総司悲恋の結末 「探偵沖田総司」

サルベージシリーズ。沖田総司が坂本龍馬暗殺犯を追う! というえらくキャッチーな内容に、これまたキャッチーな題名の作品ですが、この作品、廣済堂文庫で都合4冊発行された沖田総司シリーズの続編にして完結編であります。
このシリーズ、純粋で朴訥な青年ながら、剣を持たせたら鬼神も三舎を避く剣士となる沖田総司と、美貌と霊力を持ちながら、権高でがめつい姫巫女・烏丸龍子のコンビが京で起きる様々な怪事件に立ち向かってきたわけですが、その最後の事件とも言えるのが坂本龍馬殺し(一種宿敵とも言える龍馬殺しの犯人を、新選組の総司が追うのも一見妙な話ですが、この作品での近藤勇は、幕府を瓦解から救おうとした人物として龍馬を評価しているのでそこは問題なし)。
しかし…幕末ファンなら言うまでもなく、そうでない人であってもここの年表などを見ていただけると一目瞭然(宣伝宣伝)なように、龍馬暗殺か一年も経たぬうちに新選組は事実上壊滅し、そして総司は…というわけで、龍馬の最期を、そして暗殺犯探しを描いたこの作品は、必然的に新選組の最期と、沖田総司自身の最期を描いた物語となりました。
もちろん、龍馬暗殺犯の正体とその黒幕についての、この作者・作品独自の立場からの推理は興味深く(特にあとがきに示されたある事実には驚かされました)、それだけでも十分面白い作品でしたが、やはりシリーズを最初から追いかけてきた者としては、それ以上の感慨があったのが正直なところ。
私は総司と龍子は言うに及ばず、その他のセミレギュラー陣も妙にキャラの立ったこのシリーズが大好きだったのですが、そのキャラクターたちが一人、また一人と退場していく様を見るのは哀しいものがありました。
特に、総司に負けず劣らずの剣鬼であると同時に、総司に負けず劣らずの甘党であった佐々木只三郎と、総司が探索から帰るたびに笑顔と心からの料理で労ってくれた男乳母・井上源三郎が亡くなった時の喪失感たるや、ああ、殺伐としながらも何だか妙にうきうきと楽しかったこのシリーズも本当に終わりなんだ…と非常に切ない思いになったことです。
そしてラスト、あまりに有名な総司と黒猫のエピソードをこの作品でどう描いているか、もちろんここでは詳しく触れませんが、総司の恋の一つの結末として、あまりに哀しく残酷な終幕となったことに、感じ入った次第です。
…と、実は既に紹介してしまっているのですが、この「探偵沖田総司」が発表された後、烏丸龍子さんを主人公にしたシリーズがこれまでに2冊、発行されています。
「沖田総司シリーズ」の続編ではなく、同じ世界観を龍子の側から描いたというものでもなく、完全にパラレルワールドのストーリーで総司も脇役に近いのですが、「沖田総司シリーズ」のファンであれば、ぜひ読んでいただきたい作品です。
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