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2004.12.14

闘・真田神妖伝

 さて最近の収穫その3にして真打ちは朝松健の真田三部作完結編「闘・真田神妖伝」
 前2作はいずれもとにかくひたすら面白い、いや面白すぎるためにかえって感想が書きにくくて困ってしまう作品だったのですが、この完結編も同様に、いやそれ以上の書評書き泣かせの快作。

決戦!結戦!!血戦!!! 繰り広げられる史上最大の激闘! 今こそ戦え!!真田十勇士!
(すみませんパクりました)という印象で、通常のノベルスの2~3冊分はあろうかという大部でありながら、全くだれることなく最後の最後まで読み進めることができました。
 作中幾度にもわたり描かれる合戦・戦闘描写も、通常の(?)兵と兵のぶつかり合いから、忍法と妖術、武術と妖術の対決あり、講談から抜け出してきたような(良い意味で)稚気溢れる頭脳プレイあり、果てはドラゴンボールばりの空中戦あり(…という感想を抱いたのが私だけじゃなくてよかった)と百花繚乱。
 これまで活き活きと活躍してきた連中との別れは、それは悲しいのですが、しかしそれでも一抹の希望を残す結末となっており、一つの時代の終わりを描いた物語でありながら、読後感も悪くありません。
 そして、引っ張りに引っ張った末の秘密兵器の正体に驚く一方で、その背後にある、それを成立せしめた日本人の精神風土への鋭い眼差しにも感心させられました。

 比較的史実と史実の間に隙がある(ように見える)前2作とは違い、今回は大坂の陣が主な舞台とあって、こなさなければいけない事件(史実)も多く、なかなかに自由奔放な物語を展開するのは難しいのではないかと思いましたが、それは全くの杞憂。
 これまで様々な作品で描かれていた方広寺の鍾銘事件や大坂冬の陣後の掘埋め立てなどの事件に、この作品ならではの全く異なる解釈を与えていて、実に面白い。
 定まった現実、なかんずく既に動かすことのできない史実に対し、裏側から光を当ててみることで、普段目にしてきたそれとは全く異なるヴィジョンを描いてみせるのが伝奇、時代伝奇であるならば、この作品はまさに時代伝奇の醍醐味を体現したものと言えるでしょう。

 しかし考えてみれば、この作品自体が、これまでお馴染みだった人物や事件の数々について、その人物のイメージや事件の大元はそのまま押さえつつも、全く新しい、この作者ならではの味付けをしてみせているというべきもの。
 古くて新しい、伝統的で斬新、そんな相反する二つの要素をきっちりと押さえた伝奇時代小説のマスターピースとして、一人でも多くの人の手に取ってもらいたい逸品であります。

 も一つ特筆すべきは、笹川吉晴氏による解説…というより朝松健論。以前から笹川氏は、「頭にあったのに言葉が見つからなくて言えなかったことをスッパリと表現してみせる」方だと思っていましたが、ここでも朝松ホラーが潜在的にあるいは顕在的に内包する複層的な構造を明快に指摘していて、感心することしきりでした。
 ただし、あんまりホラーの立場から論じすぎるのは、この作品の読者層を考えた時どうなのかな、と思ったことも申し添えておきます。

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