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2005.07.03

ちょっと微妙な叛逆譚 「快傑自来也」

 名家の末裔・尾形周馬が大盗自来也と名を変えて天下を騒がすという歌舞伎や読本でもお馴染みの物語。…が、この講談版ではいささかそちらとは設定が異なり、舞台は江戸時代初期、尾形周馬の父は小西行長の家臣で、倒すべき相手は徳川幕府となっています。
 そして伝奇的に面白いのは自来也の師匠絡みの設定。この講談の中で(も)自来也の師匠となる仙素道人は、切支丹の妖術使いで毛利宗意軒(=「魔界転生」でお馴染みの森宗意軒)の師でもあり、つまり宗意軒と自来也は兄弟弟子。その縁でクライマックスでは自来也は、天竺徳兵衛らと共に島原の乱の一揆勢として参陣するという展開となります。つまりはこの作品、島原の乱外伝とも言えなくもない存在となっています。

 しかしながら、キャラクターとして見た場合、自来也は、御家復興の大義名分はあれど、その方法が切取り強盗以外の何物でもないので(一応義賊とは銘打っていますが)、今ひとつ爽快感・痛快感がない。ピカレスクというにはキャラクターの魅力が…というところ。
 何と言っても、主人公が師匠の仙素道人に出会うシークエンスというのが、美女を小屋に泊めたらムラムラっときて、襲いかかろうとしたら返り討ちにあって、なんとその正体は――というもので、この時点でちょっと…という感じではあります。
 また、登場するヒロイン格の女性3人が、全てさらわれて売り飛ばされるというのも、物語に妙なアングラ感が加わることになってあまり好きになれませんでした。

 決してつまらない作品ではないのですが、「快傑」に期待するとちょっと裏切られるかな、という感じがあります。
 とはいえ、上に書いたように島原の乱外伝というべき物語となったことにより、講談に脈々と受け継がれる叛逆への憧れというものが、一層濃厚に感じられるというのは興味深いことと言えるのではないでしょうか。


「快傑自来也」(講談名作文庫)

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