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2005.11.12

「骨董屋征次郎手控」 骨董という魔性


 火坂雅志先生による幕末を舞台とした連作短編集。主人公の征次郎は、タイトルにある通り骨董屋を営む男。元は武家の出ですが、ある事件が元で故郷を追われ、流浪の果てに若年ながらも目利きの骨董屋として京で活躍する人物であります。

 その征次郎が出会うのは、いずれも骨董の名器名品に関わる事件。いわくありげな出物、目利きの目をも欺く贋作、数奇な運命を辿った美術品…自身もまた骨董の美に淫するものである征次郎は、ある時は同情と共感を、ある時は怒りと悲しみをもって、様々な事件・人々に相対することとなります。

 作品としては、続き物の色彩が強くなった後半は、裏で進行する陰謀がすぐ読めてしまうのでいささか興が薄れてしまった部分も正直なところありますが、しかしわずか三十年で歴史上から姿を消した古九谷の謎を中心に据えた展開はなかなか興味深く読めました。

 何よりも、幕末の混沌とした世相が背景としてあるだけに、時を越えて存在し人を魅了しつづける骨董品と、その骨董品に、あるいは己の欲望に翻弄され道を踏み外していく(この作品の表現を借りれば、魔道に堕ちた)人間たちの対比が、印象深く感じられたことです。
 この作品には、明治を舞台とした続編も出版されているとのこと。未だ混沌が続く明治の世を背景とした征次郎の活躍も読んでみたいと思います。


「骨董屋征次郎手控」(火坂雅志 講談社文庫) Amazon bk1

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