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2005.11.25

「シグルイ」第5巻 その凶人の笑み


 原作「駿河城御前試合」も山口貴由先生の表紙絵で復刊されていよいよ勢いに乗る「シグルイ」も第5巻。収録されているのは虎眼の娘・三重の狂気の姿を描く第二十一景から、牛股に危機が訪れる第二十六景まで。前巻で虎眼流の高弟衆も牛股と藤木を残して壊滅、いよいよ二人と師・虎眼にまで伊良子の魔手が伸びる…という展開です。

 何よりもまず強く感じるのは、いよいよますます磨きがかかった剣戟描写の冴えの見事さ。映像で言えばスローモーションで表現されるのであろう、ほとんど一瞬の間の動きを無音状態で描く手法も、すっかり定着した感があります。特に、(以前にも書きましたが)牛股と藤木が身の潔白を証すため行った二輪の演武シーン、そしてまた再会を遂げた藤木と伊良子が酒席で見せた瞬間の死闘のシーンは、時代劇ファン、チャンバラファンであればまさに必見かと。

 が…この巻で何よりも印象に残ったのは、やはり虎眼が検校に見せたへつらいの笑いでありましょう。あの最強の凶人・虎眼が、どんな相手であろうとも、その剣――暴力で我を通すかに見えた岩本虎眼が、自分よりも遙かに社会的身分の高い、しかし肉体的力で見れば遙かに非力な相手にあのように媚びへつらった表情を見せるとは。しかも相手は自分の表情を決して見ることのない盲人であるのに。
 盲人の検校に対してあのような表情を浮かべる、いや浮かべてしまうという事実こそが、虎眼の人間性と、同時にこれまで経てきた人生を想像させるものでありましょう。
 虎眼先生は、例えば範馬勇次郎のような神の如き破壊の化身ではなく、あくまでも人としての有り様・人間力が(主にネガティブサイドで)極端なまでに肥大化した存在なのだと思い至った次第。

 そしてまた、作中のごくわずかな描写で、登場人物の現在と過去を読む者に思い浮かべさせしめる山口先生の筆力にも、感心させられることです。


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● すいません、ほんと、すいません! コイツのせいで某会遅刻しました。あわわ。 ● まあ、売れ行きいいみたいで結構でかい一軒目が売り切れでしたよ。 ● 最近思うことですが、日本人はサムライに子孫であることを自慢したがりますが、正気ですか。そもそもパーセンテージとしてサムライの子孫なんか少ないぞというのもあるけど、武士道っておかしいじゃないですか。  明治以降のでたらめねつ造武士道じゃない、『葉隠』なんか主君の蒲団をもらって悶絶だの、因縁付けた町人はぶち殺せだの……そんなリアルブシドーの... [続きを読む]

受信: 2005.11.28 22:43

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