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2005.06.19

ドラキュラ伯爵の知られざる貌 「明治ドラキュラ伝」

YA! ENTERTAINMENT 明治ドラキュラ伝1
 サルベージシリーズその4。伝奇という世界で吸血鬼――なかんづくドラキュラを描かせたら当代まず右に出る者のない菊地先生が、明治の東京を舞台にドラキュラの物語を書く! …どうやって? と最初に聞いた時は思いましたが、なるほどこういう切り口があったか、と唸らされた佳品でありました。
 物語自体は吸血鬼ものの定番とも言える展開。すなわち、何処からともなく現れた怪しい隣人と、やがて始まる怪事の数々。「敵」の正体を知ったわずかな人々の命と魂を賭けた反撃…なのですが、登場する役者がいかにも一筋縄ではいかない。主人公は死病にとりつかれた白皙の天才剣士、そして彼と共に魔人に挑むのは西郷四郎少年とその師・嘉納治五郎…見事な配置であります(特に嘉納治五郎がいわゆるヴァン・ヘルシング役を演じるのには驚かされました)。
 しかしこの物語が、何よりも他の吸血鬼物語よりも抜きんでたものとしているのは、こうした意外性のみならず、ドラキュラという人物の中のある部分にスポットライトをあてたこと。

 …「武人」としてのドラキュラという貌に。
 ブラム・ストーカーに始まり、これまで様々な者の手で、幾度となく描かれてきたドラキュラの物語ですが、魔人・魔王・不死者としてのドラキュラを描いたものは数多くあれど(というよりほとんどですが)、武を貴び愛する武人としてのドラキュラの姿――思えば生前の「彼」は、一面から見れば侵略者の手から故国を守った武将でありました――を描いた作品は、あまりなかったのではないかと思います。
 そうしてみると、一見、鬼面人を驚かすようにも見える登場人物のチョイスも、さすがにちょっと無理があるのでは…という印象もある、そもそもドラキュラが日本をなぜ訪れたか、という部分も、それなりの必然性を持っているのだと理解できます。

 今回の物語には、一つの結末がついているようにも見えますが、タイトルについているのは「1」という文字。果たしてこの先主人公が、そして何よりもドラキュラが明治の日本で何を見るのか――この続きをいつ読むことが出来るのか、それはわかりませんが、期待して待ちたいと思います。

「明治ドラキュラ伝1 妖魔、帝都に現る」(菊地秀行 講談社) Amazon bk1


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