松平蒼二郎再び 「陰流・闇始末 悪人斬り」
新刊予定表を見たときに、何かの間違いでは、と思いつつも密かに期待していた牧秀彦先生の新刊。「陰流・闇仕置」全5巻で一端完結した松平蒼二郎が帰ってきました。その名も「陰流・闇始末」。これまで心ならずも父・松平定信の命で「闇仕置」を行っていた蒼二郎が、その呪縛から解き放たれたことを物語るタイトルと言えましょうか。紛らわしいですが。
さて、物語は「闇仕置」完結直後からスタート。既に外道に堕ちた父を誅するために一人白河に向かう蒼二郎ですが、途中、父の腹心であり自分の師、そして仇でもあった田嶋源太夫の妻子が、父により命を狙われていることを知り、二人を守るために戦うことを決意するところから始まります。敵は白河藩全体、そして守るべき二人にとって蒼二郎は仇という複雑な状況の中、江戸へ江戸へ、蒼二郎の旅が続くことになります。
そんな基本設定の中、全4話で語られる物語は、全般的に男泣き度高し。
蒼二郎を狙いながらも母子への理不尽な暗殺命令に怒る忍びとの死闘の果ての共闘、罠が待つと知りつつも一旦請け負った舞台から逃げることはできぬと立ち向かう能楽師兄弟、蒼二郎暗殺を請け負いながらも堤防の決壊に苦しむ村人たちを救ってしまう治水家一族の末裔、そして何よりも、いずれは自分の命を狙うであろう母子の命を守るために命を賭ける蒼二郎――
基本的には理不尽な権力の前に泣く人々の姿を描きながらも、決して後味の悪くない、むしろ爽やかな読後感となっているのは、そんな熱い男たちの姿が物語にあるから、ではないかと思います。
剣豪小説作家、時代小説作家・牧秀彦の一つの到達点…と言うのは大袈裟かもしれませんが、続きを読んでみたい気持ちにさせられる作品であることは間違いではないと思います。
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