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2005.09.07

三人の牢人のドライな流浪譚 「おれは侍だ」


 関ヶ原の戦直後を舞台に、それぞれの道を行く三人の牢人の姿を描いた柴練作品。虚無的な剣の達人・室戸修理之介、腕は立つが金に目のない柏木新蔵、腕はからっきしな好色漢・宇留田兵馬というそれぞれに個性的な三人の生き様が、殺伐とした時代の中で描かれていきます。

 この作品が書かれたのは1961年、柴練としては脂の乗りきった時期の作品ではあるのですが、まったくもって残念なことに、あまり面白い作品とはいえないのが残念なところ。掲載誌が潰れたおかげで、物語が動き始めた時点で終了、いわば「第一部完」という状態なので仕方ないと言えば仕方ないのですが…
 何よりも、第一の主人公と言うべき修理之介が、その虚無的な心の裏にあるもの――柴練作品のキーワードの一つである「心意気」――を見せる間もなく幕となってしまったため、実に人間的な他の二人と比べ、魅力に乏しいキャラクターになってしまっているのが痛いところであります。

 とはいえ、物語が中途で途切れたことにより、物語にドライな味わいが生まれているのは、思わぬ効果と言えるかもしれません。

 ちなみにこの作品、「おれは侍だ 命を賭ける三人」というタイトルで映画化されているようですが、ここでは修理之介は名誉欲の強い男として描かれているようで、柴練主人公としてそれはどうかと思いつつも、名誉・金・女と三つ揃うのは、それはそれで面白いキャラ配置ではあります。

 また、これは完全に個人的な考えなのですが、この作品、約10年後に書かれた「最後の勝利者」のパイロット版的存在ではありますまいか。
 虚無的な男・強欲な男・好色な男の、三人の「戦後」を描くという、物語構成が非常に良く似ているのが、最大の理由ですが、それと同時に、この作品が中断されなければ、秀吉の朝鮮侵攻を背景に朝鮮と日本の関わりをテーマの一つとして描く予定だったというのも、またそう感じさせられた理由の一つ(「最後の勝利者」は、慶長の役から始まる物語であります)なのでありました。


「おれは侍だ」(柴田錬三郎 集英社文庫) Amazon 楽天 bk1

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