混沌の心地よさ 「射雕英雄伝 2 江南有情」
先日紹介した「射雕英雄伝」の続巻を読了。いやはや、今回も冒険百連発というかいきなりクライマックスというか、とにかく尋常ではないテンションで冒頭から巻末まで駆け抜けています。
なにしろ、あらすじをまとめるのが尋常でなく難しいのがこの作品。筋立てが複雑、というより物語を構成する要素が非常に多いのです。思い出すままにつらつらと書き出せば…
○南宋・金・元の三国の覇権争い
○主人公とヒロインの恋の行方(というかどうやってヒロインの父に仲を認めさせるか)
○父の敵討ち
○生き別れの義兄弟の再会と相克
○伝説の武芸書の争奪戦
○悲劇の名将・岳飛の秘宝探し
と、マクロなレベルからミクロなレベルまで、およそ大衆エンターテイメントに必要な要素をほとんど網羅。
さらに、そんな物語の中を縦横無尽に賭けまわる登場人物たちが、また異常に濃い。魔人怪人妖人奇人、何でもありの多士済々、一番地味なのが主人公という愉快な状態になっております。
この巻では、前巻でもその名がほのめかされていた四人の伝説の達人、東邪・西毒・北乞・南帝のうち、東邪・黄薬師と北乞・洪七公が登場。中国武術界の最高峰を競ったメンバーだけに、腕前はもちろんのこと、そのキャラクターもかなり強烈で…と思ったら、ラスト近くになってそんな面子も霞むような強烈な人物が出てきたのでまた驚かされました。
その名は周伯通、武術は東邪と互角ながら、「老頑童」の自称が物語るように、わがままで天真爛漫な子供がそのまま老人になったような怪人…いや快人。主人公・郭靖と偶然(金庸作品、「偶然」がまた非常に多いんですが)出会った周伯通、無理矢理郭靖に迫って義兄弟の契りを結び、自分を兄貴と呼ばせてご満悦、何故かうさんくさい関西弁でしゃべりまくる様はまさに抱腹絶倒、主人公が何をしていたんだか、どうでも良くなってきました。
と、このように、「混沌」としかいいようのない状況のこの作品なのですが、それでもつまらないなどということは決してなく、むしろ一種不思議な心地よさすら感じられるのは、とにかく面白いものは全てぶち込んでしまえ! という金庸先生のプロ精神が伝わってくるからでしょうか。
とにかく、一読巻置く能わずというのはこのような作品に対して贈られるべき言葉でしょう。早く続巻も読まねばなりません。
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