新撰組異聞 暴流愚
サルベージシリーズその3。少年画報社の「アワーズライト」に連載されながらも、同誌の休刊により未完となっていた異色の新撰組漫画が、大幅な書き下ろしを加えて復活&完結。もう読めないのかなあ…と思っていただけに、嬉しい驚きでした。
内容的は、新撰組に雇われて陰働きを担当する渡世人にして暗殺者のアイヌ人・ボルグとその同業者のアウトローたちが、やがてはその新撰組を敵に回し、ある者は滅び、ある者は傷つきながらも生き延びていく…という、幕末バイオレンスアクションであります。
絵柄は少々癖のあるアニメ絵(知っている人にとっては常識でありますが、芦田氏はアニメ界の大ベテランであります)で、いささか描写に粗い部分があるのは正直なところ。
また、池田屋事件の後まで芹沢鴨が生きているなど、史実を無視した展開も多いため、真面目な時代劇ファン(特に真面目な新撰組ファン)はしかめ面するかな…という気はします(個人的には、土方歳三の出自の件が、ちょっと無理があるなあと思いつつ、伝奇的には魅力的に感じました)。
しかし、この作品で描かれる人間群像は、重苦しく、残酷でありながら実に魅力的。ただひたすらに自分の道を往く者、道を見失い外道に堕ちる者、人間らしく生きようとしつつも果たせぬ者…幕末という時代でなければ描けないドラマがそこにあります。
ボルグという人間は一人でも、登場するキャラクター全員が「暴流愚」なのだなあと思った次第。
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