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2005.11.19

「真田の狼忍」 戦国忍者はトコトンやる!


 既に忍者アクションにおいては当代随一の書き手という感すらある沢田黒蔵先生の最新作は、戦国後期~末期を舞台としたこれまでの作品よりも少し時代を遡った、忍びがまだいくさ人として誇りを持っていた時代の物語です。
 主人公は甲賀の傭忍・頓宮衆の頭領・九天羽一郎。どこか心に鬱屈したものを抱え、世をすねたような言動を見せるも本質はロマンチストの熱い男であります。「トコトンやる!」が合い言葉の彼ら頓宮衆が、傭忍でありながら心酔したのが、かの真田昌幸。武田家に仕えて、大信玄亡き後勝頼公を盛り立てようとするも、奸臣ばらに阻まれて、信州に帰ることとなった昌幸に半ば強引に羽一郎たちは同行することになります。

 元より真田家に仕えていた祢津飛雲丸を頭領とする忍び・真田スッパと力を合わせ、羽一郎らが昌幸の夢を叶えんと活動を始めるというのが物語前半の物語。昌幸の夢というのがまた凄まじく、織田信長の大軍を真田領までおびき寄せ、複雑な信州・上州の地形を生かして一挙殲滅せんとするもの。そのために、勝頼を甲州から迎え入れ、また、西国を支配する信長に対抗するために北条・上杉と連合して一大勢力を作り出そうという希有壮大なもの。リアリストにしてロマンチストという不思議なキャラクターの昌幸ならではの大望であり、確かに聴く者の胸を震わせる痛快な野望であります。

 が…その夢が叶うことはなかったのは歴史が示す通り。真田譜代衆との溝、信長の調略…様々な現実の壁により昌幸の夢が破れ、そして忍び同士が血で血を洗う争闘に突入していくのが後半の物語であります。
 後ろ盾を失い孤立無援となったばかりか、周囲全てを敵とすることとなった頓宮衆。が、そんな頓宮衆の姿に、これまでの沢田作品にあったような重苦しさや悲痛さよりも、痛快さを感じるのは、冒頭に書いたように、彼らが単に使い捨ての存在ではなく、一個の自立した誇り高きいくさ人として胸を張って生きているからでしょう。
 裏切られようと切り捨てられようと、胸を張って「トコトンやる!」彼らの大反撃がいかなる結末を迎えるか、それはここでは語りませんが、一つの夢やぶれても、爽快さと希望を感じさせる気持ちの良い結末でありました。昌幸が最後に感じた予感が予感で終わらぬよう、続編を心から希望します。


「真田の狼忍」(沢田黒蔵 学研M文庫) Amazon bk1

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