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2005.01.15

真田十勇士(NHK人形劇原作版)

 かねてより読みたくて読みたくて仕様のなかった、柴練の手になるNHK人形劇の原作版小説が運良く古本屋で手に入ったので、年末から今までかかって読了。いや、これがもう聞きしにまさる色々な意味でもの凄い作品でありました。
 内容的には、猿飛佐助の誕生から、大坂夏の陣の後までの時代を扱った冒険アクション伝奇時代劇。御存知の方も多いと思いますが、ベースとなっているのは、かの名作伝奇連作「柴練立川文庫」の一連の真田・猿飛もの(っていうのでしょうか)。それを子供向けに再構成したのがこの作品(と人形劇)なのですが…

 いや、子供向けということでそういう作風にしたのか、はたまた柴練先生のタガが外れたのか、良く言えば天衣無縫、悪く言えば行き当たりばったりの豪快すぎる超展開の連続。とにかくテンポが良すぎるほど良く、キャラクターやアイテムの出入りが非常に激しいので、油断すると話から置いていかれる――しかしそれでも何だか十分楽しい――という状態。
 キャラの方も、死んだと描写された人物が実は生きていて再登場、というのは序の口。死んでも幽霊になって暴れ回るキャラもいて(というかほとんどかも知れぬ)、その意味でも油断できません。登場する数々の忍術も、むしろ妖術魔術と言った方が良い超絶の技ばかりで、いや、こんな連中が揃っていても勝てなかったんだから、やはり徳川家康の天運はもの凄いものがあったのだな、と妙な感心をしてしまいました。
 万事この調子なので、正直に言って、伝奇キチガイや柴練マニア(以下参照)、とにかく何でも派手で面白い話好きの方以外――特に生真面目な方が読んだらむしろ怒りだしかねない作品ではあるのですが、しかしよくよく考えてみればこのノリは、柴練立川文庫がその名を借りた立川文庫の持ち味に極めて近しく感じられるもの。
 立川文庫の世界をより現代的に、よりスマートに描いてみせたものが柴練立川文庫とすれば、この「真田十勇士」は、それをより“原典”の世界に近づけて描き直してみせたもの、と言えるかもしれません。

 …と、それはさておき。この「真田十勇士」、柴練マニアにとっては必読の作品と言っても過言ではないかと思います。
 というのも、登場するキャラクター、設定の数々が、柴練立川文庫(の真田・猿飛もの)以外の柴練作品から引用されている、いわばスターシステムをこの作品では採用しているのです。
 佐助が武田勝頼の子、才蔵がイギリス人で清海が石川五右衛門の子で超美形というのは柴練立川文庫の設定のままですが、同じく真田十勇士の一人である高野小天狗は、熊野の忍者集団からす党の頭領。つまり「忍者からす」
 柴練立川文庫では一話のみの登場だった怪忍者・地獄百鬼は、木曾谷で究極の忍者「影」を育て、その「影」の正体は実は女…とくれば、これは「赤い影法師」の冒頭のエピソード(ちなみに十勇士の一人・穴山小助は、「赤い影法師」の冒頭で「影」に滅ぼされた風盗族の頭領という設定)。
 佐助たちの前に幾度となく現れる剣豪・宮本武蔵の生い立ちは、「決闘者 宮本武蔵」のそれだし、佐助たちが追い求める宇喜多秀家の隠し財産を守っていたのは黒井大膳亮の木乃伊…とくればこれは「木乃伊館」!というわけで、ざっと気付いただけでもこれだけのネタが。
 頭の悪い例えをすれば、いわばスーパー柴練大戦とでもいうべきこの作品、いや、柴練マニアとしては本当にたまらない快作でありました。


「真田十勇士」全5巻(柴田錬三郎 日本放送出版協会)


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» NHK人形劇 [なんだかんだ(仮)]
NHK人形劇、「新八犬伝」「真田十勇士」を見て育った人間としては、再度あの映像を見たいと思うのは当然のことでしょう。 今の子供達にも見せてあげたい名作だと思います。 ところが、一部を除いて行方不明だとか。 確かに一部の作品はNHKや放送ライブラリーで見ることは出来ますし、DVDも出ているようです。しかし、一部だけ見てもねぇ。 今見たらちゃちと思うのかな? 行方不明と聞いたのは、だいぶ前のこと。今ごろ発見されていないかなぁ、将来発見されないかなぁ。とあまい期待を抱きつつ。 かなり影響を受けた作品なので... [続きを読む]

受信: 2006.03.11 01:59

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