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2005.01.23

武魂絵巻

 三代将軍家光の時代、真田伊豆守信幸のもとに飄然と現れた美剣士・五位鷺志津馬。常人離れした剣技の冴えを持ち、平然と幕府への批判を口にする彼の正体は、真田幸村の遺児だった。徳川幕府への復讐と天下大乱を望む志津馬は、駿府の徳川忠長に接近、忠長を旗頭に倒幕の狼煙をあげようとする。が、彼を取り巻く人間たちの情念は、事態を意外な方向に導こうとしていた。

 江戸時代前期の江戸と駿府を舞台に、幕府打倒を狙う者たちと幕府の体勢を盤石にせんとする者たちの暗闘を描いた、南條範夫先生の作品です。
 主人公は真田幸村の遺児で美剣士、ストイックで剣の達人という、時代劇の主役になるために生まれてきたような青年なのですが、しかしその目的は徳川忠長を利用して天下を覆そうという暗い情熱を秘めたキャラクター。その他の登場人物たちも、この手の時代小説の定番的な設定ながらも、どこか暗い陰と、滅びへの予感を秘めた人物造形となっています。

 というのも、この作品自体が、武魂…つまり武士の魂の滅びを、言い換えれば武士が「武」をもって存在していた時代の終焉を描いたもの。
 史実通り、忠直は将軍の弟とは思えぬような最期を遂げ、志津馬の野望は一端は終わりを告げるのですが、その後志津馬が姿を現したある戦場とその結末を見れば、彼と彼の仲間たちが、「最後の武士」の世代として描かれていたことがよくわかります。
 果たして武魂を失った武士という階層に支配された江戸時代とは何だったのかと、考えさせられる作品でありました。

 ちなみに何故今頃この作品を手に取ったかと正直な事を言えば、かの名作にして「シグルイ」の原作である「駿河城御前試合」の最終章「剣士凡て斃る」で唐突に、しかもわずか数行で物語られた車大膳なる怪剣士の乱入事件の詳細が、実はこの作品において描かれていたから。
 初めて「剣士凡て斃る」を読んだ時以来、一体これは何のことなのかとずっと心にひっかかっていたエピソードだったのですが、その疑問がようやく解決してスッキリしました。いや本当に。


「武魂絵巻」(南條範夫 光文社文庫全2巻) Amazon bk1

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