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2005.05.27

将軍まかり通る

将軍まかり通る
 加野厚志先生の新シリーズ第1弾。タイトルの将軍とは、徳川第11代将軍・徳川家斉、つまり将軍家斉を主人公とした時代小説であります。
 しかし家斉と言えば、側室40人、子供は実に55人という、思わず「本当に人間か!? オットセイか何かじゃないですか?」と失礼なことの一つも言いたくなってしまう人物。
 時代小説に登場することは決して少なくはないですが、多くの場合は舞台設定のための遠景(例えば、子供の一人を押しつけられた諸家の苦労だったり)、つまりは脇役であって、主役を務めるのはなかなか珍しい気がします。
 しかも本作は作品の分類でいえば明朗時代小説。こんな人物が主人公で大丈夫なの? と言いたくなるところですが、これが面白かった。

 本作での家斉のキャラクターは、良く言えば生まれながらの王者の気風をまとった人物、悪く言えば世間知らずのお人好し。政治には興味はなく、将軍の義務は子孫を残すこと、すなわち子作りと心得ている…と書くと単なるバカヤロウのようですが、「義務」というのがミソ。いくら楽しくてもそれが半ば強制となっては…というわけで、無頼浪人に扮して江戸城を抜け出したりしているのが本作の家斉。直接の理由と時代こそ違え、結果的には「暴れん坊将軍」ですな。
 その家斉の元に届いた一通の恋文、それだけでも大事件ですが、その送り主が江戸を騒がす女賊というだけでワクワクした家斉は江戸城を抜け出して…ってやっぱりバカかもしれない。
 が、実はその女賊の正体は…という意外な展開があって、後は女賊の復讐劇あり、大奥を舞台とした権力争いありと、図らずも冒険の中に巻き込まれた家斉が、時には運で、時には怖い者知らずの強みで危機を乗り越えていく様は、なかなかに楽しく読むことができました。

 何よりも本作の家斉は、様々な女性を愛することがノーブレス・オブリージュと心得ている人物(そしてそれはまあ、江戸時代というものを客観的に見ると実に正しいのですが)。色好みであっても下品ではなく、そうするのが当然というように胸を張って愛する女性に接する様は、作中の言葉を借りれば、「苦労知らずの大間抜け」というよりもまさしく「大江戸随一の快男児」に見えてくるから不思議なもの。
 本作は加野作品らしく、誰が味方で誰が敵なのかという混沌とした状況の中で主人公が翻弄される局面もあるのですが、何せ主人公が烏丸龍子さんとこの沖田総司くん以上に悩みを知らない人間なので、あまり重さや複雑さは感じられませんがそれもよし。
 なかなか次回が楽しみな作品でありました。


 …あ、でも「まかり通るッ」って決めぜりふが最初に登場したシーンにはさすがに吹き出しましたよ。ノリ過ぎです、将軍様。


「将軍まかり通る」(加野厚志 ベスト時代文庫) Amazon bk1


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