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2005.04.19

龍神剣始末帳 流浪

 さる大身旗本への怨念と憎しみを込めて刀匠が打った一振りの刀。それは、千振りに一振りと言われる天下無双の名刀、龍神剣と化していた。が、刀匠の血を吸った龍神剣は、妖気を放つ魔剣と化す。偶然龍神剣を手に入れその魔力に魅入られた研ぎ師の辰三郎は、龍神剣とともに流転の旅を続けるが、龍神剣の魔性は周囲に血と死を撒き散らすのだった…

 城駿一郎先生の新シリーズは、これまでの作品とはうって変わった、一本の刀を主役にすえた連作もの。
 これまでのシリーズは、いずれも明朗快活なヒーローが悪党と死闘を繰り広げる痛快な作品ばかりでしたが、今回は刀の魔性に魅入られた人間たちの生み出す悲劇・惨劇が次々と描かれていきます。

 こうした、次々と持ち主を変えていく一本の刀を中心にすえた連作というのは、決して珍しいものではありませんが、元々オンリーワンではなくとも面白い作品を書くことにかけては相当の腕を持つ作者の作品だけあって、読者の気を逸らさない作品に仕上がっていると思います。

 そしてこの作品のちょっと面白いところは、狂言回しとも言うべき、龍神剣を巡る二人の男の存在です。一人はこの刀の魔性にとりつかれた研ぎ辰こと研ぎ師の辰三郎。そしてもう一人は、この龍神剣で旗本を斬った研ぎ辰を追う執念の北町同心・結城半介。
 この二人、ルパン三世と銭形のとっつぁんよろしく追い駆けっこを繰り返すのですが、研ぎ辰はビョーキの域に達するくらいのそば好き、半介は文武に優れながらもどうしようもない運の悪い男と、この二人の妙に抜けたキャラクターが、どうしても暗くて殺伐としたものになってしまうこの作品の空気を、うまく救ってエンターテイメントとして成立させていると言えるでしょう(考えてみれば、城作品の主人公は、皆ヒロイックでありながら、どこか抜けたところを持つ親しみやすいキャラクターでありました)。

 この作品が出版された学研M文庫からは、すでに同じ作者の作品として、「大江戸始末屋稼業」シリーズがありますが、こちらの方は少しお休みということになりそうで、 それはそれで少々残念ですが、たまには目先の変わった作品も楽しいもの。まだまだ龍神剣の魔性は収まらないようですし、続編を楽しみにしたいと思います。(時代設定が「大江戸始末屋稼業」と同時期なので、クロスオーバーは…さすがにないかな)

 よろしければお願いします


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