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2005.09.06

今日も二本立て 「大江戸火盗改・荒神仕置帳」&「破斬 勘定吟味役異聞」

 今回も二本立てですよ。
大江戸火盗改・荒神仕置帳―音無しの凶銃 破斬―勘定吟味役異聞
 一本目は、剣術と砲術の達人である火付盗賊改長官・荒尾但馬守成章を主人公にした新シリーズ第一弾「大江戸火盗改・荒神仕置帳 音無しの凶銃」。荒尾成章は、以前紹介した「陰流・闇仕置」シリーズのキャラクターですが、そこからからスピンオフして、堂々の主役に就任です。

 物語は(これまでの牧作品と同様)一巻に三話構成。第一話と第二話は、タイトルにある「音無しの凶銃」による連続通り魔事件の謎を追う物語。残る第三話は、恍惚とした死微笑を浮かべた美女連続殺人事件の謎を追うエピソードとなっています。
 正直に言って、全三話で最初の二話が続き物というのはちょっとバランス悪いかな、という印象もありますが、いわば前後編、あるいは新番組第一話時間拡大スペシャルみたいなものだと思えばいいのでしょう。むしろ、犯人の特異な動機が光る第三話の方が、印象的だったように思えました。

 剣術+砲術という、この作品ならではの設定が十分に生かせているとはまだ言えないようにも思えるのですが、これからの展開に期待と言ったところでしょうか。


 もう一本は、快調に作品の刊行が続く上田秀人氏の新作「破斬 勘定吟味役異聞」。新井白石により抜擢された新任の勘定吟味役・水城聡四郎が、貨幣改鋳にまつわる闇に挑むという内容です。

 まず目を引くのは、主人公の遣う剣の流派が一放流という点。富田流の流れを汲む一放流については、今までほとんど戸部新十郎先生の独壇場という印象がありましたが、なかなか渋くも面白い流派に目を付けたものだとまず感心しました。

 物語としては、幕府経済の陰の部分に切り込んでいく、ある種経済小説的味わいが面白い反面、これまでデビュー作以来一貫して濃厚だった伝奇性がほとんど感じられないのが個人的には非常に残念でありました。
 複雑な事件を如何に解決するか、という点も、結局大変乱暴な手段(ある意味非常に時代劇的ではありますが…)で終わらせてしまったのが残念でした。

 とはいえ、政治の最も黒い部分に直面しながらも純粋さを失わない聡四郎と、彼を取り巻く人々のキャラクターは個性的で面白く――特に狷介極まりない新井白石が強烈――、これから先、ある意味四面楚歌の状況下で聡四郎が如何に戦い、成長していくかが楽しみです。


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