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2005.12.01

「無用庵日乗 上野不忍無縁坂」 悪人始末のコロンブスの卵


 「花の小十郎」シリーズなど、イキのいい時代小説を執筆されてきた花家圭太郎先生の新境地とも言えるこの作品は、人情もの+必殺ものというべきちょっと変わり種。
 物語は、江戸の魚問屋の隠居・治兵衛が湯治の旅で剣の達人・田代十兵衛と出会うシーンから始まります。駆け落ちした自分の妻と弟を追って流浪していた十兵衛と治兵衛は意気投合、治兵衛は十兵衛を江戸に誘いますが、治兵衛には隠された裏の顔があって…という展開であります。

 ここまで書けばおわかりでしょう、治兵衛の裏の顔は、法で裁けぬ悪を裁く裏稼業の元締め。面白いのはその裏稼業のシステムで、依頼人の依頼を受けて、まずは綿密な調べで裏を取るというまでは普通(?)ですが、始末の方法が必ずしも殺すだけではない。相手の罪の重さ、そして依頼人を含めた関係者に与える影響を考えた上で、殺さない程度に懲らしめる、あるいは二度と表に出られないように封じ込めるという三段階からチョイスするという寸法なのです。
 冷静に考えてみれば、いくら法で裁けぬ悪だからといって、必ずヌッ殺す必要があるわけではないわけで、ちょっとしたコロンブスの卵といったところで感心させられました。

 本作では、その治兵衛一党が、大店の女房をたぶらかした役者くずれに仕掛けた裏稼業の物語を縦糸、そして妻と弟を追う十兵衛の物語が横糸として描かれますが、首尾良く終わりを迎えたはずの二つの物語が、終盤で意外な展開を見せ、苦い結末へと繋がっていくこととなります。
 おそらくはほとんどの読者が予想していた展開をあえて外して見せた一ひねりですが、それが面白いような面白くないような…ちょっと不思議な読後感の作品でありました(というか、正直に言えば、必殺ものであれば中盤あたりに入ってくるエピソードのような気もしますな)。


「無用庵日乗 上野不忍無縁坂」(花家圭太郎 双葉文庫) Amazon bk1

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