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2005.08.12

限界突破を超えて 「SAMURAI DEEPER KYO」第32巻

Samurai deeper Kyo (32)
 ボーッとしていたら今月に次の巻が出てしまうので慌てて紹介。ちょうど今週はマガジンもお休みですからね。
 さて、「SAMURAI DEEPER KYO」もはや32巻。この巻では全編に渡って太四老・時人と(元)四聖天・アキラとの死闘が描かれます。
 時人は少年の姿ながら以前梵天丸をも軽々とあしらった怪物、実力では遙かに勝る時人に、前々巻で「もはや強さは限界」宣告されてしまったアキラがいかに挑むか、開始前は全く予想のつかなかった戦いですが、蓋を開けてみればKYO史上最高の名勝負となりました。

 そもそも、GENKAITOPPAを旨とするこの漫画で、強さ限界はほとんど死刑宣告。そら確かに針刺すだけでパワーアップというのは胡散臭すぎますが、それすらも封印されたアキラに勝ち目ってどう考えてもないんじゃ…と思いましたが、さすがは元祖GENKAITOPPA男にして“信念”の漢、GENKAITOPPAを超えたKISEKIというやつを見せてもらいました。

 …まあ、結局は「もの凄くパワーアップできるけれども短期間かつその後は戦闘不能」という、バトルものでは定番のパターンでパワーアップしてしまうのは、冷静に見ると突っ込みどころなのですが、そこに行くまでが、これまで散々にアキラと衝突してきた水と油の関係の紅虎が「わいの最高の親友(ダチ)や」の殺し文句とともに刀を託し、雑魚を引き受けて散華、というこれまた超定番ながら燃える展開。

 そして、紅虎の友情を受けて、これまで狂の背中を追いかけるだけだった――狂の背中が目指せない(見れない)のであれば価値はないと自らの眼を潰すほどだった――彼が、遂に狂の背中の先の世界に目を向け、自分自身が進むべき“先”をはっきりと見出し、心の強さを備えた新たな強さに開眼するというのは、熱血少年漫画として実に正しく、感動的なシーンでありました(勢い余って潰したはずの眼が治って文字通り「開眼」しちゃうのは、まあそれはそれで実にこの漫画らしい)。

 まあ、そんな一方で、結局パワーアップの呼び水になったのは針治療だったり、上に書いたように潰したはずの眼が開いちゃったり、絶対零度を超えた「灼熱の冷気(ヘル・ゴースト)」(ああ、写しているこちらが恥ずかしい)を更に上回る「天国の冷気(ヘブンズ・ゴースト)」を放っちゃったりと、突っ込みどころというか高純度のネタを投入してくるのがこの漫画らしいといえばこの漫画らしくて安心というかなんというか。

 それはさておき、戦いが終わった末に、実は時人もまた、かつての自分と同様、自分自身に価値を見出すことができず、他者から見捨てられることを心の底で恐れていたことにアキラが気づき、挑発の形で、時人に生きる方向性を見出させるシーンを見ると、(非常に失礼な、生意気な物言いですが)ああ、作者も、この作品も成長したのだなあ、と感慨深いものがあります。

 この巻において、アキラは一つの限界を超えて大きな成長を遂げますが、この「SAMURAI DEEPER KYO」という作品自体が、同時に限界を超えた成長をここで見せたのではないか…とまで書いてしまうのは非常にイタい感想であると自覚しつつ、それが私の、一つの偽らざる感想であるとここに書き留めておきます。
 時代漫画としては、正直何というかその…だってKYOだから、としかいいようがありませんが、熱血少年漫画として見れば、きょうび珍しいほどに正統派の、「友情」「努力」「勝利」を謳った黄金期の少年ジャンプイズムを継承した作品なのでは、とすら感じさせられた次第です。


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