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2005.05.31

「ジェノサイド」第2巻

ジェノサイド 2 (2)
 真田十勇士vs里見八犬士という非常においしい材料を使いながら、絵に描いたような打ち切りエンドを迎えてしまったコミックの完結巻。
 千姫とその胎内の赤子を利用してまつろわぬ者の王国を造りだそうとする八犬士、千姫を奪還し豊臣家を再興せんとする十勇士、更にこの双方の共倒れを狙う徳川方と、各勢力入り組んでの殲滅戦、いわば各陣営の顔見せが終わった段階で終わってしまうとは…

 それにしても、八犬士の本拠である魔城に乗り込んだ次の週には千姫が助け出されて魔城崩壊、というのを雑誌で見たときには悪い夢見てるのかと思いましたが、あれはやっぱり本当のことだったんだなあ…

 正直なところ、こういう結果となったのは、絵の方に物語のポテンシャルを支える力がなかったため(だけ)と思っていました。
 しかしながらこうして単行本で読み返してみると、むしろ、全体のストーリーの中でどのように個々のバトルを配置し、その中で生き・死んでいくキャラクターたち一人一人のドラマをどのように描いていくかという部分で既にマズっていたんではないかなあ、という気持ちになっています(まあ、キャラ描写についてはこれからやっていくつもりだったのだとは思いますが…)。

 どれほど設定が面白くても、それを活かして読者を離さない物語作りをしなければいけないのだな、と当たり前といえばあまりにも当たり前のことを再確認した(してしまった)次第。


「ジェノサイド」第2巻(小林 拓巳&中島 かずき アクションコミックス) Amazon bk1


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2005.05.30

「BEHIND MASTER」第5巻

 猿飛佐助を主人公とした伝奇アクション漫画も5巻目。この巻では佐助・清海が大久保長安が治める黒川金山で頻発する猟奇事件の謎を追う逢魔金山篇のラストまでを収録しています。
 この作品、「敵」の存在と主人公が乗り越えるべき過去が明確になってきた3巻辺りから非常に面白くなってきているのですが、この巻でも面白さは変わらず。
 佐助の戦う理由の提示、化物退治師・由利鎌之介との対立と和解、裏伊賀の魔人・赤水との死闘、事件の背後に隠された長安の真意、新しい仲間と新しい目的、そして次なる戦いの序曲と、1冊の中に様々な要素が破綻なく、過不足なく描かれており、テンポのよい話運びにだれることなく一気に、楽しく読むことができました。

 また、キャラクター的には何と言っても大久保長安の造形が実に面白い。目の前で目付役である赤水に部下を喰い殺されても表情一つ変えず、逆に巧みなロジックで赤水に精神的プレッシャーを与える様や、事件の謎を追ってきた佐助に赤水の存在を仄めかし、討たせるようにし向ける様を見れば単なる冷徹な陰謀家にも見える長安。が、ラストで彼が取ろうとした行動、そしてその後に語られる彼の目的とその先に見せた決断には、決して長安がそれだけの人物ではなく、理想と現実の間で苦しみながらも生き抜く男の姿が垣間見られて感心しました。
 この作品、綺麗な絵柄に似合わず展開はかなりシビアで、(酷たらしい)人死にも少なからず出るのですが、それでも決して読後感が悪くないのは、佐助という少年の戦う(≒生きる)理由とその成長が、有機的に結びつけられて――希望という隠し味付きで――描かれているからなのだろうな、と感じた次第。
 そして次巻では舞台は九度山へ。真田十勇士誕生前夜というべき時期を扱っている作品だけに、まだ登場していない十勇士(候補)たちがどのような活躍を見せるのかも含めて、楽しみにしたいと思います。


 …と巻末の予告が大変なことに。もしかして私みたいなのが読んじゃいけない作品になってしまうのか!? 「こんなビハを待っていた…」じゃねーよ清海!
 まあ、この作品の巻末予告はウソ予告なので大丈夫だと思いますが。


「BEHIND MASTER」第5巻(坂本あきら ガンガンWINGコミックス) Amazon bk1


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2005.05.29

幕末平成KID 新撰組妖奇譚

オンライン書店ビーケーワン:幕末平成KID
 ある日突然幕末にタイムスリップしてしまった平成の小学五年生・誠が、土方歳三や沖田総司と共に、京の街を騒がす妖怪たちと対決するというジュブナイル作品。
 デビュー以来幾度も妖怪+チャンバラの世界を描いてきた作者だけあって、妖怪の跳梁や剣劇シーンのの描写は確かなもの。特に、妖怪たちのおどろ怪奇な描写は、一般向け作品とほとんど全く差別化せず、真っ正面から描かれていたと思います。

 そして何よりも面白いのは、暗躍する妖怪たちの目的。正直なところ、○○○が復活するというのは新撰組ネタの伝奇ものではあまり珍しいものではありませんが、そこに絡んでくるのが女性の情念というのが面白い。そして最終的に○○○を阻み、救いを与えるのが、もう一つ、正反対の方向の女性の情念というのがいかにも作者らしく、実に面白く感じました。
 また、主役格の活躍を見せる土方や沖田はもちろんのこと、チョイ役で登場する隊士たちもなかなかイメージに合ったデザインで、これだけで終わらせるのが少々もったいなくも感じられたことです。
 「小学五年生」という学年誌連載、しかも全9回ということで、ストーリー展開はよく言えばシンプルでスピーディー、わるく言えば単純かつ詰め込み過ぎの感もありますが、大人の目でそれをとやかくいうのは野暮というものでしょう。


「幕末平成KID 新撰組妖奇譚」(楠桂 てんとう虫コミックススペシャル) Amazon bk1


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2005.05.28

御隠居忍法

御隠居忍法
 奥州の小藩を舞台とした、伊賀者の血を引く「御隠居」の活躍を描く連作短編集。
 主人公の鹿間狸斎(しかま・りさい)は、若き日は昌平坂学問所で秀才と謳われながら、御庭番への推挙を断ったために長らく冷や飯食らい、三十歳を過ぎてようやく役が付いても、四十歳を越したらさっさと家督を譲って、娘の嫁ぎ先の奥州笹野藩に隠居所をこしらえて住み着いたという設定で、多分に風狂の化のある人物なのがまず面白いところ。もっとも、まだまだ十分に生臭いところを残した人物で、自分の娘ほどの歳の御手掛けがいるという、まずは世の中のお父さん方が理想としそうな人物であります。

 その狸斎さん、静かに暮らしたいはずが、身の回りで次々と事件が起こる。住んでいるのは中央から離れた小藩であっても――いやそれ故にか、藩の中では不穏の動きがしばしば。そんな厄介は背景を持った事件の数々に、ある時は巻き込まれ、ある時は自ら首を突っ込んだ狸斎先生の活躍が、達者な筆致で描かれていて、派手さはないものの楽しく読むことができました。

 小藩の諍いの中に巻き込まれていく主人公というと、先にこのブログでも取り上げた同じ作者の「眠る鬼」に始まる「鬼悠市風信帖」シリーズが思い浮かびますし、似たような感触があるのですが、決定的にあちらのシリーズと異なるのは、主人公がアウトサイダーであること。鬼悠市は藩の命を受けて動く人間ですが、狸斎は、「御隠居」という身分として動くアウトサイダー。アウトサイダーであるということは、もちろんそれだけ自由な人間ではあるのですが、その一方で自分を庇護してくれる存在を持たない、周囲に完全に信を置くことができないということでもあります。
 作中で狸斎と親しくつき合う目明かしの文次というキャラクターがいるのですが、文次は狸斎に心酔するような格好で物語に関わっていくのですが、その一方で、時として江戸の隠密ではないかと疑われる狸斎に藩の人間として接する立場にある人物。娘の舅であり良き友人である同じく隠居の新野耕民という人物も、息子が藩の重職にあり、かつ自分も藩の様々な秘密を知る者として、狸斎とは一定の距離を置かざるを得ない人物として描かれています。そしてまた、アウトサイダーと言っても、上に述べたように娘が藩の重職に嫁いでいるという義理に縛られることがあるのもまた事実。

 狸斎の年を感じさせぬ活躍がある一方で、こうしたままならぬ現実という苦みが物語を引き締め、深みを与えていると感じられました。

 連作短編ゆえか、描写や展開でやや食い足りない部分もありましたが(特に「不死身の男」の存在は、狸斎の強敵としてなかなか面白いものに出来たと思うだけにいささか勿体ない印象)、まずはシリーズ続刊を楽しみに出来る作品です。


「御隠居忍法」(高橋義夫 中公文庫) Amazon bk1


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2005.05.27

将軍まかり通る

将軍まかり通る
 加野厚志先生の新シリーズ第1弾。タイトルの将軍とは、徳川第11代将軍・徳川家斉、つまり将軍家斉を主人公とした時代小説であります。
 しかし家斉と言えば、側室40人、子供は実に55人という、思わず「本当に人間か!? オットセイか何かじゃないですか?」と失礼なことの一つも言いたくなってしまう人物。
 時代小説に登場することは決して少なくはないですが、多くの場合は舞台設定のための遠景(例えば、子供の一人を押しつけられた諸家の苦労だったり)、つまりは脇役であって、主役を務めるのはなかなか珍しい気がします。
 しかも本作は作品の分類でいえば明朗時代小説。こんな人物が主人公で大丈夫なの? と言いたくなるところですが、これが面白かった。

 本作での家斉のキャラクターは、良く言えば生まれながらの王者の気風をまとった人物、悪く言えば世間知らずのお人好し。政治には興味はなく、将軍の義務は子孫を残すこと、すなわち子作りと心得ている…と書くと単なるバカヤロウのようですが、「義務」というのがミソ。いくら楽しくてもそれが半ば強制となっては…というわけで、無頼浪人に扮して江戸城を抜け出したりしているのが本作の家斉。直接の理由と時代こそ違え、結果的には「暴れん坊将軍」ですな。
 その家斉の元に届いた一通の恋文、それだけでも大事件ですが、その送り主が江戸を騒がす女賊というだけでワクワクした家斉は江戸城を抜け出して…ってやっぱりバカかもしれない。
 が、実はその女賊の正体は…という意外な展開があって、後は女賊の復讐劇あり、大奥を舞台とした権力争いありと、図らずも冒険の中に巻き込まれた家斉が、時には運で、時には怖い者知らずの強みで危機を乗り越えていく様は、なかなかに楽しく読むことができました。

 何よりも本作の家斉は、様々な女性を愛することがノーブレス・オブリージュと心得ている人物(そしてそれはまあ、江戸時代というものを客観的に見ると実に正しいのですが)。色好みであっても下品ではなく、そうするのが当然というように胸を張って愛する女性に接する様は、作中の言葉を借りれば、「苦労知らずの大間抜け」というよりもまさしく「大江戸随一の快男児」に見えてくるから不思議なもの。
 本作は加野作品らしく、誰が味方で誰が敵なのかという混沌とした状況の中で主人公が翻弄される局面もあるのですが、何せ主人公が烏丸龍子さんとこの沖田総司くん以上に悩みを知らない人間なので、あまり重さや複雑さは感じられませんがそれもよし。
 なかなか次回が楽しみな作品でありました。


 …あ、でも「まかり通るッ」って決めぜりふが最初に登場したシーンにはさすがに吹き出しましたよ。ノリ過ぎです、将軍様。


「将軍まかり通る」(加野厚志 ベスト時代文庫) Amazon bk1


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2005.05.26

「新選組!」続編決定!

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20050525-00000748-jij-soci
http://www.sponichi.co.jp/entertainment/news/2005/05/26/07.html
http://www.nikkansports.com/ns/entertainment/p-et-tp0-050526-0013.html
http://chuspo.chunichi.co.jp/00/hou/20050526/spon____hou_____000.shtml
 すでにあちこちで嬉しい悲鳴が上がってますが、ここでも上げておきましょう。キタ━━━━━(゚∀゚)━━━━━!!!!

 昨年の大河ドラマ「新選組!」が、来年の正月時代劇として、山本耕史が演じた土方歳三を主人公とした続編を放送するとのこと。もちろん、会津から奥州を経て、箱館は五稜郭の戦までだそうです。

 噂は最近チラホラと入ってきていましたが、いやはや噂が噂で終わることなく本当に嬉しいです。しかも大河ドラマ初の続編というのが実に痛快(まあ、他のは続編作りにくい終わり方なだけという気もしますが)。
 キャストは極力そのままで、ということですが(正直、榎本武揚はつらいと思いますが)、本編では登場しなかった、そして箱館では当然登場するであろうキャラクターたち――たとえば大鳥圭介、たとえば伊庭八郎、たとえば市村鉄之介――のキャスティングも非常に楽しみであります。
 もちろん、本編最終回の時点で生き延びていた人々のその後も描かれるわけで、そちらももちろん楽しみですね(あ、左之助は出てこない方がいいかなあ…やっぱり上野で死んでました、などとなると悲しいので)。

 ああ、まだ半年以上の先の話なのに考えるだにわくわくします。どう転んでもハッピーエンドにはならない物語なのにね。


 それにしても「鬼神新選」完結に向けて、実にいい追い風なんではないでしょうか出海先生、と唐突に振ってみる。

 …「PEACE MAKER」の方の完結(というか復活)はないだろうけどなあ。

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今週の「SAMURAI DEEPER KYO」

 果たして狂や仲間たちと過ごした日々は儚い夢に過ぎなかったのか、自我を失い阿修羅と化した灯の太刀は狂をも圧倒。傷を負った狂の体も石化を始めてしまう。更なる奥義を放とうとする灯に、狂は無明神風流四大奥義・玄武を見せると言い放つ。  一方、次々と奥義を放つ辰伶だが、吹雪はその全てを受け止め、辰伶に跳ね返してみせる。辰伶を、そして太白をも虫ケラと呼んではばからない吹雪。吹雪を夢の存在として仰いでいた辰伶は、それが儚い夢に過ぎなかったと悟り、吹雪に怒りの太刀を向ける。その片目は、先祖返りの紅い瞳と化していた――

 遊庵&ひしぎは出番なしでした。やっぱり三元中継はムリだったか…
 今回はバトル中心なのであまりツッコミどころ感想らしい感想はないのですが、吹雪に決別の辞を叩き付ける辰伶が、あえて「吹雪様」と呼ぶのがなかなかうまい描写だと思いました。あと、思い出されたのが太白だけじゃなくて良かったね、巴御前。
 その辰伶は怒りに燃えてGENNKAITOPPAしたわけですが、うーんあまりにもあっさりすぎて盛り上がらない&この後が不安です。吹雪が「その程度で調子に乗らないでもらおうか…」とか言って両紅目になっても驚かないぞ。

 玄武は…どういう技かというよりも、どんなキメ台詞かがネタとして気になるのは私だけじゃないハズ。

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大年表の大年表

 本サイトの方の大年表の大年表を更新。歴史上の時代・年と伝奇時代作品の関係を示した年表(というか対比表)です。
 今までは作品名を大まかな年代で記載していましたが、具体的な年毎に記載することにしました。
 また、作品数も大幅に増えています。「何でこんなマイナーな作品が!?」とか「何であの作品が載ってないの!?」とかあるかもしれませんが、発展途上ということでご勘弁を。

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2005.05.25

各種年表リンク集

http://www2.atwiki.jp/gotanda6/pages/4.html
 私のような年表好きにはたまりませんなあ…wikiということはこれからも増えていくのかしら。
 個人的にはスターウォーズのタイムライン(あれ鬼のように作品数ありますから並べるだけで壮観ですね)と、楽しくも切ない切り口に素晴らしいセンスを感じる絶滅した年代で調べよぅ。がお気に入りです。
 と、ところで、年表といえばうちの本サイトの年表などもい、いかがかしら…<それが言いたかったんかい

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作品集成更新

 今までこのブログと本サイトの方で扱った作品を掲載した作品集成のページを更新しました。
 これまでは作品の画像はいちいちbk1のサイトから拾ってましたが、よく考えたらamazonbk1のイメージリンクを使えばよかった、ということに気づいたので、今回からそのようにしています。やっぱり作品の画像が多いと楽しいですね。

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2005.05.24

今月の「シグルイ」

 単行本になってから感想を書こうと思っている「シグルイ」ですが、今月号は(今月号も)実に素晴らしかったので思わず紹介。
 基本的に、ストーリーはあって無きがごとし。虎眼先生が曖昧になっている間に裏切り者が出て門下生が激減(というか藤木と牛股の二人)、久々に復活した先生超激怒。貴様らも裏切り者に違いないと(散々理不尽に打擲した上で)、藤木と牛股に命を賭した真剣による演武「二輪」を命じる…

 というわけでこの後は延々と二人の演武が描かれる「だけ」なのですが、これがもう、漫画における剣戟表現の極限とも言うべき逸品。「刃と刃の二輪となれい!」との先生の言葉の通り、超高速の剣の舞は、抜き身の刀の持つ恐ろしさと、それと裏腹の美しさを感じさせる、むしろ凄艶という言葉すら似合うような凄まじさ。
 静止している漫画の中の描写であるにもかかわらず、確かにコマとコマの間の動きを感じさせる迫力に、思わず息を詰めてページを繰ったのは――そして演舞が終わった際にホッと一息ついたのは――決して私だけではないと思います。

 また、何かと剣術マシーンに見られがちな藤木ですが、見事に型を決めた後に彼が見せた表情は、彼が決してそれだけの人間ではないことを示していてなかなか感動的でありました。
 …その直前に、下剤飲んでも滅茶苦茶平静な顔をしていただけに特に。

 何はともあれ、虎眼流門弟壊滅編を経て、いよいよ次号からは真の復讐劇が幕を開けるという趣向でしょうか。
 チャンピオンRED来月号では「若先生が全てに答える・山口貴由100問100答」という大盤振る舞い、というよりほとんど危険球な企画も実施されるということで、事故が起きないことを真剣に祈ります。

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2005.05.23

「山賊王」第7巻

山賊王 7 (7)
 楠木正成ら「悪党」らの視点から「太平記」の時代を描いたコミックの最新刊。この巻では、正成らの籠もった赤坂落城(とその奪回)から宇都宮公綱撃破までが描かれています。
 この巻では、主人公である少年・長門は今回は脇に回り、長門の師であり育ての親である正成の快進撃がメインですが、よく考えたら正成はほとんど前巻後半が初陣みたいなものなので、これは仕方がない(?)ところでしょう。

 この辺りは史実でも有名なエピソードが多いので、物語の中でも比較的史実に忠実な展開が見られるのですが、面白かったのは正成の未来記被覧のエピソードの処理の仕方。
 聖徳太子が遺したという予言の書・未来記は、その来歴の面白さといかにも謎めいた内容から、この手の話が好きな人の間ではよく知られたアイテムであり(未来記と聖徳太子の予言を中心に据えた伝奇ものとしては火坂雅志先生の大作「神異伝」がありますね)、楠木正成がこの未来記を手にした、というのがまたいかにもそそるエピソード。
 その未来記が実は…という展開は、一読「そんなのあり?」という気もしましたが、「言われてみればそうだよなあ」という不思議な説得力があり、また、この作品ならではの正成像が垣間見られて実に面白いと思いました。

 ただ一つ気になるのは、――これは今に始まったことではないのですが――長門や正成が戦う相手が、ほとんどボンクラもしくは悪人という、いわば「倒されて当然」な連中であること。
 これはもちろん好みの問題もあるとは思いますが、個人的には、主人公側の計略が100%大成功というばかりでは、勝利した時のカタルシスも薄れていくように思いますし、たまには「敵ながら天晴れ!」という相手とも対峙してもらいたいものだと、正直思う次第です。
(個人的にはやはり足利尊氏辺りにその役を期待しているのですが、鎌倉幕府を倒して作品が終わってしまったらどうしよう…)


「山賊王」第7巻(沢田ひろふみ 月刊少年マガジンKC) Amazon bk1

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2005.05.22

6月の伝奇時代劇関連アイテム発売スケジュール

 6月の伝奇時代劇関連アイテム発売スケジュールを掲載しました。このブログの右サイドバーからも見られます。

 6月は小説・漫画とも結構な数が発売される模様。個人的に注目なのは、出る作品出る作品ほとんど外れなしの上田秀人先生の織江緋之介シリーズ第2巻「不忘の太刀」と、やっぱり「シグルイ」第4巻。
 また、山田風太郎関係では菊地秀行先生も絶賛の「忍者月影抄」が久々に復刊。登場する忍法の飛ばしぶりでは(長編忍法帖では)先に発売された「外道忍法帖」と双璧の作品であります。森まゆみ氏によるインタビュー「風々院風々風々居士-山田風太郎に聞く」の文庫化も嬉しいところです。

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2005.05.21

漫画アクションで「闇鍵師」連載開始

 「漫画アクション」誌の最新号から、「勇午」の赤名修&劇団☆新感線の中島かずきの時代伝奇コミック「闇鍵師」の連載がスタートしました。
 表紙だけみると、勇午さんアクションに移籍!? とかベタなボケをかましたくなりますがまあそれはさておき、腕利きの錠前師にして人の心に巣くう魔物に鍵をかけ封印する闇鍵師・くるり屋錠之介を主人公としたこの作品。一読した限りでは、伝奇+人情ものという路線なのかな、という印象です。

 連載第一回では、強盗に斬られたまま蔵に入り、内側から鍵をかけて閉じこもった妻を救って欲しいという商人の依頼が事件の発端。錠前師としての業を発揮して首尾良く鍵を開けた錠之介ですが、しかしそこには…というどんでん返しがあって、さらにも一つひねりがあった上で錠之介のもう一つの顔が現れるという展開でしたが、ラストの一ひねりが利いて読後感も良く、また、キャラクターの紹介編としてもそつなくこなした及第点という印象でありました。
 正直なところ、この展開であれば別に魔物出さなくても物語は成立するんじゃあ…という気がするのですが、その辺りのバランス取りが、今後作品として盛り上がるかどうかの鍵のように思えます。

 中島かずき氏が原作を担当した前作「ジェノサイド」は、近年稀に見るメタメタな結末を迎えましたが、今度の作品は決してそうならないでいただきたいと、ファンとしては心から願っている次第です。
 少なくとも赤名氏の画力は相変わらず確かで、魔物の描写や封印シーンのビジュアルイメージもなかなかでありましたので、絵については不安なし、といったところでしょうか。個人的には、錠之介の相棒の足占い師の描写が、下品でない色気があって良かったですね。


 …しかし、「飯盛り侍」のあれはなんなんだろう。

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2005.05.20

二つの水滸伝

 「水滸伝」はある意味日本の時代伝奇の源流の一つ、という間違ってないけど…な理由からこのblogでは「水滸伝」も扱います(一番の理由は私が「水滸伝」機知GUYなだけですが)。
 さて、日本で現在進行中の水滸伝小説と言えば、「絵巻水滸伝」北方謙三の「水滸伝」なわけですが、その最新の回が相次いで発表されました。

 絵巻の方は、現在vs曽頭市戦第1ラウンド。晁蓋率いる梁山泊軍と曽家五虎率いる曽頭市軍がひたすら激突というのがメインで、話の進展自体はあまりなし。
 それでも晁蓋と史文恭の過去エピソードあり、曽頭市に潜入するも苦闘中の阮三兄弟&穆弘の描写ありと、物語にはそれなりの厚みが生まれています(特に穆弘はロマンスの予感か?)。正直、合戦描写はあまり面白くないので、こういうところで頑張って欲しいですね。
 また、絵巻は元々悪役のキャラクターにもかなり描写を割いているのですが、原作では単なる「敵」という印象だった史文恭&曽家五虎(とそのオヤジ)のキャラクターもなかなかに個性的で面白い。特に曽オヤジは出番は少ないですが、息子たちを食いかねない迫力の持ち主で、原作では味付け程度だった女真族出身という設定がかなりクローズアップされていて独特のキャラを生み出しています。

 最近(といっても休載凄かったですが)の絵巻は、vs曽頭市、史文恭らの晁蓋暗殺計画、vs樊瑞ら芒蕩山組、盧俊義引っ張り込みと複数の流れがあって、それが面白くも話をややこしくしている面があったので、そろそろまとめていって欲しいですね(おそらく次回ラストあたりで一つ整理がつくような…)


 そして北方水滸伝の方は、いよいよラスト一回前。
 これまで一つ一つ拠点を潰され、いわば手足をもぎ取られたに等しい梁山泊ですが、あまりに強大な童貫率いる官軍の前に今回も苦闘の連続。おそらくこれまで描かれたあらゆる「水滸伝」の中で、最大級の苦戦・死闘を強いられているのではありますまいか。
 史実でもかなり怪物であった童貫ですが、この北方水滸伝の童貫なんて、どうやったら倒せるのか見当もつかない怪物ですなあ…素晴らしい。

 あまりネタバレはできませんが、今回も馴染みのキャラクターたちが一人また一人散っていき、ついにはあの地まで…というところで、いよいよ次回が最終回。
 正直、原作が原作ですし、作者も滅びゆく男たちの美学を書かせたら当代右に出るものがない方なので、結末はまあ、予想がつくのですが、宋江ら叛徒が大宋国に挑んだ戦いの結末がいかが相成りますか、来月号が今から待ち遠しい。というかタイムマシンあったらすぐ来月に跳ぶよ! と言いたくなるほどであります。
 ただ、(これは真面目なファンには絶対怒られますが)戦場での格好良い死に方のバリエーションというのもあまり無いような気もするので、さすがにキャラが散っていく描写が続くとちょっと食傷気味、という気がしないでもありません。

 個人的には、呉用の性格が自分と似ているように感じられるので、みんなあんまり呉用をいじめんといて下さい…確かに今月もダメ人間でしたが(頼むから最後くらい見せ場を下さい)。


 それにしても、全く趣の異なる二つの「水滸伝」がほぼ毎月並行して連載されている、というのは、水滸伝ファンにとって大変に幸せなことでありますし、そしてそんな幸せを味わえるのは、世界中ではおそらく日本だけでないかな、と思う次第です。

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2005.05.19

ここ数日のゲーム話

 次世代機が一斉に発表になったりしてにわかに賑やかになってきたゲーム業界。レゲーファン的には、過去の任天堂ハードのゲームが遊べるというレボリューションが気になりますが…(でも任天堂って時代もののゲームが異常に少ないんだよなァ。村雨城くらい?)とそれはさておき、あまり次世代機には関係ないですがここ数日の時代ゲーム絡みの話を幾つか。

「GENJI」CM、弁慶役は清原
 巨人の清原が、PS2の「GENJI」のTVCMで弁慶役をやるとのこと。まあ、確かに坊主ではありますが…
 起用の理由が「清原選手は弁慶をほうふつさせる外見と内面的な強さを併せ持つ。タイトルを追うのではなく、チームプレーを重視する姿は、義経を想い慕うが故に自己犠牲をいとわない弁慶の姿そのものです」というのは( ゚Д゚)ハァ?としか言いようがないと思います。
 バイオレンスの臭いはあっても、忠義とかそういうものとは無縁の人に見えるんですが。
 

「戦国BASARA」の主題歌はT.M.Revolution
 あー、まあ、言われてみれば違和感ないし、ターゲットを考えればそれなりに無難だと思います。
 でもどうせだからゲームにも出ちゃえばいいのに。冒頭2話くらいで死んじゃうキャラ役で。


コーエー、PS3で「仁王」を発表
 以前このblogでも紹介した、黒澤監督の遺稿を元にしたという「鬼」のゲーム化が本格始動。うーん、PS3自体がまだまだよくわからないのでこのスクリーンショットだけではなかなかコメントしづらいところ。


 も一つ、PSPでの発売が発表されたばかりの「天誅」が今度はニンテンドーDSで発売というお話を紹介して、エセニュースサイトモードおしまい。

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今週の「SAMURAI DEEPER KYO」

 ひしぎに与えられた魔眼に操られ遊庵らを襲ったひしぎの刃。灯を触媒とした魔眼の力は、灯を阿修羅へと変貌させる。灯を元に戻すため対峙する狂。  一方、壬生を正道に戻すためかつての師・吹雪に刃を向ける辰伶だが、その水龍をひしぎが切り裂く。そのひしぎに挑もうとするほたるだが、二人の間に割って入ったのは遊庵だった。ほたるとの死合でも使うことのなかった刀を手にひしぎと対峙する遊庵。狂vs灯、辰伶vs吹雪、遊庵vsひしぎ――三つの死合が始まろうとしていた。

 なにごともなかったように「KYO」の感想復活。すわ裏切りか!? と思われた灯はひしぎに操られていたということ(灯がひしぎの近衛隊長というのはちょっとした驚きですが)で一安心。そしてそれ以上に遊庵が瞬殺されてなくて良かった良かった。
 遊庵といえば、なかなか面白かったのはバカ弟子・バカ親父とのからみ。特に遊庵が自分との戦いで刀を使っていなかった(=本気になっていなかった)と知ってキレるほたるの姿はなかなか愉快。

 しかしいよいよ心配になるのは味方側の人余り。この場で余っているのはほたる(と寿里庵)ですが、これでサスケに梵天丸と紅虎、アキラと時人(後ろ二人はほぼリタイアだとは思いますが)が加わったら、もう新しい敵勢力を出すか、裏太四老とかなんとか出すしかないんじゃないでしょうか。…あ、四方堂もいたか。
 たぶん遊庵は灯に受けた傷が元で倒れて、ひしぎとは因縁のあるサスケか、狂との戦いで復活した灯あたりが戦うとは思いますが、アキラvs時人が全く予想できなかった人間なので予想はやめときます。

 しかしなんだかんだいって、往年のジャンプノリのバトルものとしては楽しいです、KYO。

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2005.05.18

「陰陽寮」完結

 富樫倫太郎先生の大河伝奇「陰陽寮」の完結編、「永劫回帰篇」上下が発売されました。
 ざっと斜め読みしたところですが、物語自体は落ち着くべきところにそれなりに落ち着いたように思えます。

 前巻までは「本当にこんなにして大丈夫? というより本当に終わるの?」という不安感もありましたが、まずはここに一つの物語として無事完結を見たことを喜びたいと思います(ちょっとあっさり感も漂うのは、まあ富樫作品の味だから…ということで)。
 面白いのはラストに付された作者のあとがき。伝奇ものに対する作者のスタンス、迷いや熱意、自負が感じられて非常に興味深く読みました。
 何よりも読者としては、富樫先生が物語を途中で投げ出すことなく、作者としての責任を全うして見せたのが嬉しく感じられます(「MUSASHI!」は? ってのは禁句か)

 富樫作品は、ファンにとってはお馴染みですが、それぞれの作品が集まって、一つの大きな年代記とも言うべき世界を構築しているもの。この「陰陽寮」で全てが語られることのなかったエピソード、登場人物の運命も、これからの個々の作品の中で語られていくのでしょう(中には、既に語られてしまったものもありますが)。

 …それにしても「陰陽寮」がスタートしてまだ6年しか経っていなかったんですね。もうずいぶん長いこと続いていたような気がしました。
 まずは富樫先生、お疲れ様でした。

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「陰陽寮 永劫回帰篇」上下 (富樫倫太郎 トクマノベルス) Amazon bk1


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「コミック乱ツインズ」六月号

 毎月買っているのにあんまり取り上げる機会がなかった「コミック乱ツインズ」誌(いや、本当に面白いんですよ)。

 今月号は土山しげる&久保田千太郎の「忠臣蔵~内蔵助と安兵衛~」がスタート。作画・原作ともベテランだけに安心して読むことができます。今回はまだまだプロローグですが、さて吉良上野介がどう描かれるか。むしろ赤穂側よりも吉良側の描き方が気になります。…と、来月の予告に載っていないんですが?

 連載二回目の「伊庭征西日記」は、アクションシーンこそ少なめですが、伊庭の、動乱の時代に暮らしながらも普通の青年としての横顔がうまく描き出されていて楽しく読めました。特にうなぎ食べて大喜びしているところ、いきなり作品のタイトルが「幕末の歩き方」とかになったかと思いましたよ。
 しかし興味深いのは、時勢について一言もなく、ただ物見遊山や食事の記録が書かれていたという伊庭の日記。奇しくも同じ号の「天涯の武士~幕臣小栗上野介」でも同じ将軍上洛が描かれていましたが、期せずしてこちらの作品との対比が図られることになったようにも思われます。
 絵はちょっと荒れ気味に見えますが、「イブニング」誌の「影風魔ハヤセ」といい、森田先生ノってますな。

 連載三回目の「武蔵伝」は、相変わらず(もしかしてこのまま終わってしまうんではと心配してしまうほどの)テンションの高さ。あっさり武蔵玄信を倒したと思ったら、柳生羅刹衆なる(なんだか微妙感漂う)怪人たちが登場。話は猛烈にシリアスなはずなんですが、武蔵軍団が妙に愉快な連中ばかりなので、重さはあまり感じられず。特に新免武蔵の、超俗的なようでいて相当世俗的なキャラクターは緩急自在で面白いなあ。
 そしても一つ、石川賢作品にしてはなかなか女性キャラがかわいく描けていると思います。
 しかし柳生天鬼がえらく凶悪な面をしている次のページに「百人遊女」を載せるのは勘弁していただきたい。

 「真田十勇士」は、追いつめられた片桐且元がついに豊臣を見限り、家康が大坂討伐を号令するところまで。且元さん、今まで全く良いところが無く描かれていましたが、自分に残った二つの未練を語るシーンは、無念さがよく伝わってきて大いに同情。
 しかしこの作品、登場人物皆が目に力が入っていてとても印象的なのですが、淀君が怖すぎます。号令発する家康も。
 ちなみに原作全5巻16話中、今回のエピソードは第4巻11話の段階。この調子であれば無事完結までこぎ着けそうですね。
 

 「仕掛人藤枝梅安」は、総集編的部分もあり、梅安の仕掛けもない番外エピソード的な話でしたが、それでも十分楽しいのはさすが(初鰹おいしそう…)。
 しかし長竹刀を使う巨漢剣士で愛洲陰流を修めた柳川藩士って、あまりにも元ネタが露骨ではありますまいか。


 残念なことに今月は「黒田三十六計」はお休みでしたが、それでも十分に楽しめた一冊でありました。

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2005.05.17

「戦国BASARA」続報

 先週発売のゲーム雑誌でも情報が公開された「戦国BASARA」、発売日も決まりましたが、個人的には情報が出るたびに「うーん…」という気分になるのが正直なところ。

 誰がどうしたって「戦国無双」と比べたくなると思いますが、あちらに比べると、キャラの魅力が、どうにもなあ…という印象があります。
 メチャクチャやっているようで、意外とその人物へのイメージの基本を押さえていたのが「戦国無双」(女性キャラ除く)。その辺り、伊達に歴史キャラものたくさん出してませんよ、という光栄のスキルを感じますが、「BASARA」はその辺りがどうにも薄いのではないでしょうか。

 もちろん、これはあくまでも歴史上の人物の名前と設定を借りただけですよ、という言い方もできますし事実そうなのでしょうが、それだったら別にファンタジーものにしちゃっても良かったんじゃないのかなあ…とも思えますし、オリジナルキャラも実在キャラに輪をかけてナニな感じがしすぎない!? という気がします。

 さらに不安感を煽るのが、タイアップ関係。なぜ「漫画アクション」!? このゲームの対象層と相当外れてなくない?
 「鬼武者」(特に3)の時も感じましたが、カプコンってタイアップとか有名人起用が正直微妙よね。

 などと私にしてはずいぶんと厳しいこと書きましたが、もちろんこのゲーム、私は買いますよ! 買うに決まってるじゃないですか! ネタ…あ、いや、信長様の声のために。

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2005.05.16

歴史を変えたかもしれない雑兵のこと

 このblog右横の「今日は何の日」を眺めていたら、5月16日は鳥居強右衛門が磔になった日でありました(まあ、本当は旧暦5月16日なのですがここは便宜上ということで)。
 歴史ファン、戦国ファン、長篠近辺の住民の方の間ではつとに有名なこの人物ですが、一般の方にとってはあまり馴染みのない人物かと思いますので、簡単に説明します。

 この人物は、家康の配下で長篠城主の奥平信昌の家臣(…というと格好良いですが要するに足軽)。天正3年に武田勝頼の軍勢が長篠城を包囲し、長篠城は苦戦、籠城を余儀なくされます。
 状況を打開するためには、重囲を脱して誰かが援兵を請わなければならない。その時に使者役として立ったのがこの強右衛門。苦心惨憺の末、城を脱出した強右衛門は岡崎に辿り着き、家康と信長に窮状を訴え、援軍が出されることとなります。
 この吉報を一刻も早く城内に伝えたいと一人長篠城へ戻ろうとした強右衛門は、しかし、武田軍に捕らわれてしまいます。
 城に向かって、援軍は来ないと言えば命は助けてやる、褒美もやろうともちかけられる強右衛門。そして城門前に連れてこられた強右衛門が叫んだのは…もうすぐ家康・信長の援軍がやってくるという言葉でした。
 激怒した武田方の手により、強右衛門は城の皆の前で処刑されますが、長篠勢は援軍到着まで持ちこたえ、その結果「長篠の戦い」において織田・徳川連合軍の前に武田軍は惨敗、急速に力を衰えさせることとなった…というお話。

 私ゃひねくれ者で美談の類を聞くとついつい疑ってしまう一方で、男泣き系の話が大好きなもので、このあたかも平田弘史先生の劇画のキャラクターのような強烈な鳥居強右衛門のエピソードにはついついグッと来てしまうのです。

 ただ、これは個人的な想像ですが、強右衛門の頭には奥平貞昌への忠義、つまり武士としての感情と同じかそれ以上に、城に籠城している「仲間」たちとの信義、表現は難しいですが身分とかそういうものを抜きにした人間としての感情があったのではないかなあ、という気もします。もちろん勝手な想像に過ぎないんですがね。
 ぶっちゃけ、別に主君のためだけに命をかけたわけじゃないんじゃないの、という気がするし、そっちの方がドラマになるよね、とかいうと真面目な人からは怒られるでしょうか。

 そしてまた一歩引いた目で見てみれば、仮にここで強右衛門が援軍の到着を叫ばなければ、長篠城は持ちこたえられずに落城し、結果長篠で武田軍と織田・徳川連合軍の合戦は起きなかったかもしれず、少なくともその場で武田家滅亡に繋がることとなった大敗を勝頼が喫することなく、信長の先見性と鉄砲の圧倒的な威力を知らしめることもなく、その後の歴史の在り方も、結果としては余り変わらないだろうとは思いますが、なにがしかの変化が生じたやもしれません。
 もちろんこれはあくまでも仮の話、ここで架空戦記の世界に入っても困りますが、鳥居強右衛門という一人の雑兵の存在が、その後の歴史の在り方に影響を与えたかもしれないということは、その強右衛門の業績と同じくらい痛快なことに感じられます。

 私がこの強右衛門氏のことを知ったのは結構最近で、森秀樹の「ムカデ戦旗」で初めて知ったのですが、やはりこれだけ印象的な人物はフィクションの世界でも格好の題材となるようで、例えばかの八切止夫先生が小説現代の新人賞を取った「寸法武者」は強右衛門氏の話ですし(ということは強右衛門がいなかったら八切意外史もなかったのか…!)、池波正太郎は特に気に入っていたのか、幾つかの作品で主役あるいは脇役として起用していますな。

 ちなみに強右衛門の姿は後世の人間だけでなく、当時の敵方の人間にも感銘を与えたらしく、武田方の落合左平治が磔姿を旗印にして家宝にしたというお話もあり、それが現代まで伝わって、今ではこんなアイテム(商売に勝つ、ねえ…)も生まれているのは、これも歴史というものの一つの面白さかもしれません。

 まあ、色々調べてみると「春秋左氏伝」の中で宋が楚に攻められた時の話で、これとそっくりのエピソードがあるみたいなんですが、その辺りの突っ込みはやめておきます。

 ちなみに強右衛門は関の孫六を持っていたという話もあり、そんな刀を雑兵が持っているものかなあと思いつつも伝奇的には面白いので私的にはアリ。
 あと、日露戦争の時期に全国の小学校に桜の木が植えられたのはこの人の影響とか、元慶應義塾塾長で中教審のトップで教育基本法改正に邁進していた鳥居泰彦氏はこの人の裔という説もありますがこっちはどうでもいいや。


 と、言うわけで鳥居強右衛門さんの話でした。

 …最後に白状すると、私しばらくこの方の名前は「ごうえもん」だと思ってました…(本当は「すねえもん」。スネえもんと書くと平田弘史から一気に藤子不二雄になってしまいますがな)。

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2005.05.14

「アオドクロ」DVD&「ドクロBOX」発売決定

 劇団☆新感線の「髑髏城の七人~アオドクロ」、タイミング的にそろそろかな…と思っていたら、やっぱり来ましたDVD化のニュース

 「アカドクロ」の時と同様、内容的にはゲキ×シネ(すごく簡単に言えば劇場中継を映画館で上映するというもの)と同じものということのようですが、それならば買いかな、と個人的には思っています。

 実のところを言えば、「アオドクロ」は、舞台で一回見て、ゲキ×シネでも一回見ましたが、後者の方が面白く感じられたというのが私の印象。
 舞台で見たときは、もちろん面白いは面白かったのですが、DVDが出たとしても買うほどではないかなあ…と思っていたんですが、先日ゲキ×シネで見てみたらやたらと面白かったんですよ、まじめな話。
 もちろん、今思い返してみれば、舞台で見たときはまだ公演の前半の頃でこなれていなかったということもあるでしょうし、何よりも「アカドクロ」の方の印象が強すぎて、ちょっと違和感(特にキャスティング)あったかな、というところなのですが、ゲキ×シネで見たらその印象がガラッと変わりました。
 収録がたぶんかなり後の方の公演というのはもちろんあるのでしょうが、何よりもやはり、生で見ていてはなかなか味わえないようなドアップの芝居を味わえるというのは非常に大きいと思えました。染太郎このシーンは泣きの芝居だったのか!? とか、杏ちゃん台詞にリキ入りすぎ、こっちまで泣けてきたよ…とか、生で見ていた時よりも、キャラクターの、キャストの感情が伝わってくる度合いが大きかったように思います。もちろん、思わぬ小芝居を発見できたりということも。


 そんなこんなで私も「1997年版」「アカドクロ」、「アオドクロ」と「髑髏城の七人」ばかり三本揃うことになって、我ながらちょっとアレよね(何を今更…)と苦笑していたのですが、そこへ「ドクロBOX」なるアイテムが発売されるという追い打ちが。
 上にリンクした記事には概略しか書いてないのですが、イーオシバイのメルマガにはかなり詳しく書いてあったので、引用しましょう(イタリック部分。ちなみに引用許可済み)。


-------------引用ここから-------------

 主宰・いのうえひでのり氏曰く、現在の新感線のエンタテインメントの出発
 点ともなっている記念碑的作品・代表作という『髑髏城の七人 1997』から、
 2004年ドクロイヤーと言わしめた、『アカドクロ』『アオドクロ』3作品が
 丸ごと詰まったBOXです。その他フィギュア付きなど、3種類の中からお
 選びいただけます!!


 ★Special-box1 『ドクロBOX』
 …………………………………………………………………………………………
  ・『髑髏城の七人1997』
  ・『髑髏城の七人~アカドクロ』
  ・『髑髏城の七人~アオドクロ』
  ・「特典ディスク」


 ★Special-box2 『ドクロBOX -special edition-』
 …………………………………………………………………………………………
  ・『髑髏城の七人1997』
  ・『髑髏城の七人~アカドクロ』
  ・『髑髏城の七人~アオドクロ』
  ・「特典ディスク」
  ・アカ捨之介&アオ捨之介の特製フィギュア


 ★Special-box3 『ドクロBOX -limited edition-』
 …………………………………………………………………………………………
  ・『髑髏城の七人~アオドクロ』
  ・「特典ディスク」
  ・アカ捨之介&アオ捨之介の特製フィギュア

 ※『髑髏城の七人 1997』も『アカドクロ』も既に購入済み!!というステ
 キな方のためのBOXです。お手持ちの『ドクロ97』と『アカドクロ』を入
 れてもらえれば完成します♪

-------------引用ここまで-------------


 あー私の場合は、limited editionってことか…フィギュアは正直実物を見てみないとアレですが、やっぱり揃いBOXってのは、ついつい手が出るよなあ…どうせアオドクロのDVDは買うんだしさあ。 と、限定版という言葉に弱い日本人、というかオタの弱点をつかれまくっている感はありますが、特典ディスクというのも気になるし、続報を楽しみにしたいと思ってます。

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2005.05.09

文化庁メディア芸術祭審査委員会推薦作品に「神州纐纈城」が

「平成16年度(第8回)文化庁メディア芸術祭」の審査委員会推薦作品に石川賢の「神州纐纈城」が。
http://plaza.bunka.go.jp/festival/sakuhin/suisen/manga.html

 ぶっちゃけ、2ch石川賢スレ見るまで知らなかったんですが…

 「最終審査会まで進んだ作品の中から、審査委員会が推薦する各部門の優秀作品を紹介します」審査委員会推薦作品。そのマンガ部門のストーリーマンガの一つとして、我らがケン・イシカワの漫画版「神州纐纈城」が!
 一体何があったのだ審査委員会。ちなみにメンバーはこちら。うーんいたって常識的な面子なんですが(と、非常に失礼なことを書く)。
 ちなみにマンガ部門のストーリーマンガの応募総数は111件。15/111に入ったんですからこりゃやっぱりそれなりにすごいことだと思います。めでたい…よな。

 しかし、「NANA」とか「のだめ」とか「ハガレン」とかの中にいきなり「神州纐纈城」というのはなかなか異次元の風景で心楽しくなるものがあります。隣が「シガテラ」ってのも何ですが。

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2005.05.03

女忍者ナンバーワン決定

 http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20050503-00000029-kyt-l25
 いやあ、見出しだけ見て何のことを言っているのかと思いましたが、甲賀の「忍術村」のイベントだそうです。

 果たして応募者110人は多いのか少ないのか!? という気もしますが、優勝者が江戸川区ってうちの川向こうじゃないですか。
 江戸川区と言えば、森川ユカリンと吉田照美だけが有名な(って僕が言ったんじゃないですよ、とある本に書いてあったんです)江戸川区に新たなヒーローが! やっぱり優勝決定の瞬間には幻の「江戸川区民の歌」が流れたんでしょうか。

 しかし素晴らしいなあ白崎あゆみさん(23)。「忍者はあこがれ」って、なんだか微妙なコメントが特に。現実は違うのよ、って感じがもう。

 それ以上に素晴らしいのが「忍術村」のサイト。何とも手作り感覚溢れるサイトで、「駅前の歩き方」の花房先生的満面の笑みで「イイ!」と言いたくなってしまいます。世の中まだまだ捨てたもんじゃないなあ。


 …てゆうか、「オーディション」って表現の時点でニントモカントモ。

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四社合同 平田弘史フェア

 僕の住んでいる街の隣町の駅前に、ショッピングセンターと雑居ビルを足して二で割ったようなビル(よく地方の駅前にあるやつ)がありまして、その中にちょっと大きめの本屋さんが入っています。
 まあそういったビルに入っている本屋さんなので、品揃えはいわゆる「町の本屋さん」的なものだろうと言えばさにあらず、漫画売り場の一割以上が、太田出版青林工藝舎マガジン・ファイブの本というおそろしいお店。
 都心のサブカル中心書店ならいざ知らず、買い物帰りのおばさんや学校帰りの小学生がたむろする本屋にこんなラインナップが許されるのか!? と思いつつ、怖いもの見たさでついつい近くに行ったら寄ってしまうのです(と、いまその書店のHPを見てみたら「コミックのチョイスには自信があります」と書いてありました。こいつら本気だ…)

 と、前置きが長くなりましたがその本屋さんで知ったのがこの四社合同 平田弘史フェア
 これでも平田弘史ファンのはしくれのくせに、もう2ヶ月近く前から開催されているのに今更気づくのも非常に恥ずかしいのですが、今より早いときはない! というわけでここに記す次第。

 フェアをやっている書店で一冊買えば「作中語録ステッカー」がもらえるのですが、これがなかなか格好いい。もちろん内容も平田イズム溢れるすぐれもの。「おのれらに告ぐ おれはおのれらを(以下怖いので略)」なんてのがあったら、とても欲しいです。下手に貼ると「通報されますた」になりますが。
 そして五冊買えば「平田弘史先生特製ブロマイド」をもらえるそうなんですが…さすがに一冊千円はザラな平田先生の本を五冊まとめて買うのはつらいので現物は見ていません。平田先生を写したブロマイドなのか、はたまた平田先生が一枚一枚作ったブロマイドなのか…あの平田先生であれば後者であっても何の不思議もないのですが、とにかく気になります。

 …そういえば「不思議ナックルズ」というコンビニ売りのいかがわしめの雑誌に、「血だるま剣法」発禁事件について記事が出ておりました。
 これだけあちこちで平田先生の足跡を見かけるとは、平田先生の時代が来るのか。僕の頭の中ではとっくに来てますが。


 ちなみに来月は平田版「駿河城御前試合」上巻が発売されるそうなので非常に楽しみであります。

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この記事に関連した本など

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2005.05.02

5月の伝奇時代劇関連アイテム発売スケジュール

 5月の伝奇時代劇関連アイテム発売スケジュールをアップしました。
 正直5月はいまのところあまりパッとしない印象なのですが、20日に発売される「陰陽寮」第9,10巻(永劫回帰篇 上下)は、シリーズ完結編というところで大いに期待しています(どうやって終わらせるんだろうとドキドキしますが)。

 ちなみに下旬にはソノラマ文庫から久々の朝松健作品、しかもかつて逆宇宙シリーズで暴れ回った白衣の妖術僧・白凰坊が主人公ということで大注目の「修羅鏡」が発売されるはずなんですが…新刊情報には載っていないのでちょっと心配。

 …しかしソノラマ文庫って、いつの間にか隔月発行になったんですね。ちとショック。

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