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2005.08.10

昏君の夢と剣侠の謀 今週の「Y十M」

 折角ケイトさんのところで紹介していただいたのに、そのケイトさんの記事を見るまで今週「Y十M」があったことを知らなかった私が来ましたよ(だってさー、隔週連載で一回休んだら、次は再来週とか思うじゃない? …思わない? ごめんなさい)。
 前号お休みしたせいか、ボリュームアップして感じられた今回。前半がオリジナル展開で後半が原作通りと言ったところでしょうか。

 オリジナル部分は、まず、十兵衛と堀の女たちの描写。ページ数にしてわずか数ページではありますが、特訓を重ねる間に、十兵衛と堀の女たちの間に信頼関係が生まれていることがわかります。そしても一つ、堀の女たちに少しずつ明るさが戻ってきたことも。
 それ以上にページが割かれているのは、なんと加藤明成の内面描写。女たちと戯れる中での白昼夢で、明成が既に亡き父・嘉明と対面し、自分の正当性を主張、さらに明成と芦名衆との出会いが描かれるという趣向です。
 明成というキャラクターは、実に様々な悪役が登場する山田風太郎作品においても少々珍しいくらい、いいところの無い、悪のための悪といった人物。原作では明成は自分の行動の正当性を全く疑わないキャラクターとして描かれていましたが、このように夢裡に父の姿を見るというのは、「Y十M」での明成は、より鬱屈したものを抱えたキャラクターとして描かれていくのかもしれません。
 また、原作ファンとしては、芦名衆との出会いのシーンが原作を補完するように描かれているのがなかなか嬉しいところです。
 しかし、あたかも玉座の如く山積みとなった女体の上に君臨する明成は、まさしく「淫虐の魔王」という表現がふさわしい。単なるアゴの人じゃないんですな。

 そして後半は吉原を舞台に、なにやら企む十兵衛の姿と「京人形」を買い入れに来た鉄斎らの姿が描かれます。
 なんと言ってもここで非常に印象的なのは、見開きでもンのすごい笑みを見せる十兵衛。企んでる…絶対何かすごい痛快なこと(そして悪人にとってはすごい悲惨なこと)企んでるよこの人! と思わせる、もう楽しくて仕方がないという笑みです。原作にはない描写ですが、いや、確かに「柳生忍法帖」の十兵衛は、こういう場面でこういう表情を見せる人でありましょう。
 も一つ印象的な表情を見せたのは、今回初登場の庄司甚右衛門。こちらはまた、あまりにも原作の描写通りの、好々爺然とした部分と、裏の世界の住人としての厭らしさを合わせ持った人物として描かれておりました。特にラストの表情は、(あまり眼にしたくない類のものですが)絶品であります。

 さて、今回はここまで。次回はいよいよ鉄斎&孫兵衛の京人形品定めが描かれるのでしょう。何というか、実世界であまりにも役に立ちそうのない知識を僕らに教えてくれたあのシーンがついに…楽しみというと問題かもしれませんが、さてどのように描かれることやら。

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