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2005.07.31

全ては一つの命 「陰陽師 瘤取り晴明」

オンライン書店ビーケーワン:陰陽師瘤取り晴明
 サルベージシリーズ。夢枕貘先生の陰陽師シリーズの一編であるこの作品、タイトルからわかるように、広く知られた「こぶとりじいさん」の物語をベースとしたものとなっています。

 「こぶとりじいさん」の物語は、隣のじいさんがもう一つこぶを付けられてしまったところで終わるわけですが、この「瘤取り晴明」ではここからが晴明と博雅の出番。なおも鬼たちにつきまとわれることとなった二人のじいさん(この物語では双子の薬師)を救うため、晴明が百鬼夜行の群れを相手にどのような術を見せるか、それは読んでのお楽しみですが、いかにも晴明らしい、この「陰陽師」という物語らしい決着の付け方で、後味の良い、何とも趣深い結末となっておりました。

 何よりも気持ちが良いのは、物語の中での百鬼夜行の鬼たちの描写。もちろん人にあらざるもの、この世のものならざるものたちである以上、姿は奇っ怪で言動も恐ろしいものではありますが、この鬼たちは――この「陰陽師」シリーズにこれまで登場したものたちと同じように――雅を解し、優れた芸能を愛する心を持った、何とも愛すべき存在として描かれているのです(まあ、そうでなくてはこの物語がそもそも成立しないのではありますが)。

 恐ろしげなる鬼たちが人の踊りに喝采し、博雅の笛に随喜の涙を流す。それは一歩間違えると、何とも滑稽な眺めとなりかねませんが、この物語においては決してそんなことはなく、むしろ感動的ですらあります。たとえ人にあらざるものであっても――この世の則を超えたものであっても――我々人間と同じように、もののあわれを解し、優れた美に感動する心を持つ。…それは何とも心温まる、そして心強いことではありますまいか。
 そしてそれは、美が種族の違いを乗り越えさせた、ということではなく、むしろ人間も鬼たちも同等の存在であり、だからこそ同じものに心を動かされた、と解すべきなのでしょう。
 人間たちも鬼たちも、どれだけ異なる存在のようであっても、天然自然の中、根本では全て一つの命。それを時にはつなげ、時には分かつものが、一つには晴明の操る「呪」であり、一つには博雅の奏でる笛の音なのでしょう(おお、やはり晴明の言うとおり、博雅は大した漢なのだなあ)。

 恐ろしくもユーモラスな物語を愉しみつつも、一つの(たいへん大袈裟に言えば)宇宙観すら背後に透かし見ることができる――この「瘤取り晴明」は、そんな作品です。

 ちなみにこの物語に登場する百鬼夜行の中には、「陰陽師」のシリーズファンであれば「おっ」と思わされる面子も混じっており、一種の特別編的な愉しみもあります。これまで明かされていなかった博雅の笛の元の持ち主も現れますしね。

 最後になりましたが、この作品は元々村上豊先生の絵による絵物語として描かれたものとのこと。これまでもシリーズを飾ってきた村上先生の絵は、俗っぽいものと雅やかなものが同時に感じられる不思議な作風であるとともに、どこかゆったりしたユーモラスな空気が流れる作風。民話をベースとしたこの物語には、たいへんよくマッチしておりました(おヒゲのある晴明と博雅は、正直個人的には違和感なのですがガタガタ言わない)。


「陰陽師 瘤取り晴明」(夢枕獏 文藝春秋社) Amazon bk1

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2005.07.30

極限の忍者バイオレンス 「忍び鬼 天山」

オンライン書店ビーケーワン:忍び鬼天山
 「黄金の忍者」シリーズで活きのいい忍者アクションを描いてくれた沢田黒蔵先生の最新作は、アクションというよりもむしろ忍者バイオレンスと呼ぶのがふさわしい一大殺戮戦。大坂夏の陣前夜を舞台に、かつて「天忍」と呼ばれ、全身兵具と恐れられた最強の忍者・天山の血で血を洗う復讐譚です。

 物語の縦糸は、大御所家康暗殺を企む謎の一党の計画、そして横糸は家族を惨殺されて地獄に舞い戻った天山の復讐行ですが、。この二つをつなぐ形で描かれるのが、天山vs伊賀者の壮絶というのも愚かな死闘また死闘の連続。復讐の鬼と化した天山の行くところ、比喩でなく屍山血河の地獄絵図が生まれます。この物語の副題が「地獄の犬ども」であり、また各章題が黒縄・焔熱・阿修羅・阿鼻叫喚・大紅蓮・無間と六大地獄の名から採られているのも、ふさわしい趣向と言えるでしょう。忍びたちの命が、鴻毛どころでなく軽々と吹っ飛んでいく様は(不謹慎を承知で言えば)、むしろ爽快感すら感じさせられてしまうのが恐ろしいことです。

 と、その一方で、忍びというものの――ひいては人というものの業が、この物語からは伝わってきます(天山をはじめとして、憑かれたように死闘に身を投じる忍びたちの多くが、元々は戦いというものに倦んでいたと描写されることは、その一つの現れと言えるでしょう)。そして、ある意味兵士の極限とも言うべき忍びたちのこの死闘が、戦国という時代の締めくくりとも言うべき大坂の陣前夜を舞台として描かれていることにも、作者の意図が感じられます。

 単なるバイオレンスアクションにとどまらず、忍びたちの死闘を通して人という存在のどうしようもない一つの真実の姿を描き出す――忍者小説の妙手ならではの作品と申せましょう。


「忍び鬼天山 地獄の犬ども」(沢田黒蔵 学研M文庫) Amazon bk1

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2005.07.29

還らざる幸福 今週の「SAMURAI DEEPER KYO」

 最初の死の病の発病者を調べるうちに自分たちの正体に気づいた吹雪たち。死の病という欠陥を亡くし、新たに戦闘人形を造り出すことにより自分たちが真の壬生一族になる――それが壬生再臨計画の正体だった。そのために他者を犠牲にすることを避難する灯たちだが、吹雪は壬生一族の幸せのためならば信念も魂も喜んで邪神にくれてやると言い放ち、辰怜の言葉にも耳を貸そうとしない。一方、狂を自分の後継者と認めた初代紅の王は、狂に紅の王の御印を与える。そして、ひしぎの光速刀が灯たちを襲ったとき――ついに狂が立ち上がった!

 前回に引き続き、物語の根幹を成す秘密が語られた今回。まあ、死の病の正体は大体予想通りでしたが、味方側に壬生の人間も増えた今となっては、確かにツラい展開ではあります。
 しかし今回一番良いところをさらっていったのはなんといっても辰怜。ズタズタになった体で立ち上がり、やむを得ぬ理由とは言え外道に走ったかつての師に、「こんなことをしたってあなたの望む過去はもう戻ってこない」と(ここで再び「吹雪様」と呼ぶところがまた…)訴えかけるシーンは、なかなかクるものがありました。あ、その後の拳一発で轟沈というオチも。
 ここで辰怜が、師の想いを知った上であえて師の前に立ち、戦いを挑んでGENNKAITOPPAする、というのが物語的には非常に美しいのですが…いきなり狂がここで吹雪とひしぎ倒しちゃったら最悪だなあ(笑)

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2005.07.28

御隠居二人の北紀行 「御隠居忍法 唐船番」

御隠居忍法 - 唐船番
 高橋義夫先生の御隠居忍法シリーズ第4弾。前作のラストで江戸から奥州の隠居所に帰ることとなった御隠居・鹿間狸斎ですが、津軽で消息を絶った御庭番時代の同僚の消息を探るため、同じく隠居で親友の元奉行・新野耕民さんと共に隠居所で落ち着く暇もなく探索の旅に出る、というストーリーです。

 これまでは隠居所のある奥州笹野藩(江戸も少し)が舞台となっていたこのシリーズですが、今作では笹野の地を離れての旅物語。御隠居二人に加えて、鉄人流日月の太刀を操る男装の女剣士も加わり、いつものことながら、陰謀と剣戟には事欠かない展開となっています。
 サブタイトルとなっている「唐船番」とは、異国船の出没に備え、密貿易に目を光らせる公儀の隠し目付のこと。その唐船番がどのように事件に絡んでくるかは読んでのお楽しみとして、暗殺者との死闘あり、海賊の襲撃ありと、舞台は変わっても、相変わらず御隠居とは名ばかりの狸斎さんの活躍が楽しい作品となっています。

 その一方で、この作品では、狸斎さん耕民さんだけでなく、様々な御隠居たちの――必ずしも幸せとは言い難い――姿も織り込まれており、そしてまた、ある意味理想の老後とも思える生活を送る狸斎さんであっても、過去のしがらみからは逃れられない――今作での冒険行は、まさしくそこから発したものであります――ということもまた、描かれています。
 どんな人間であっても、生きていく限りは必ず何かを背負い、それを引きずっていくという、当たり前ではあるけれども普段はなかなか認識し難いことを目の当たりにさせてくれるこの作品、エンターテイメントとして楽しいだけでなく、人の正しい生きる(=老いる)道とは何か、自由とは何か、ということは何か、ということも考えさせられるものとなっているのが、いかにも高橋先生らしいと感心しました。


「御隠居忍法 唐船番」(高橋義夫 中公文庫) Amazon bk1

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2005.07.27

地続きの世界の向こうへ 「百物語」

百物語
 この22日、杉浦日向子さんが亡くなられました
 私は杉浦先生のあまりよい読者ではなく、また、漫画家としてよりも江戸風俗研究家としての印象を強くもっていることもあり、そんな私がこうした文章を書くのも如何なものかと思わないでもないですが、追悼の意味を込めて、そして怪奇を愛する者として、この「百物語」について駄文を綴らせていただきます。

 この杉浦版「百物語」は、江戸時代を舞台とした怪異を描いた全九十九話から成る短編集。江戸時代の著名な怪談に材を採ったものもありますが、いずれも作者一流の慎ましやかで細やかな描写によって、作者独自の怪異談として成立しています。
 一口に怪談と言っても千差万別、実に様々な趣向のものがあるわけで、この「百物語」も非常にバラエティに富んだ怪異の宝石箱とも言うべきものとなっていますが、しかしそのそれぞれに共通しているのは、描かれる怪異が、この世と地続きのものとして描かれ、受け止められていること。

 確かに登場する怪異の数々、幽霊や妖怪、狐狸の類や魑魅魍魎などは、この世ならざるもの。しかし彼ら(とあえて呼ばせていただきますが)は、いずれもこの世(人間の世界と言い換えても良いでしょう)に地続きにつながった何処かの住人であって、何かの拍子に彼らがこの世に顔を見せたり、こちらの人間があちら側に足を踏み入れたりすることもある、いわば隣人とも言える存在であります。
 そして怪異と対面した人間たちも、それを恐れながらも、ありうべきもの・こととして、それなりに受け入れて自分の生を送っている様が描かれます。つまり、ここで描かれるのは、決して異次元の怪異、人とこの世と断絶した世界ではないのです。

 この「百物語」の中には、怪談ジャンキーを自認する私も、それこそ「惣身に水を浴びた心持ち」になる怪談が、少なからざる数収録されているのですが、しかしそれでも決して不快感を感じることなく、どこか柔らかなものすら感じさせられるのは、怪異の世界を地続きのあちら側として眺める杉浦先生の視点によるものでしょう。
 そしてそれは、江戸時代という過去を、現在と地続きのあちら側として描く視点と共通のもの、と評しても、あながちうがった見方ではないのではと思います。

 杉浦先生のそんな視点からの著作をこれ以上読むことが出来ないのは非常に悲しいことですが、地続きの世界の向こう側に通じる扉の鑰とも言うべき、この「百物語」という作品が遺されたということは、どこか心慰められることではないでしょうか。


「百物語」(杉浦日向子 新潮文庫) Amazon bk1

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2005.07.26

正に大団円 「隠密剣士 完結編」

 「漫画時代劇ファン」誌の盛夏超特大号が発売されました。今年の3月号で残念ながら休刊となった同誌ですが、事実上の最終号であるこの超特大号でもって、看板作品の一つであった「隠密剣士」がめでたく完結の運びとなりました。まずは欣快の至りです。

 風摩一族との秘宝争奪戦もいよいよクライマックス、3月号のラストで、見た者の精神を一瞬にして破壊する鬼瞳坊の瞳術にかかってしまった隠密剣士・秋草新太郎の運命は!? 北条一族の残した秘宝の正体とは!? そして最強の敵・十代目風摩小太郎との決着は!? と全編これまさに見所、アクションのつるべ打ち状態で大満足。待たされ続けた甲斐があったというものです。
 新太郎がいささか強くなりすぎた感もないではないですが、この作品の、シンプルながら相変わらず迫力あるアクション描写の前には、そんなことはささいなことにすら思えます。

 新太郎と小太郎との頂上決戦も、前のエピソードである「甲賀五忍衆の章」のラスボス甲賀竜四郎との決戦が、「技」と「技」との対決とすれば、こちらはまさに「技」と「力」、「柔」と「剛」の真っ向勝負。一発でもくらえば即死級の小太郎の猛撃に、如何に新太郎が立ち向かうか!? というところは是非自分の目で確かめていただきたいと思います。そして、その後に待つ、驚愕の展開にも。
 そして、共に重い宿業を背負った二人の死闘の果てに待つ結末は、正に大団円と言うべきもの。特に、復讐の悪鬼として描かれていた小太郎の心の底にあったものが、新太郎との戦いを経て初めて露わにされるシーンは感動的でありました。

 そんなわけで、時代活劇として実に正しく面白かったこの「隠密剣士」もこれにて一巻の終わり。とはいえ、いくらでも続きの描ける終わり方であり、またどこかで続編が描かれることを、心の底から期待している次第です。


 …と、蛇足を一つ。この超特大号、3月号で告知された際には、「必殺!! 闇千家死末帖」の特別編が掲載される旨予告があったのですが、影も形もなし。一挙五本掲載とあった「伝説日本チャンバラ狂」も、一本のみ(これはこれで思わずビデオ屋に走りたくなってしまう好編だったのですが)。
 色々と事情はあるのでしょうが、「隠密剣士」の満足度が高かっただけに、こうした予告との相違は非常に残念でありました。

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2005.07.25

8月の伝奇時代劇関連アイテム発売スケジュール

 8月の伝奇時代劇関連アイテム発売スケジュールを更新しました。右のサイドバーからも見ることができます。

 注目は、小説では上田秀人先生の光文社文庫での第2作でしょうか。その他にもシリーズものの最新刊も多く、なかなか豊作です。
 驚いたのは桑原水菜先生の「風雲縛魔伝」の第6巻が発売されること。ほぼ10年ぶりのシリーズ最新刊ということになるのでしょうか。正直、続きが出るとは思っていなかったので嬉しい驚きです。
 6巻と言えばもう一つ、学研M文庫では牧秀彦先生の「闇仕置(6)(仮)」っていうのがあるのですが…シリーズは5巻で完結したので、いくらなんでもこれは間違いでしょうなあ…たぶん「荒神仕置帳」の続巻のことだと思います。

 漫画では、何と言っても「怨みの刺客 鬼一法眼」。明示されていませんが、まず間違いなく幻の「唖侍 鬼一法眼」の再刊でしょう。おそらくコンビニ売りの廉価版コミックだと思いますが、リイド社はこの形態で過去の名作を幾つも復活させているので、全くもって油断できません。

 そしてその他では、何と言っても「白獅子仮面」の通常版DVD化が最大のニュースでしょう。数年前にDVD-BOX化された際は、相当出荷数が少なかったためかかなりのプレミアがつきましたが、今回比較的安価にこの作品を見ることができるようになったのは、喜ばしいことであります。
 顔は怖いし(特に変身シーンは真剣に怖い)、1クールで終わってしまったし、三ツ木清隆が主演だったことがネタになるくらいの相当のマイナーヒーローではありますが、存外に時代劇としてきちんと作ってあるこの作品、妖怪ブームらしい昨今(いまいち実感が沸かない)、少しでも多くの人が見てくだされば幸いです。

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2005.07.24

造られし者の叫び 今週の「SAMURAI DEEPER KYO」

 地下に落ちた幸村たちの前に現れる鎮明。朔夜を奪い去ろうとする鎮明の前に立ちふさがったのは、サスケだった。  一方、吹雪は現在の壬生一族の真実を語る。闘いに明け暮れる果てに、戦闘用の生物を造り出した真の壬生一族。やがて造られし命は時を経るにつれて壬生一族に似た姿と能力を持つようになり、その果てに自らが戦闘人形だったことを忘れてしまったのだった。すなわち、その戦闘人形の末裔こそが現在の壬生一族なのであり、その事実を知った吹雪は、自らを悪としても、現在の壬生一族を守ろうとしていたのだった。  そして、吹雪たちと遊庵たちの闘いを見物する先代紅の王。その瞳は、真の紅き眼と化していた――

 今週の、というか先週のKYO。
 ついに壬生一族の正体が明かされた今回。クローンかな、と思っていましたが、戦闘人形の末裔だったとは、これは確かにキツい真実。人一倍壬生一族に誇りを抱いていた辰怜(いつの間にか復活)が大ショックを受けるのもうなづけます(個人的にはここを乗り越えてGENKAITOPPAして欲しいものです。太白や歳世という壬生一族にあらざる者と心を通わせていた彼だからこそ)
 一方、荒れるお兄ちゃんと対照的に、死んだら「まるではじめからそこに命なんてなかったみたいに」粉となって消えてしまう壬生一族のことを不思議に思っていたと静かに語るほたる。前回の吹雪への怒りといい、本当に印象的でおいしい出番をもらいますな。
 そして、これまでとうって変わったように鬼畜な一面を見せる先代。出来の悪い戦闘人形は一掃して、新しい戦闘人形を造るのもいいなどと言っているところを見ると、全てはこの人の愉しみのためだったのか、という感もありますが、まあこの人もたぶん善人なんじゃねえかな、とは思います(自然の摂理に反する壬生一族を全て滅ぼすためにあえてやってるとか)。

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2005.07.23

スマートで暢気な幕末名探偵 「亜智一郎の恐慌」

亜智一郎の恐慌
 泡坂妻夫先生の幕末を舞台とした連作短編集。表向きは江戸城雲見櫓でひねもす雲を見て過ごす雲見番、その実は将軍直属の隠密という亜智一郎をはじめとする雲見番たちの活躍を描いた作品が七編収められています。
 泡坂先生の作品は、時代小説であっても、どこかモダーンな、洒脱な雰囲気をたたえていますが、この作品も例外ではなく、舞台となる時代は風雲急を告げる幕末、起きる事件も深刻なものばかり、一歩間違えれば天下動乱につながりかねない事件も一度ならず…なのですが、主人公である亜智一郎のスマートかつどこか暢気なキャラクターも相まって、軽い気分で読むことが出来ます。

 もちろん、元々ミステリをホームグラウンドとする作者の作品だけあって、単に楽しいばかりでなく、いずれの作品もピリッとひねりの効いたトリックが楽しめる仕上がりとなっています。
 個人的に一番面白かったのは第2話「補陀落往生」。藩主が家臣を大量に手討ちにしたというさる藩に潜入した智一郎たちが、そこで目撃した手の施しようのない病人を安らかに往生させるという補陀落往生の儀式。その秘密は…という一種の不可能犯罪ものですが、物語を構成する全てのピースがぴたりとはまる結末が見事な一編でした。

 また、時代小説として見れば、「激動の時代」というキーワードでまとめられがちな幕末という時代を、どちらかといえば傍観者的な存在である雲見番の立場から見ることにより、多面的に、そして血の通ったものとして描いている点に注目すべきでしょうか。

 ちなみにこの連作、登場するキャラクターたちは、主人公をはじめとして、泡坂先生の現代を舞台にしたミステリ「亜愛一郎」シリーズに登場するキャラクターたちのご先祖にあたる…ということなのですが、恥ずかしながら私はまだ「亜愛一郎」シリーズを読んでおりません。
 読んでいれば、より一層楽しめたのだろうなあと思いますが、読んでなくともこの作品単体でも十分に楽しめることは間違いありません。

 なおこのシリーズは、池田恵先生により「サスペリアミステリー」誌で漫画化されていたとのこと。
 ああ、池田先生の絵柄は何だか似合いそう…単行本化されないかしら。


「亜智一郎の恐慌」(泡坂妻夫 創元推理文庫) Amazon bk1


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2005.07.22

「戦国BASARA」ファーストインプレッション

戦国BASARA
 昨日、「戦国BASARA」を入手しました。とりあえず一時間弱ほどプレイしてみましたので、ファーストインプレッションというやつを書きたいと思います。
 なお、内容的にどうしても「戦国無双」(以下「無双」)と比べてしまうのはご容赦いただきたく。そちらの比較に興味を持つ方も多いでしょうから。

 使ってみたのは若本ヴォイスが素敵な織田信長。無双ではデフォでは使えなかったので、最初から使えるのは嬉しいですね。
 そしてプレイしてみたのは、メインのモード(と思われる)天下統一モード。いわゆるストーリーモードというやつで、選んだ武将で敵勢力を一つ一つ潰していくことになります。一種のターン制になっていて、一マップクリアすると、コンピュータが動かす他の武将が、他勢力に攻めていき、またプレーヤーの番が回ってきて…という形になっています。
 無双では各キャラクター毎にストーリーモードがかなり違う形で用意されていましたが、こちらではどのキャラクターも同じマップで潰し合っていくことになるようです(もちろん攻略順によって、ステージやイベントも異なっていくようですが)。
 個人的には、いかにも国盗り合戦をやっている感じがあって、なかなか面白いアイディアだと思います。ただし、これを16キャラ繰り返すと飽きるかも…

 さて、とりあえず信長を使って、桶狭間(vs今川義元)と三方ヶ原(vs徳川家康)をプレイ。
 プレイ感覚は…無双だ(笑)。無双ですよこれは。
 画面構成がほぼ同じとか表面的な部分でなく、ゲーム性がほとんど一緒に感じられました。マップの中を走り回ってワラワラ迫ってくる雑魚を薙ぎ倒して、中ボス格を何人か倒して、ボス武将を倒してステージクリア。ゲージが溜まると派手なエフェクトの必殺技使用可能。こう書いてみるとこの手のゲームではほぼ共通のことなので、ことさら騒ぐほどのことでもないように思えますが、登場キャラ・操作感・画面構成と相まって、プレイ感覚は相当に近く感じられます(細かいことを言えば、雑魚でも飛び道具兵とデブが鬱陶しいのも一緒)。

 ただし、難易度的にはこちらの方が結構低めの印象。とりあえず、この辺りのステージであれば、ジャンプとステップ、カメラ移動を全く使わなくても(説明書くらい読もうよ…)どうにかなったくらいの難易度でした。
 これは意図的に難易度を下げて、間口を広くとっているのでしょうね。キャラの固有技(大技みたいなもの)も、隙などはそれなりにあるものの無制限に出せるし、コンボも複雑な操作なしにつながっていくので、ガチャプレイで適当に操作していてもスーパーヒーロー感が味わえるのは非常に良いですね。

 ちなみにステージ内容としては、桶狭間は、まあ敵もマップもごく普通な感じでしたが、三方ヶ原では、ほとんど人型機動兵器状態で、発売前から「ホンダム」として評判を集めた本多忠勝が大暴れ。異常に固い装甲と高い体力で、ほとんど倒すのは不可能の無敵キャラでした。こっちが雑魚をスタイリッシュに虐めていると、後ろからぐいーんと迫ってくるので実に心臓に悪い。カプコンだけに、ほとんどこの方だけノリはバイオハザードの追跡者でした。
 今のところこのゲームのキャラクターは、はっちゃけているようで意外と地に足がついた連中なので(単にお前が普段気の狂ったもの見過ぎなんだろ、と言われればそれまでですが)、こういうホンダムみたいなキャラ造形は非常に楽しいですね。

 その他、気付いた点としては
○ゲーム進行
 無双は各ステージでかなり頻繁にイベントや作戦指示が出ましたが、こちらでは今のところそれはかなり少なめの印象。ちょっと単調と言えば言えますが、正直無双はあまりに作戦指示が出すぎという印象もあったので、これは好みかもしれません。もちろん、ステージが増えればきっと色々あるのだろうと思います。

○ステージの広さ
 これは完全に個人の主観ですが、なかなか適正規模じゃないかと思います。無双の時は、プレイ時間の何割かはとにかくステージを孤独に走っていた印象があるので…

○メッセージ表示:
 ステージ中、状況説明のメッセージが画面真ん中辺りを横切るように表示されるのが、正直目障り。戦闘の状況に応じて表示されるため、戦闘中はかなりの頻度でメッセージが表示されるこのゲームでこの仕様は、いかがなものか、とは思います。ちなみにキャラの台詞は画面下の方に表示されますが、こちらはまだましかな。

○ボスキャラ登場画面:
 ボスキャラ(主人公キャラ)級のキャラが登場する際には、ムービーデモと、一枚絵が表示されます。この時、キャラの名前の横に四文字の異名(信長なら「征天魔王」、家康だったら「東照権現」)が表示されるのですが、何だかウルトラマンとかの「○○怪獣」チックで愉快です。


 以上、色々と書きましたが、なかなか面白いゲームであります。
 やりこみ要素は少なめなのかな、という気がしないでもないですが(無双では無限城モードなどありましたしね)、その一方で、軽い気持ちで少しずつサクサク進めていく分には、なかなか良い――特に、勤め人が会社から帰って寝るまでの間に、ちょっとストレス発散する分にはかなり良い――感じではないかなと思います。

 もちろん、ここに書いたことは、あくまでもちょっとゲームを触ってのものですので、これから攻略が進むにつれて、印象は色々と変わってくることは当然ですが、興味を感じた方は、まず触れてみても損にはならないと思います。少なくとも、きちんと遊べるゲームとして成立していますからね。


 しかしこれ、無双を作ったのが某訴訟大好きメーカーだったりしたら確実に訴えられるだろうなあ、光栄ってその辺りどうなのかしら、とか思っていたら、訴訟に対する心配はゲーム屋店員の戯言様でも触れられていましたね。


「戦国BASARA」(カプコン プレイステーション2用ソフト) Amazon

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2005.07.21

さくらがんばる! 今週の「Y十M」

 いや、さすがにこりゃイタタなタイトルだ。反省。
 さて、隔週連載もだいぶ(読者の側も)慣れてきた「Y十M」、今回は会津七本槍による般若侠の正体推理と、十兵衛先生による堀の女たちへのスパルタ教育スタート、といった趣。

 どちらの場面も、原作にほぼ同じシチュエーションがありますが、そのイメージを壊さないようにしながら、オリジナルの展開・描写を交えているのがミソ。
 会津七本槍のシーンでは、「猿」呼ばわりの小ネタで笑わせつつも、一転、七本槍の異常さを印象づける無惨絵のインパクトが鮮烈。
 一方、より独自の展開となっているのは十兵衛による堀の女たちの特訓シーン。このシーン、原作にはありません。より正確に言えば、この位置にはなく、もう少し後で描かれる場面なのですが、物語の展開とキャラ立てを考えると、ここで描いておく方がむしろ適切に思えます。

 この特訓、堀の女たちには真剣を持たせ、十兵衛自身は扇で相手をするというもの。怒る者、ためらう者ある中で、真っ先に十兵衛に挑んだのは、ボーイッシュな(ほとんどバジの夜叉丸)さくら。当然のことながら一撃で叩きのめされるわけですが、さくらのキャラクターを強く印象づけられたのではないかと思います。
 連載開始時にも書いたような気がしますが、原作のほぼ唯一と言っていい弱点が、堀の女たちの個性の薄さ。この「Y十M」では、その点を意識してか、意図的に七人のキャラクターを立てに来ているようです。素晴らしい。

 さて、今回までで
十兵衛 >>> 会津七本槍 >>>>>>> 堀の女七人
という強さ設定がはっきり見えたわけで、その上で、会津七本槍と堀の女たちとの間の不等号を如何に十兵衛が――自身で手を下さずに――逆転させるかというゲームのルールも見えました。
 おそらくはこれよりが本章、毎回毎回楽しみにしておりますが、新しい展開を見せるであろう次回がより一層楽しみであります。


 なお、講談社ノベルスより、せがわまさき先生の表紙イラストでこの「Y十M」の原作たる「柳生忍法帖」と、「バジリスク」の原作の「甲賀忍法帖」が復刊される旨、せがわ先生の公式サイトで告知されておりました。
 買う。当然買いますよ。特に「柳生忍法帖」。

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2005.07.20

伝奇時代劇の風は吹くか 「里見八犬伝」と「SHINOBI」

 周回遅れのネタを得々として採り上げる似非ニュースサイトモードですよ。
 何のお話かというと、「里見八犬伝」が来年の正月に滝沢秀明主演でTVドラマ化されるというお話(ニュース記事 公式サイト)。
 タッキー、主人公の犬塚信乃役だそうです。主役だったのか、信乃。いや、わからないでもないですが。
(なお、この件については、えとう乱星先生から情報をいただきました。本当にありがとうございます)

 時間も5時間と相当の長尺だし、これは非常に楽しみです。原作をどこまで映像化できるかはわかりませんが、下手に原作にこだわらず、娯楽活劇としてブチかましていただきたいですね(しかし、八犬伝が初TVドラマ化(人形劇は除くとして)というのは意外でした)。

 個人的には仲間由紀恵さんが伏姫役というのも嬉しいですが、「やってくれた喃」と唸らされたのは玉梓役が菅野美穂さんということ。あの、平成の化け猫女優(言い過ぎ)が玉梓…素晴らしい。妖艶さが足りない、という声もありますが、妖艶さは船虫に任せとけ。にっこり微笑んでいるだけでゾクゾクするほど恐ろしい(褒めてます)希有な女優である菅野さんが玉梓が怨霊役とは、非常にはまり役だと思います。

 とはいえ…個人的には暗雲を早くも感じているのも事実。日本映画でスタッフがこれ言ったらほぼ100%確実に地雷宣言である「CGを駆使した」「最先端のCGで表現」などというフレーズのがこの作品でも臆面もなく出てきているわけで、そういう点では、素晴らしく不安感は高まります。「ロード・オブ・ザ・リング」引き合いに出すのは…「妖怪大戦争」も確かやってたからまあよしとしましょう。
 さらに、武田鉄矢、泉ピン子、長塚京三という、上記のキャスティングを台無しにしてくれるような面子も相まって…

 残り七犬士のキャスティング(あと、赤マフラーがどんな珍妙なコスで登場してくれるか)という部分に希望を見いだしたいと思います。とりあえず、歌舞伎界の若手と特撮経験者は必須で。浜路はどうでもいい。

 ちなみに、このニュースで八犬伝に興味を持った方には、ぜひ碧也ぴんく氏の「八犬伝」(ホーム社漫画文庫 全8巻)をご覧いただきたく。私の知る限り、ほとんど唯一、あの長大な原作をほぼ忠実に漫画化した(終盤の展開が一部異なりますが、これはこれで、八犬伝の一つの立派な解釈として成立しています)名作であります。
 八犬伝の名前は聞くけれどもちょっと原作には手が出ない…という人でも、楽しく読むことができると思います。


 も一つ、これは新しいニュース。時代劇つながりとともに仲間由紀恵つながりでもあるお話。「甲賀忍法帖」の実写映画化である「SHINOBI」のゼロ号試写が仲間さんの出身地・沖縄で行われたという話

 記事の中でもちょっと触れられていますが、ゼロ号試写がこういう形で採り上げられるというのはなかなか珍しい話で、松竹がそれだけ話題作りに力を入れている、ということなのでしょう。

 そして何よりも注目すべきは、「エンターテインメント性の高さを評価されたとし、アクション時代劇を新たな鉱脈と判断」というくだり。

 「里見八犬伝」の方とも共通する話ですが、伝奇時代劇の、(特にファンタジックな)エンターテイメント性に製作側が目を付けるようになってくれたのは、伝奇時代劇ファンとしては非常にありがたいことではあります。特に劇場用作品の場合、海外市場を考えたら、普通の映画よりは求心力は大きいはずです。
 もちろん、国内外から「時代劇なんてやっぱりダメじゃん」と言われないようなクオリティのものを作っていただかないと、元も子もないわけですが…

 ゲームショップに行っても、時代ものゲームで一コーナーが出来ていることも多い昨今、潜在的な需要・受け皿はあると思うのです。ぜひ、頑張っていただきたいものです。

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2005.07.19

「伊庭征西日記」休載が残念 「コミック乱ツインズ」8月号

 今月の「コミック乱ツインズ」誌は、元々掲載予定がなかった「黒田・三十六計」に加え、「伊庭征西日記」作者急病のため休載だったため、毎月私が楽しみにしている作品のうち、2作品が掲載されていないことになり、少々残念でありました。

 そんな中で今月も元気に突っ走っていたのは「武蔵伝」(石川賢)。柳生一門の暗殺部隊・羅刹衆の罠に陥り、宿の中で一人、また一人と惨殺されていく武蔵たち…という展開で、ほとんどホラー映画のようなノリでしたが、昔から閉鎖空間で追い駆けっこしながらの殺し合いを描かせたら抜群の冴えを見せる作者だけあって、無惨な展開の中にも妙なテンションの高さがありました(大体、襲ってくるのが不死身のサイボーグでも生きている穴でもないんだから、石川主人公にとってはこの程度ピンチの中にも入りませんわい…と無茶を言う)。
 と、作中の人物に言われるくらいムチャクチャな新免武蔵の活躍で危地を脱せるかと思いきや、ドカンと大爆発に巻き込まれたところで(このシーンでの柳生天鬼のムチャクチャな自信も素敵)以下次号。次号は巻中カラーとのことです。

 一方、「真田十勇士」(岡村賢二)は、前半で霧隠才蔵vs甲賀の四天王の筆頭・小野川天馬の戦い、後半で真田幸村と十勇士の大坂城入りと、全く趣の異なる場面ながら、どちらも重要かつ印象的なシーンが描かれました。
 特に才蔵vs天馬は、読者サービスシーンを展開しつつも、それが才蔵の攻撃の見事な伏線となっていて、決着自体はあっけなかったものの、忍者同士の死闘としてのリアリティが感じられるなかなかの名勝負でありました。

 その他の作品としては、「仕掛人藤枝梅安」(さいとう・たかを&池波正太郎)は相変わらず安定したクオリティ。梅安の医術の弟子と、音羽の元締めの養子と、二人の後継者の姿が描かれるのはなかなか興味深いものがありました。
 今月号で第2話の「忠臣蔵」(土山しげる&久保田千太郎)は、大石内蔵助の平和な日常と、吉良と柳沢の腹の探り合い(そしてそれが浅野家につながっていくことに)が平行して描かれる、嵐の前というべき内容。吉良と柳沢(あと大野九郎兵衛)が、いかにも嫌みったらしく描かれているところを見ると、フツーの忠臣蔵になるようですね。正直、がっかり。
 また、「伊庭征西日記」の代打と思しき読み切り「戦国外伝 家船のモズク」(佐々木慧)は、16世紀中期の瀬戸内海を舞台に、海の渡り者たる家船衆の姿を描いた作品。正直、絵のクオリティが…ですが、ラストで海の民としての気概と侍たちへの怒りを主人公が見せるシーンは、主人公の行動の容赦のなさが相まって印象的でした。
 あと、「竜馬がイク~ッ」(二階堂正宏)は、本当に毎回しょーもない内容なのに、毎回ナンセンスな展開とオチが妙に楽しいですね。

 来月号は「黒田・三十六計」も掲載されるということで、楽しみです。

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2005.07.18

「萌え」Tシャツ発売決定!・・・平田弘史先生の

 小生、平素より「萌え」なる概念には全く興味がない(いや、ギャグで使ったりはしますが)、と申しますか少々苦々しく思っていたところなのですが、そんな小生の心を千々に乱れさせるようなアイテムが発売されることとなりました。
 平田弘史先生揮毫になる「萌え」Tシャツ(竹熊健太郎氏のたけくまメモより)であります。

 いや、これはマジで凄いですよ? あの時代劇画の大家、数々の伝説を残す男の中の男――というか親父の中の親父、公式サイトのインパクトも素晴らしい平田弘史先生が、「萌え」ですよ?
 いや確かに先生の描くオヤジキャラはある意味「萌え」ですが…ってそういうことじゃなくて、Tシャツ一枚の中に、凄まじいまでの価値観の対立というか、陰陽相反する世界の相克といいますか、そのようなものも感じられるような気がする素晴らしいアイテムです。
 欲しい。上記の通り「萌え」なるものとは無縁の小生ですが、この「萌え」であれば別。さすがに外に来て歩く度胸はありませんが、寝間着代わりに来て寝ると、素敵な夢を見られそうじゃありません? …ネコミミ付けた猪子幻之介に殺人予告されたり(不謹慎な!)

 問題は、このTシャツが初回わずか100枚程度しか製作されないということですが…いや、青林工藝舎さんは需要を見誤ってはいけないと思います。買いたい人間の手に渡らず、ヤフオクで高値取引などされたら、何よりも平田先生に対して失礼ですよ?(売れ残る方がよっぽど失礼です)
 いずれにせよ、何としても手に入れたいと念じているところであります。


 あああああ、大事なことを忘れていました。このTシャツ誕生のきっかけとなったのは、たけくまメモ様の名記事・平田弘史先生訪問記(其ノ零其ノ一其ノ二其ノ三其ノ四其ノ五其ノ六)であります。
 完結してからこのblogでも紹介しようと思っていて、すっかり失念しておりました(汗)。平田弘史先生のファンは必見であります。
 (ちなみに番外の破壊力溢れる画像も必見!)

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2005.07.17

「仮面ライダー響鬼と7人の戦鬼」公式サイトオープン

 「仮面ライダー響鬼と7人の戦鬼」公式サイトがこの15日にオープンしました。
 公式blogもアリ、です(最近の映画はかなりblogを設置するものが多いですね)。

 一番気になるキャラクター紹介がまだ掲載されていないため、情報量はまだまだ…という印象もありますが、あらすじが掲載されているのが目を引きます。
 現代のシーンからスタートして、古文書に記された過去の物語が描かれていくとのことですが、目を引くのが、戦国時代のヒビキが戦いを捨てていることと、戦国時代の明日夢がヒビキを憎んでいること。このあたり、いかにも脚本担当の井上敏樹氏らしいひねり方で、(TV版の平穏極まりない人間関係が今ひとつな)私にとっては好感が持てます。
 というか立花藤兵衛って…

 とりあえず、公式blogに、トラックバックしておきましょう。

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2005.07.16

「ゲキ×シネ」第三弾は「SHIROH」

 「ゲキ×シネ」というイベントがあります。演劇DVDを制作・発売しているイーオシバイが主催しているもので、要するに劇場中継を映画館で流すものなのですが、映画館という人のたくさん集まる空間で、それも大スクリーン大音響で見る舞台の映像は、生で見るのとまた違った面白さがあります。
 そして何より演劇のチケット代に比べると遙かに安い料金で見れるというのも魅力。意外と演劇は敷居が高く見えるらしく、初めての友達を誘うと二の足を踏まれることもありますが、ほとんど映画一本分で見れるのであれば、誘う方も誘われる方も気楽です。

 …と書くと何だか宣伝みたいですが、これまで過去二回行われた「ゲキ×シネ」に私は二回とも、その作品を初めて見る友達を連れて行って、二回とも見事友達の洗脳(?)に成功しているのは歴とした事実であります。

 と、その「ゲキ×シネ」の第三弾が決定した、というお話し。
 過去二回に上映されたのは「髑髏城の七人~アカドクロ」「髑髏城の七人~アオドクロ」で、どちらも劇団☆新感線の舞台でしたが、今回上映されるのも劇団☆新感線の作品――昨年末に帝国劇場で上映されたロックミュージカル「SHIROH」です。

 この作品については、私も劇場で見て、このblogにも感想を書いていますが、リアルタイムで見た時のインパクトもさることながら、その後に様々なシーンを思い返して、その中に込められた意図・意味に後から気づいてハッとさせられることも多かった作品です。「2004-2005ぴあテン」の演劇部門で第1位となったのもむべなるかな、という気がします。

 今回の「ゲキ×シネ」は、今のところ東京は渋谷のみが決定のようですが、前回の「アオドクロ」の時も、最初は少なかった上映館があれよあれよと増えていって結局日本縦断したので、あまり心配はないのではないかな、と思います。

 もちろん今回も行く気まんまんですよ、私ゃ。

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2005.07.15

待望の続編、なのだけれど 「不忘の太刀 織江緋之介見参」

不忘(わすれじ)の太刀
 織江緋之介シリーズ第二弾。前作「悲恋の太刀」のラストで何処かへ消えた緋之介が、再び江戸に――新吉原に登場、幕府の闇の部分にまつわる事件に対して剣をふるう、という展開であります。
 今回は、堀田正信の幕政批判・領地返上事件を縦糸に、徳川忠長の自刃にまつわる秘密を横糸としたストーリー。悲嘆のどん底に沈んでいた緋之介は、盟友ともゆうべき徳川光圀の要請により再び立ち上がり、事件に挑むわけですが…

 正直、個人的には(あくまでも個人的には、ですよ)「微妙」の一言でありました。何と申しますか、キャラクターがストーリーの都合で動かされているような、そんな印象を受けたのです。
 上田作品は、これまで、どれほど入り組んだ物語であろうとも、主人公をはじめとするキャラクターたちが、それぞれの立場から生き生きと行動し、それが物語を単に複雑なだけでない、魅力と奥行きのあるものとしていると感じていたのですが、今作はそれがどうもうまくいっていない印象がありました。
 もちろんそれは、主人公である緋之介がいまだ悩みの中にあり、失意の中からこれから立ち上がろうとしているという今作の中での立ち位置によって、あまり生き生きとしていないと感じたのかもしれませんが…

 確かにいつもの通りストーリーは面白く、また剣戟シーンも迫力十分だったのですが、それだけにキャラの動きに、少々違和感を感じてしまった次第です。もちろん、あくまでも個人的な感覚ではありますし、前作を絶賛しておいてこういうことを書くのはいかがなものかと思いますが(というか、つい先日まで「織絵緋之介」とか誤記していた人間の言いぐさではないです)。

 まず間違いなくシリーズは続くと思われますので、今後の展開に期待いたします。


「不忘の太刀 織江緋之介見参」(上田秀人 徳間文庫) Amazon bk1

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2005.07.14

なまはげと百目 今週の「SAMURAI DEEPER KYO」

 初代紅の王が狂に見せた真の壬生一族の末路。それは全てを手に入れた末に、互いに殺し合うことにのみ喜びを見いだした果ての滅びだった。そして、王は告げる。今の壬生は、壬生一族であって壬生一族でない者と。  一方、捨て身の針で父・寿里庵が吹雪たちの刀を砕いた隙に反撃を狙う遊庵だが、ひしぎの封印された半身を埋め尽くす悪魔の眼により石化。さらに吹雪は易々と刀を再生させてしまう。が、母・伊庵を処刑したのは自分というひしぎの言葉に紅眼と化した遊庵は石化を脱して復活。吹雪への怒りに燃えるほたるとともに反撃に移るが、吹雪とひしぎも紅眼と化した――

 なかなか盛りだくさんな内容だった今回。
 やはり先週予想したように、現在の壬生は真の壬生のクローンか何かのように思えます。壬生最大の秘密とはおそらくそれで、それを知るからこそ吹雪とひしぎはあれほど必死になっているのかな、と。まだ数人真の壬生が生きてるらしいのも気になります。

 また、バトル面でも、驚き役かと思っていた寿里庵がナイスアシスト…かと思いきや、ネクロマンサーだから、という無茶な理由で吹雪が刀を再生。一方いつの間にか復活したほたるは、珍しく怒りを込めて吹雪に太刀を…って、ちょっと待て、一緒に倒された兄貴は何をしているのだ(ここで歳世と太白の魂が現れてGENNKAITOPPAっつう気もしますが)。
 そして大方の予想通り伊庵を処刑したのはひしぎ…というわけで遊庵は怒りのGENNKAITOPPA。師弟揃って紅眼覚醒したと思ったら、今度は妖怪コンビまで紅眼に――というわけで、なんだか紅眼のバーゲンセールになってきましたが、さて。


 あ、それにしても精神世界で狂歓迎のためにあんなコスプレをしてみせる初代紅の王のサービス精神には脱帽。

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2005.07.13

総司悲恋の結末 「探偵沖田総司」

探偵沖田総司
 サルベージシリーズ。沖田総司が坂本龍馬暗殺犯を追う! というえらくキャッチーな内容に、これまたキャッチーな題名の作品ですが、この作品、廣済堂文庫で都合4冊発行された沖田総司シリーズの続編にして完結編であります。

 このシリーズ、純粋で朴訥な青年ながら、剣を持たせたら鬼神も三舎を避く剣士となる沖田総司と、美貌と霊力を持ちながら、権高でがめつい姫巫女・烏丸龍子のコンビが京で起きる様々な怪事件に立ち向かってきたわけですが、その最後の事件とも言えるのが坂本龍馬殺し(一種宿敵とも言える龍馬殺しの犯人を、新選組の総司が追うのも一見妙な話ですが、この作品での近藤勇は、幕府を瓦解から救おうとした人物として龍馬を評価しているのでそこは問題なし)。

 しかし…幕末ファンなら言うまでもなく、そうでない人であってもここの年表などを見ていただけると一目瞭然(宣伝宣伝)なように、龍馬暗殺か一年も経たぬうちに新選組は事実上壊滅し、そして総司は…というわけで、龍馬の最期を、そして暗殺犯探しを描いたこの作品は、必然的に新選組の最期と、沖田総司自身の最期を描いた物語となりました。

 もちろん、龍馬暗殺犯の正体とその黒幕についての、この作者・作品独自の立場からの推理は興味深く(特にあとがきに示されたある事実には驚かされました)、それだけでも十分面白い作品でしたが、やはりシリーズを最初から追いかけてきた者としては、それ以上の感慨があったのが正直なところ。
 私は総司と龍子は言うに及ばず、その他のセミレギュラー陣も妙にキャラの立ったこのシリーズが大好きだったのですが、そのキャラクターたちが一人、また一人と退場していく様を見るのは哀しいものがありました。
 特に、総司に負けず劣らずの剣鬼であると同時に、総司に負けず劣らずの甘党であった佐々木只三郎と、総司が探索から帰るたびに笑顔と心からの料理で労ってくれた男乳母・井上源三郎が亡くなった時の喪失感たるや、ああ、殺伐としながらも何だか妙にうきうきと楽しかったこのシリーズも本当に終わりなんだ…と非常に切ない思いになったことです。

 そしてラスト、あまりに有名な総司と黒猫のエピソードをこの作品でどう描いているか、もちろんここでは詳しく触れませんが、総司の恋の一つの結末として、あまりに哀しく残酷な終幕となったことに、感じ入った次第です。


 …と、実は既に紹介してしまっているのですが、この「探偵沖田総司」が発表された後、烏丸龍子さんを主人公にしたシリーズがこれまでに2冊、発行されています。
 「沖田総司シリーズ」の続編ではなく、同じ世界観を龍子の側から描いたというものでもなく、完全にパラレルワールドのストーリーで総司も脇役に近いのですが、「沖田総司シリーズ」のファンであれば、ぜひ読んでいただきたい作品です。


「探偵沖田総司」(加野厚志 毎日新聞社) Amazon bk1


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2005.07.12

堅調な短編集 「御隠居忍法 鬼切丸」

御隠居忍法 鬼切丸
 伊賀者の末裔の御隠居・鹿間狸斎の活躍を描くシリーズ第三弾。今回は全八編からなる短編集で、後半が連作形式だった一巻目、完全な長編スタイルだった二巻目「不老術」とも異なる印象。もちろん、収録されている作品の間で時間の流れは存在しますが、どの作品から読んでも楽しめる作品集となっていました。

 基本的にはどの作品も、怪事件に巻き込まれた御隠居が、知恵と技でもって解決していくというパターンですが、それぞれに趣向を凝らしたシチュエーションで退屈することはありませんでした(もっとも、途中で山伏ネタが続くのはどうかと思いましたが。何かの伏線かと思いましたよ)。シリーズ第三弾に至っても堅調な歩みと申せましょう。
 個人的には、江戸に出た御隠居が、かつての上司に説教された挙げ句に振り回されていいようにこき使われる「ただしい隠居道」がベストエピソード。ラスト一行が印象的でありました。
 今月文庫版が発売される四巻目も楽しみです。


「御隠居忍法 鬼切丸」(高橋義夫 中公文庫) Amazon bk1


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2005.07.11

ビギナー向け古典怪談名作選? 「新編百物語」

新編 百物語
 仕事の内容が個人的にいつも不思議でならない志村有弘先生による怪談選集。
 ここ数年の怪談ブームで、百物語の名を冠した書籍も決して少なくはありませんが、この本は、平安~江戸期の怪談集・説話集・随筆から選ばれた怪談百話が収録されています。

 そこで採話元を見てみれば、「今昔物語集」「宇治拾遺物語」「耳嚢」「新著聞集」と、平安時代・江戸時代のメジャーどころからが中心。その中でもかなり有名なエピソードが数多く収録されているため、この手の話が好きな人にとっては、聞いたことがある話にかなりの確率でぶつかることになるのではと思います。
 もちろん、それはあくまでも熱心な怪談ファンにとっての話で、普段あまり怪談に触れないビギナー読者にとっては、一冊でメジャーどころの古典怪談にまとめて――それも百物語というスタイルで――触れることができるのは、なかなか面白い企画だろうな、と思った次第です。

 ただ一点気になるのは、訳文が生真面目すぎるということで…京極夏彦の「旧耳袋」くらい、とは言わないまでも、もう少しいじってもよかったのではないかな、という印象が正直あります。


「新編百物語」(志村有弘編訳 河出文庫) Amazon bk1

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2005.07.10

甦る八犬伝の世界 「八犬士」第1巻

 岡村賢二先生による「南総里見八犬伝」のコミカライズ第1巻。
 岡村先生は現在「コミック乱ツインズ」で笹沢左保原作の「真田十勇士」を連載しており、原作の世界を巧みにビジュアライズしていて好印象なのですが、この「八犬士」も、滝沢馬琴の「南総里見八犬伝」を――劇画として成立させるための脚色を適度に盛り込みつつも――違和感なく劇画として成立させていて、面白く読むことができました。

 岡村作品は、いつも登場人物のリキの入った表情が強く印象に残るのですが、この作品ももちろんその期待に背くことなく、若武者ぶりが凛々しい信乃、可憐な浜路、トラウマになりそうな邪悪さの玉梓、一目でクソ野郎ぶりが伝わってくる蟇六・亀篠夫婦と、こちらの頭にあるキャラクターのイメージを崩すことなく、生き生きとした絵でもって描かれています。
 そのキャラクター描写の中でも、特に印象に残るのは、伏姫の美しさ。凛々しさと艶やかさ、そして力強さを感じさせるキャラクター描写で描かれる伏姫の姿は実に見事で、特に第七話の扉絵の姿は、神女と評するのがふさわしいでしょう。

 なお、この作品では冒頭から犬塚信乃と犬川荘助が登場して村雨丸の物語が描かれますが、原作では発端として冒頭に置かれていた里見家と玉梓の因縁、伏姫と八房の物語は、途中、丶大法師が信乃と荘助に過去のエピソードとして物語るという形で描かれています。連載漫画としては、なかなかうまいアレンジといえるのではないでしょうか。

 さて、この第1巻で描かれるのは、浜路が簸上宮六(しかし宮六の顔が怖いです。怖すぎます)に目を付けられるところまでで、まだ序盤といったところ。八犬伝の物語はまだまだこれから先、長く長く続くわけですが、この「八犬士」がその全てを描ききることを期待して待ちたいと思います。残る八犬士や物語を彩る美女(特に悪女)たちがどのように描かれるか、想像しただけで胸躍るものがあります。


「八犬士」第1巻(岡村賢二 ニチブン・コミックス) Amazon bk1


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2005.07.09

作者渾身の時代伝奇 「鬼神新選III 東京篇」

オンライン書店ビーケーワン:鬼神新選 3
 待ちに待った「鬼神新選」の新刊が遂に発売。もちろん速攻で読了しました。
 何を書いてもネタバレになりかねず、突っ込んだことはあまり書けませんが、土方側には新たな新撰組隊士が加わるわ(ヒント:死んでません)、シスター・アンジュの背後には意外な人物がいるわ、新八と袂を分かった篝炎の前には意外な強敵(調べてみたらちゃんと実在の人物でまた驚き)が現れるわ、斎藤一は実においしいキャラだわ、近藤勇が大変なことになっているわ(すげえ。すげえよ近藤さん)と、面白すぎるキャラクター・ガジェットが山盛りであります。

 何の遠慮もなしに、自分が面白いと思う題材をひたすら叩き込んだ、作者渾身の時代伝奇小説、と言ってよいのではないでしょうか。

 それにしてもこの作品、まだ現時点でこのようなことを言うのは早計かもしれませんが、この物語は、近藤・土方ら死から甦った者たちは言うに及ばず、新八をはじめとする、未だ幕末に――江戸という時代にとらわれている者たちにとっても、再生の物語となるのではないか、という印象があります。
 そしてこの巻で繰り返し現れた「友」という言葉が、この先物語の中でどのような意味を持つようになるのか、それも楽しみであります。

 と、その一方で、作者自身も明言しているように、いささか分量が少ないことと、刊行ペースが遅いことはやはり非常に残念。せめて、一巻の分量はこれくらいでもよいですから、刊行ペースをもう少し早めていただけないかなあ…というのが心からの願いです。

 ちなみにこの巻には、本編に加えて池田屋騒動秘話とも言うべき番外短編「Soldier-blue」も収録。奥沢栄助(と聞いて一発でわかる人はなかなかだと思います)をメインキャラに持ってきたこの作品、伝奇抜きの新選組ものとして見れば水準作という印象。
 そしてまた、本編の方でのあのキャラのやろうとしていることは裏返しになっていたのか、と気づくことができ、この巻に収録された意味もきちんとあるのだな、と感心しました。


 読了直後のテンションであれこれ書いたため、実にまとまりのない文章ではありますが、時代伝奇小説ファンであれば、読んでおいて損はないですよ(ライトノベルだから…と手をこまねいているのは勿体ないですよ)、というのが正直な感想であります。


「鬼神新選III 東京篇」(出海まこと 電撃文庫) Amazon bk1


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2005.07.08

いよいよ佳境? 「陰流・闇仕置 悪淫狩り」

オンライン書店ビーケーワン:陰流・闇仕置
 サルベージシリーズ。松平定信の隠し子・松平蒼二郎を主人公とした「必殺」的時代劇アクションの第4巻です。
 「隠密」「悪党」「夜叉」と来て、「悪淫」とは一体…という気はしますが、それは置いておくとして。
 各巻全三話構成となっているこのシリーズですが、この巻でもそれは同様、後にスピンオフして主役作品が描かれることとなった火盗改長官・荒尾但馬守成章が登場、蒼二郎の正体に迫る第一話、新田義貞公の愛刀・鬼丸の複製を巡る陰謀譚の第三話、そして蒼二郎の相棒である辰次の過去が描かれる第三話と、バラエティに富んだ構成になっています。この辺り、今までの巻で一番バランス感覚に富んでいる印象があります。

 その中で異彩を放っているのは、蒼二郎が脇に徹している第三話。伝説の渡世人として恐れられた辰次の過去の女と瓜二つの女が現れ、揺れる辰次の心。だがその女にはある目的が…と、いうわけで、筋立て的には新味はありませんが、暗く終わりそうだった物語が希望のある締め方となっていて、嬉しい意外さがありました(そしておそらく、このエピソードに登場する女が、「悪淫」なんでしょうなあ)。

 個人的には、剣術・剣技のみならず刀剣そのものにも造詣の深い作者ならではの、刀剣奇譚と、蒼二郎の孤独な心の旅路が交錯する第二話が一番のお気に入りであります。

 さて、宿敵たるにふさわしい火盗改長官という存在も登場し、いよいよ佳境にさしかかった感のあるこのシリーズですが…果たしてどうなることでしょうか。


「陰流・闇仕置 悪淫狩り 松平蒼二郎始末帳」(牧秀彦 学研M文庫) Amazon bk1


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2005.07.07

兄弟惨敗 「今週のSAMURAI DEEPER KYO」

 最期の力を絞った一撃もかわされ、辰怜は敗北。代わって吹雪に立ち向かうほたるだが、炎を封じこまれてしまう。一方、凄まじい力でぶつかり合う遊庵とひしぎだが、徐々にひしぎは押されていく。遂に封印された半面を顕わにしようとするひしぎだが、そこに辰怜とほたるを屠った吹雪が登場、一気に遊庵らは窮地に立たされる。その頃、深手を負った狂は、天狼に取り込まれ、その中で初代紅の王と対面していた――

 この漫画ではちょっと珍しいぐらいに悲惨な負け方をさらした辰怜&ほたる。完璧に白目を剥いてしまった様は、女性ファンの悲鳴が聞こえるようです。ほたるはともかく、辰怜がここまでやられるとはちょっと意外だったかなあ。その一方で、絶対かませだと思ってた遊庵が大善戦。この辺りのバランスの取り方はなかなかうまいと思います。
 そしてラストに登場は初代紅の王。何だかどう見ても人間に見えません。そして王が言う「真の壬生一族」とは…やっぱりオリジナルの壬生一族はほとんど死に絶えて、今のはクローンとかそういうオチなんだろか。

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2005.07.06

再び動き始めた物語 「無限の住人」第18巻

無限の住人 18 (18)
 一時期は延々と人体実験話が続いて、何だかすっかり講談社の長期連載漫画の悪いパターンにはまった感のあったこの「無限の住人」ですが、この第18巻に至って、物語が猛烈な勢いで奔り始めた感があります。
 この巻では、拉致された万治を追って遂に凛と瞳阿の凸凹コンビが江戸城に突入(その前に挿入される、百淋と儀一の会話が切ない冒頭の一話も味わい深いものがありました)。

 そこから先は、潜入劇あり美少女百敲きあり(流石エロ雑誌でSM画描いたりするだけあるなあ)、逸刀流の隠し球・怖畔の大活躍あり、思いも寄らぬゾンビ・ホラー的展開があったり、そしてラストにはどうしようもない悲劇ありと――次のページで何が飛び出すかわからない(それでいて絵や描写のクオリティはバカ高い)という素晴らしい玉手箱状態。
 特に中盤、変態武士・咲楽による百敲きと、それに続く(ある意味最高のネタキャラ)怖畔の乱入の辺りの描写は、この作品のごく初期のノリを思い出さされて、何だか懐かしくなりました。

 また、凛が万治と離れて活動するのは、この作品では既に珍しくない展開ですが、以前の道中編では、状況に振り回されているばかりという印象があった凛が、この巻では積極的に状況を切り開くように行動しているのは、彼女の大いなる成長をうかがわせて印象深いものがあります(凛で印象深いと言えば、黄金蟲がようやく役に立ったのもまた印象深かったり)。

 さて、「アフタヌーン」誌最新号では、遂に凛と万治が再会、これまでの溜飲を一気に下げるような凛の大暴れもあり、これからの展開がいよいよ楽しみであります。


「無限の住人」第18巻(沙村広明 アフタヌーンKC) Amazon bk1


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2005.07.05

洒脱な大江戸怪異譚 「恋ヶ淵 百夜迷宮」

恋ヶ淵 百夜迷宮
 サルベージシリーズ。札差の若旦那・松太郎、手代の竹二、対談方の侍・梅沢という松竹梅トリオが活躍する洒脱な江戸幻想譚です。
 物語としては、松太郎と竹二が、松太郎の知人で旗本殺しの濡れ衣を着せられた二八蕎麦屋の青年・幸助を救うために東奔西走するというもの。これだけだとごく普通の人情もののようですが、登場人物たちが並みでないのであります。

 松太郎は生まれながらの霊媒体質で、そこらにいる霊や妖怪が見える・憑いてくるのですが、弱ったことに、対抗手段を持っていない。そして新たに松太郎付きとなった竹二の方は、その手の連中を見ることはできないけれども、追い払うことができる体質。そしてそんな二人に渋々と手を貸す梅沢は何と…というところで、このいい意味で何とも出鱈目な三人のやりとりを見ているだけでも十分すぎるほど楽しい。
 そしてもちろん、このトリオが挑む事件であれば真っ当なものであるはずもなく、幸助が巻き込まれた事件もまた、何とも不可思議かつ艶っぽいもの。この作品のイラストは、私も大好きな「雨柳堂夢咄」などを描かれている波津彬子さんが担当されているのですが、まさにその絵柄そのままの、耽美で、そしてどこかユーモラスな世界が展開されています。

 ちなみに、時代小説で物の怪を見ることができる大店の若旦那というと、どうしてもあのシリーズが浮かんでしまいますが、私はあちらに負けず劣らず、この作品が気に入っています。
 主役三人の個性が際だっているというのが一番の理由ですが、なんといっても松太郎のキャラクターが、いかにも世慣れた江戸っ子の若旦那、という感じで気に入っています。
 特に気持ちが良いのは、幸助を救うための奉行所への付け届けに四百両もの大金を使おうという時の「真っ当な金遣いをしちゃァあたしたちは嗤われる。金を貸して嫌われるうえに、しわいのケチの金の亡者のとあざ笑われるているようじゃ、江戸っ子の意地が立たない」という台詞(そしてそれを無心されて「奢られた蕎麦一杯に四百両の返礼とは面白い」と、ポンと四百両出してみせる松太郎の父もまた凄い)。そんな骨っぽさを見せながらも、物の怪に出会うとてんでだらしないそのギャップがまた可笑しい。

 そんなわけで非常に楽しいこの作品、続編にも期待しているのですが、雑誌掲載されたものがある他は現時点では出版されていない様子なのが唯一残念なところです。


 ちなみに作者のたつみや章氏について調べていて、その経歴にひっくり返りましたよ。いやー、この作品はビーンズ文庫の方で本当に良かった。


「恋ヶ淵 百夜迷宮」(たつみや章 角川ビーンズ文庫) Amazon bk1


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2005.07.04

竹と鎌 今週の「Y十M」

 今週の「Y十M」は、前回に引き続き快傑般若侠顔見せの巻。前回のvs平賀孫兵衛に引き続き、今回は大道寺鉄斎との対決(というか一方的にあしらったというか)。
 竹藪に入った般若侠を襲う鉄斎の鎖鎌の神技! …は同じなのですが、原作と大きく異なるのは、ここで鉄斎が見せた技。鎖で般若侠の周りの竹を束ねておいていわば巨大な竹籠を作り、その中に般若侠を捕らえておいて、そこに鎌が襲いかかるという大技であります。

 原作で見せる技も、もちろんなかなか格好良い技ではあるのですが、漫画で見せるのであれば、これくらいダイナミックな方が良いかもしれません。…もっとも、その一方で般若侠の脱出方法に無理がありすぎるように見えたのは痛いところ。
 また、原作ではわずか数ページの攻防に、隔週の漫画の一回を費やすのは贅沢すぎじゃないかな、という印象もありますが、こちらは七本槍のキャラ立てのため、まあ仕方ないのかもしれませんね。ただでさえ読者からは「あいつら雑魚じゃねえか」とか言われてますから(あと、鉄斎の場合はここで活躍しておかないと…)。

 何はともあれ、この「Y十M」の物語も、いわばここまでが序章。次回からは堀の女たちによる復讐の幕があがることになるわけで、さて、いかが相成りますか。

 …あ、この文章書いててなんで今回、竹籠が出てきたのかわかったような気がした。

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2005.07.03

ちょっと微妙な叛逆譚 「快傑自来也」

 名家の末裔・尾形周馬が大盗自来也と名を変えて天下を騒がすという歌舞伎や読本でもお馴染みの物語。…が、この講談版ではいささかそちらとは設定が異なり、舞台は江戸時代初期、尾形周馬の父は小西行長の家臣で、倒すべき相手は徳川幕府となっています。
 そして伝奇的に面白いのは自来也の師匠絡みの設定。この講談の中で(も)自来也の師匠となる仙素道人は、切支丹の妖術使いで毛利宗意軒(=「魔界転生」でお馴染みの森宗意軒)の師でもあり、つまり宗意軒と自来也は兄弟弟子。その縁でクライマックスでは自来也は、天竺徳兵衛らと共に島原の乱の一揆勢として参陣するという展開となります。つまりはこの作品、島原の乱外伝とも言えなくもない存在となっています。

 しかしながら、キャラクターとして見た場合、自来也は、御家復興の大義名分はあれど、その方法が切取り強盗以外の何物でもないので(一応義賊とは銘打っていますが)、今ひとつ爽快感・痛快感がない。ピカレスクというにはキャラクターの魅力が…というところ。
 何と言っても、主人公が師匠の仙素道人に出会うシークエンスというのが、美女を小屋に泊めたらムラムラっときて、襲いかかろうとしたら返り討ちにあって、なんとその正体は――というもので、この時点でちょっと…という感じではあります。
 また、登場するヒロイン格の女性3人が、全てさらわれて売り飛ばされるというのも、物語に妙なアングラ感が加わることになってあまり好きになれませんでした。

 決してつまらない作品ではないのですが、「快傑」に期待するとちょっと裏切られるかな、という感じがあります。
 とはいえ、上に書いたように島原の乱外伝というべき物語となったことにより、講談に脈々と受け継がれる叛逆への憧れというものが、一層濃厚に感じられるというのは興味深いことと言えるのではないでしょうか。


「快傑自来也」(講談名作文庫)

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2005.07.02

文庫時代小説ベスト10発表 「この文庫がすごい!2005年版」

 毎年出ているような気がしていたら実は4年ぶりだったという「この文庫がすごい!」、復活の2005年版が発売されておりました。
 目玉企画は「今年、本当に面白かった文庫ベスト10」の「文庫オブ・ザ・イヤー2005」。「ミステリー&エンターテイメント」「恋愛小説」に並んで、「時代小説」があるのに目がとまりました。
 文庫…時代小説…もしかして…とある期待を胸にページを繰ってみると、ベスト10は以下のような結果となっておりました。

1 「ぼんくら」 (宮部みゆき 講談社文庫)
2 「信長燃えゆ」 (安部龍太郎 新潮文庫)
3 「あかね空」 (山本一力 文春文庫)
3 「魔風海峡」 (荒山徹 祥伝社文庫)
3 「退屈姫君海を渡る」(米村圭伍 新潮文庫)
6 「続巷説百物語」 (京極夏彦 角川文庫)
7 「さんだらぼっち」 (宇江佐真理 文春文庫)
8 「丹下左膳」 (林不忘 光文社文庫)
9 「生きる」 (乙川優三郎 文春文庫)
10 「伝奇城」 (朝松健&えとう乱星編 光文社文庫)
10 「幽恋舟」 (諸田玲子 新潮文庫)

 ミステリあり人情ものあり伝奇あり…なかなか興味深い結果になっております。「魔風海峡」や「丹下左膳」など、私の大好きな作品も入っているのが嬉しい(特に後者は映画化・ドラマ化という追い風もありましたが、約80年前の作品が復活してのこの順位というのは素晴らしい)のですが、やはりなんと言っても感慨深いのは第10位。
 「伝奇城」ベスト10入り!

 この「伝奇城」、全編書き下ろしの時代伝奇小説アンソロジーなわけで、つまりは私の大好物…というかぶっちゃけた話をしてしまえば、この企画についてはスタート当初から何かと縁があり、巻末の「伝奇時代小説年表」も書かせていただいているので、やはり非常に思い入れがある、というわけでここでベスト10入りという評価をいただけたのが嬉しくて仕方がないというのが正直なところなのです。


 この「伝奇城」については、一作品一作品ごとに語ろうと思いつつも、ちょうど発売時期に色々と私事で忙しかったりして果たせずにいたのですが、近日中にチャレンジしたいですね。


「この文庫がすごい!2005年版」(宝島社) Amazon bk1

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2005.07.01

ちょっと面白すぎるんですが 「影風魔ハヤセ」

 「イブニング」誌で連載中の森田信吾先生の「影風魔ハヤセ」連載開始時に紹介しましたが、その後もちょっと面白すぎる展開が続いております。
 一ページぶち抜きで首かっきったはずの信長が実は生きていたり、湍以外の二人の影風魔が登場したり(しかもその中の一人のガンファイトが異常すぎ)、本能寺の真犯人たる秀吉はふてぶてしいまでの人間力を感じさせるし、さらに湍と信長の意外な関係が明らかになったりと盛りだくさんなのですが、たった一人でそれら諸々の要素をブッ飛ばすのが明智光秀。

 この作品の明智光秀、とにかく無闇に格好良いのです。本能寺の変ではめられたのを知った直後に吐いた
この俺相手に謀略戦挑むとは……愚かな奴もおったもんだ!!……のう?
などという森田イズム溢れすぎるお言葉は序の口。
戦においてはいかに負けるかも大事と、あえて細川・筒井の援兵を断った上で、自身の身の振り方を問われれば、かつての放浪を思えば自分一人の身の置き所などいくらでもあると、織田随身以前の放浪時代に絡めて格好良さをアピール。

 そして最新号では、山崎の合戦で負けてみせ、落ち延びる途中に通りかかったのが小来栖。正史によればここで光秀は土民に討たれて首を取られるわけですが…
 さすがにこの作品でそれはないだろう、生き延びるのだろうとは思いましたが、そんな予想を遙かに上回る展開が。

 光 秀 素 手 で 土 民 を 皆 殺 し

 いや、さすがに愕然としましたよ。家臣は「噂通りの怪力無双!!」と評していましたが、どこの噂よ!? と突っ込みたくなってしまう凄まじさ。

 正直なところ、あまりのキャラの立ちっぷりに、主役級のインパクトの光秀。一方、信長は何だかほとんど物語におけるヒロインの立ち位置にあって、うかうかしていると湍の立場が全く無くなりそうな雲行きです。
 恐ろしいなあ、明智光秀と森田先生。

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