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2005.11.17

「妖異博物館」 全ての怪談を愛する人に


 俳人にして随筆家の柴田宵曲先生による、古典怪談の玉手箱というべき楽しい一冊。各回「大入道」や「人魂」といったテーマの下に、古今の怪異談を採り上げた、古典怪談ファンにとっては垂涎の一冊であります。

 中世から近世にかけての本朝の怪談、さらには海を越えた中国の奇譚(さらには岡本綺堂先生の諸怪談や「半七捕物帖」がしばしば採り上げられているのは、初版が青蛙房によることもあるかしら)まで、宵曲先生の止まるところを知らぬ怪談語りの前には、博覧強記とはこの人のためにある言葉かと痛感させられるばかり。
 そして、各テーマ毎に、これら古今の様々な怪談・怪異談が語られていく様は、プチ・アンソロジーの詰め合わせを見ているかのような味わいがあり、読んでいて飽きることがありません。
 特に、テーマについても、「一つ目小僧」「化け猫」といったある意味定番のテーマから、ある時突然見慣れた世界が輝き始める「光明世界」、喩えでなく本当に手が持っていかれてしまう「手を貸す」といった、ある種意表をついたテーマまで実に様々で、このテーマ設定の妙には何度も唸らされました。

 そしてまた、膨大な量のデータ・エピソードを語りながらも、決して鼻につくことがないのは、宵曲先生の、決して大上段に構えるのではない、静かな、そして愉しげな語り口によるところが大きいでしょう。ちと大袈裟かもしれませんが、本当の「知識人」とはこういう方をいうのではないか…とすら感じさせられた次第です。

 ヘビィな怪談マニアから最近怪談に興味を持ち始めた方まで、およそ怪談というものに興味と愛を感じる方であれば、是非手に取っていただきたい、そんな逸品であります。


「妖異博物館」(柴田宵曲 ちくま文庫) Amazon bk1

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