います。
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