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2006.01.31

今日は小ネタ二題。

 一体どうしたことか、ここのところ2,3週間おきに熱を出して寝込んでいます。本日も体調不良につき、小さなニュースを二つだけでご勘弁を。

映画村オリジナル特撮時代劇「超忍者隊イナズマ!」

 その一。毎年毎年、「イケメン新選組」「義経と弁慶」など、東映の特撮ヒーローものに出ている若手俳優を使って何とも言えない時代劇を製作している東映太秦映画村。さすがに今年は「山内一豊の妻」はやらないだろうと思ったら、オリジナル企画で来ました。
 それも「映画村30周年記念オリジナル特撮時代劇第1弾! スーパー忍者ヒーローアクション時代劇始動!!」と銘打っての作品。
 あらすじを見てみると、タイムマシンが発明された未来の日本で、「スーパー戦隊100周年企画」(…)として、江戸時代の若者たちを忍者ヒーロー「超忍者隊イナズマ!」に仕立て上げようとするも(…時間保護局の人に捕まって圧縮冷凍とかされないのかしら)、本当の魔物が出現、それに作り物のヒーローである「超忍者隊イナズマ!」が立ち向かうというもの。
 何だか長谷川裕一先生のコミックみたいなお話ですが、スタッフ・キャストを見てみると…ほとんどそのまま今放映中の「魔法戦隊マジレンジャー」(あと「特捜戦隊デカレンジャー」からも何人か)ということで、それなりに面白いことになるのではないでしょうか。
 これを機に、この中から時代劇に出てくれる人が出てくれればいいんだけどなあ…特に緑のお兄ちゃんとか。君なら第二の照英を狙える!


「無限の住人~武器屋(えものや)24時間~ 武器コレクションフィギュア」

 その二。「アフタヌーン」誌で連載中のアクション時代コミック「無限の住人」がフィギュア化! …ただし武器の方が。
 これはもう写真を見てもらうのが一番と思いますが、原作に登場するキャラクターたちが操る奇っ怪な武器の数々が、トレーディングフィギュア(箱に入っていて中身がわからないフィギュアですね)で発売されるということです。
 元々開発元のプレッサント・エンジェルズ社は、以前から「武~MONONOFU~」というレーベルで、様々な武器類のトレーディングフィギュアを発売しており、その手のアイテムでは定評のあるところ。
 なるほど、この会社の作品なら間違いないでしょうし、この妙にこだわった&ひねくれたアイテム化が如何にも「無限の住人」らしい…と原作ファンとしては思います。
 ラインナップは全10種+シークレット1ということですが――シークレットはやっぱり乙橘槇絵の三味線刀(名前失念)でしょうなあ――原作でほとんど雑魚キャラだった宇留間の得物が入っているのにはちと驚きましたよ。
 ちなみにAmazonの方ではすでにBOX売りが。うむむ、5千円か…


 と、楽したつもりがいつもとあまり変わらない分量になってしまった小ネタ二題でした。

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2006.01.30

「手習重兵衛 刃舞」 キャラ立ちの妙が生む楽しさと暖かさ


 手習重兵衛シリーズも後半戦、第4巻目である本作で描かれるのは、重兵衛と、前作に登場した剣鬼・遠藤恒之助との真っ向勝負。
 重兵衛に罪を着せ、また上司や弟を次々と憎むべき敵でありますが、恒之助の実力は重兵衛よりも遙かに上。心身ともに追いつめられた重兵衛は、新たに師について剣を磨き始めますが…というストーリー。

 言ってみれば二人の剣士の決闘を描いた非常にシンプルなお話なのですが、それでも全く退屈しないのが本作の凄いところ。クライマックスへの盛り上げ方や、剣戟描写が巧みなのはもちろんなのですが、それ以上に登場キャラクターの描写が実にいいのです。
 かねてから個性的な人物が登場――というよりむしろ登場人物の個性を浮き彫りにするのが非常にうまい――シリーズであり作者ではありますが、本作で新登場するキャラクターたちも実にキャラ立ちが見事なのです。

 まず、重兵衛に「人を殺すための剣」を教える師となる長坂角右衛門。実に物騒なことを教える師匠で、一体どんな人斬りが出てくるかと思いきや、出てきたのは子沢山子煩悩で、浮気性の妻に頭が上がらない男という何とも意外な人物。もちろん腕前の方はただ者ではない冴えを持ち、何やら訳ありの人物なのですが、およそ殺人剣の遣い手とは思えない造形で、いい意味ではぐらかされた気分です。
 また、重兵衛の許嫁・吉乃とその世話役のお以知のコンビも賑やかかつ愉快なキャラクター。吉乃は美しいは美しいが気が強く、腕前も男勝り、でも家事は苦手…というより周囲に被害甚大という、こう書くとまた実にステロタイプに見えるキャラなのですが、しかし手習所の子供たちやヒロインの飼い犬・うさ吉とムキになって張り合うところなど、本人が意図していないであろう可愛げがあったりして実に楽しい。そしてさらにそこに、主人に対し全く容赦のないお以知のぼやきと突っ込みが入るので楽しさは尚更、であります。

 もちろんレギュラー陣も相変わらずの賑やかさ&暖かさで、重兵衛でなくともこの世界に居心地の良さを感じてしまうほど。憎むべき剣鬼である恒之助にしても、弱い重兵衛を倒しても仕方がないと、重兵衛の修行が終わるまで待ってやるという、(ライバルキャラとしてはままあることではありますが)一種の人の良さを見せてくれて、いやはや全くもって油断ができません。

 そしてラストの決闘で遂に恒之助を退けた重兵衛。しかしながら、一連の事件の背後で暗躍する忍者集団は未だ健在、まだまだ重兵衛に平和な暮らしが訪れるのは先になりそう…というわけで、物語は第5巻に続くのでありました。


「手習重兵衛 刃舞」(鈴木英治 中公文庫) Amazon bk1


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2006.01.29

「仮面の忍者赤影」第01話 「怪物蟇法師」

 豊臣秀吉がまだ木下藤吉郎だった頃、琵琶湖の南に金目教という怪しい宗教がはびこっていた。金目教に配下の乱波を送り込む藤吉郎だが、幻妖斎にあっさりと見破られてしまう。その事態に竹中半兵衛が飛騨から呼び寄せたのは、二つの影、赤影と青影だった。二人は乱波を追ってきた霞谷七人衆の一人・鬼念坊を撃退。鬼念坊を追った赤影だが、七人衆の一人・蟇法師と彼の操る千年蟇が行く手を阻む。巨大な千年蟇に苦戦する赤影だが、かろうじてこれを撃退するのだった。

 手元に特撮時代劇ヒーローもののDVD、LDが山と溜まったので、毎週1話ずつ(予定)解説していくことにしました。
 で、今回は特撮忍者ヒーローの代名詞とも言える「仮面の忍者赤影」第1話。以下、感想をざっと。

○いきなり凄まじい迫力で祈祷を行う白装束の幻妖斎。天津敏の力演が冴える冴える。まさに悪のカリスマです。

○どこかで見たような顔立ちの濃いハンサム、竹中半兵衛。演じるは若き日の里見浩太郎!

○どう見ても打ち上げ花火状態の狼煙を打ち上げる乱波。忍びとしてそれはどうかと思うが、追いつめられているのはよくわかった。

○シャボン玉と共に初登場の赤影と青影。赤影「影をお呼びか!」青影「影はここに!」おお、格好良い!

○素手で刀を受け止め、仮面をはがそうとする鬼念坊…が、仮面から電撃ビリビリ。これはちょっと驚いた

○刀や手裏剣をはじき飛ばして鋼鉄の体をアピールする鬼念坊。というか、斬られた服まで復活してるんですが…こりゃ単なる体が硬いとかいうレベルじゃないよ!

○見るからに怪しげなオーラをプンプンさせる怪人・蟇法師。幻妖斎の前に伺候するときに蛙のような姿勢で近づいてくる姿が印象的。

○蟇が! 蟇が火を吹いた! 単なる巨大ガマじゃないなあ

○勇敢にも接近戦を挑み、ガマを斬りまくる赤影。さらに足下に手榴弾投下! 橋を破壊されて谷底に、何だか気持ちがいいくらい豪快に転落するガマ。いや、本当に素晴らしい落ちっぷりでした


 いや、色々書きましたが、今改めてみても真面目に面白い作品でした、仮面の忍者赤影。
 余計なものを一切省いた、シンプルイズベストを地でいく作品というべきでしょうか、冒頭のあらすじ(お馴染みのナレーションは第2話からですが)と主題歌を聴いていれば基本設定は一発でわかり、後はもう豪快な秘術合戦を楽しめばいいという娯楽時代劇の王道を行くような作りであります。

 そしてまた、そのシンプルな設定が、正義のために戦う仮面の忍者という、冷静に考えれば非常にうさんくさい存在を、不思議なリアリティのある存在として描くことに成功している一因のように思います(もちろん、それ以上に赤影役の坂口氏の好演があることは言うまでもないですが。

 特撮については、光学合成(というのもナニな感じですが…)などは、今の目で見るともう…ですが、千年蟇の暴れ回るシーンはなかなか…いや、相当の迫力。ミニチュアワークといい、蟇の動きといい、かなり見応えがあります。
 時代劇でありながら(特に後半のエピソードでは)巨大怪獣が多数登場、忍者vs怪獣というある意味ドリームマッチが展開されるこの作品ですが、その持ち味は第1話から発揮されていると言えましょう。


<今回の忍者・怪忍獣>
鬼念坊
 霞谷七人衆の一番手で、見るからに荒法師のパワータイプキャラ。刀を素手で受け止め、刀や手裏剣をもはじく鋼鉄の体を持つ。小技では青影と赤影に翻弄されまくるも、その鋼鉄の体で逆襲。しかし唯一鋼鉄ではなかった目を潰されて敗退。

蟇法師
 霞谷七人衆の一人でこ汚らしい老人。忍法蟇変化で千年蟇を操る(別に自分が変化するわけではありません)。赤影を寺におびき寄せて抹殺を狙うも、常人離れした赤影の戦闘力の前に蟇が敗れ、一時撤退。名乗る時の「俺の名はガマ! ほぉーし」など、大仰な喋りが楽しい。

千年蟇
 蟇法師の愛蟇。人間の十数倍もありそうな巨大なガマガエルだが、口から火を吐く能力もあり、単なる巨大生物ではない。赤影に超接近されてグサグサ刺された挙げ句、足下を爆破されて谷底に落下して敗退。何だか動きに妙な可愛さがあって(特に落下するとき)、その後の蟇法師へのすり寄りっぷりの可愛さといい、昔2chがあったら絶対萌えスレが立っていたと思います。

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2006.01.28

「楓の剣!」 ライトノベル界に女剣士見参!


 第5回富士見ヤングミステリー大賞佳作の本作は、ライトノベルの世界ではまだまだ珍しい時代もの。主人公は大身旗本の姫ながら男装の女武芸者・榊原楓。父の転勤(という表現も何ですが)に従い江戸を離れていた彼女が、三年ぶりに江戸に帰ってきたところから物語は始まります。
 折しも江戸では、わらべ唄とともに怪火が起こるという「わらべ唄火事」なる怪事が連続。その陰に自分の三年前の悲しい記憶に触れるものを感じた彼女は、許嫁で喧嘩友達の弥比古や菓子屋の若旦那・嘉一と共に事件の謎に挑む…というお話。

 ミステリとは言い条、怪事件の陰に合理的なトリック等があるわけでもなく(うわ、何という即物的な判断基準だ)、また誰が黒幕であるか、登場した瞬間にわかってしまうなど、ミステリとしていかがなものかという印象は強くありますが、なぜ黒幕がそのような行動をとったのか、という点には一ひねりあってなかなか楽しめました(一応説明はあるものの、なぜ今頃?という印象はありますが)。

 一方、時代小説として見た場合、普段あまり時代考証を気にしない私が見ても、これはどうなのかな…という点がなきにしもあらずでしたが、しかし若い衆にはとかく敬遠されがちな時代ものを、親しみやすく翻訳してみせたと思えばまあいいのかな、と思います。
 ただ、冒頭で「半日閑話」の中でも短いながら不気味な物語の一つ、溺死体落下話を引用していていたので期待したのですが、作中の話の呼び水程度にしか使われなかったのは残念でした…って、怪談バカの勝手な感想は置いておいて。

 正直な話、主役のWツンデレバカップルよりも、軟弱な若旦那に見せかけて実は…という嘉一とお供の少女・羽瑠のキャラの方が主人公向きではないかなあと個人的には思いますが、文章や物語運びなどはかなりこなれていますし、時代劇の大ファンと思しき作者には、この先も――もちろん時代もので――頑張っていただきたいと大いに期待するところです。本作の続編も歓迎ですよ。


「楓の剣!」(かたやま和華 富士見ミステリー文庫) Amazon bk1

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2006.01.27

今週の「SAMURAI DEEPER KYO」 久々にこの漫画の恐ろしさを味わいましたよ

 塵となりゆく京四郎の前で刃を振り上げる狂。だが彼が振り下ろしたのは自らの腕だった。そしてその腕からの血潮が、京四郎の、仲間たちの躯の傷を瞬く間に治していく。そして意識を取り戻した京四郎を殴りつける狂。狂の叱咤と朔夜の愛の前に、京四郎はかつての笑顔を取り戻す。狂と京四郎の復活を喜ぶ一同だが、その前に、遂に先代紅の王が立ち塞がる…

 その血の力だけで紅虎たちはともかく、崩壊カウントダウンだった京四郎の躯の死の病まで治ってしまう(その時、狂が何とも複雑な表情をしているのが面白いのですが)という超展開にはさすがに唖然としました。いや、さすがにそれはやりすぎだろ…と一瞬ゲンナリしましたが(つい最近、激しい戦いの果てに完全燃焼して灰になった夫婦がいただけに)、続くギャグ展開が、ごく初期――脳天気な京四郎が主人公だった頃――のノリで、これはこれで面白かったので、何だかどうでもよくなってしまいました。
 まあ、だってKYOだしな。

 何よりも、京四郎のアホ毛がちゃっかり復活していたのにはちょっと感慨深くなりましたよ。ようやく愛を確かめあうことができた京四郎と朔夜を見て、目をキラキラさせてる灯もおかしかった。実に男らしくゆやにセクハラ予告する狂とか、みんなテンション変で素敵。

 が、その脇で壬生組はまだ魂が抜けているわけで、いいのか、そんな呑気にして…というか、ラスボスがすぐそばにいるんですが。と思っていたら先代が遂に出陣。激しく怒りに燃えているようですが、そりゃ自分だけハブにされてみんな和気藹々とじゃれあってたら、ねえ(何といっても捕まえていたはずのゆやまでしっかり会話に参加してるし)…と変なところで先代に同情してしまいましたよ。

 と、それはさておき、いよいよ最終局面。狂と先代の決着よりも個人的に気になるのは、梵トラ灯サスケ幸村アキラの出番なんですが…。狂の楯になるのはやったばかりだし、何よりもわざわざ傷を治したんだから出番くらいあっても、と思うんですがどうなんでしょうね。
 壬生組が操られて敵に回る、という展開も考えられますが…さて。

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2006.01.26

「サムライスピリッツ 天下一剣客伝」 シリーズの魅力を再確認できる良作


 PS2版「サムライスピリッツ 天下一剣客伝」を買ってきました。剣戟格闘ゲームの名門・サムライスピリッツシリーズの最新作(最終作という触れ込みでもありますが)である本作は、過去に2Dで発売されたシリーズ6作のキャラクター総登場、さらには操作法やシステムも過去作の(をベースにした)ものをチョイス可能という、まさにシリーズ集大成とでも言うべきもの。
 私は本作のアーケード版はプレイしていないのですが、シリーズ第1作の頃からのサムライスピリッツファンとしてはやはり黙ってはおれず、早速プレイしてみました。以下、ジジィゲーマー兼時代劇ファンとしての感想です。

 一時間くらいあれこれプレイしてみての感想ですが――サムライスピリッツですよ、これ。サムライスピリッツだ。

 …いや、当たり前だろ、なに間の抜けたことを言ってやがると思われるかもしれませんが、どれだけキャラクター数が増え、システムなどでデコレーションが増えようとも、プレイ感覚は、サムライスピリッツ第1作そしてそれ以降も脈々と受け継がれるもシリーズ独特のものであることに安心したのです。

 このシリーズ、プレイしたことのある方はわかっていただけると思いますが、単に強キャラを選んで、レバガチャしていれば勝てるというわけではありません。他のゲームのように連続技をどんどん叩き込んでいくのではなく(まあ、連続技が重要なファクターになるシリーズ作品もありますが)、如何に相手の隙を見つけて、そこに攻撃を的確に叩き込んでいくか、というのが、このシリーズならではの戦いであり、醍醐味であると、私は思っています。
 もちろんそれは相手にとっても同じ事で、どれだけ押していようとも、一瞬の油断が命取り、あっという間に大逆転したりされたりという、大げさに言えば真剣勝負ならではの感覚がそこにはあり、そしてそんな緊迫感のある「間」を体感することがこのゲームの中ではできるのです。
 言ってみれば、単に舞台や登場キャラが時代劇というだけでなく、プレイしてみて受ける感覚が、実に時代劇(の剣戟シーン)的で、チャンバラファン・時代劇ファンの私には、たまらなくシリーズであったのです。

 で、面白いのは冒頭に書いたとおり、同じキャラでも過去作の様々な操作法・システムを選択することができるのですが(ここがまたシリーズファン感涙なのですが)、そのどれを選んでも上に書いたような根本的なプレイ感覚は変わらないのですね(言うまでもないことですが、あくまでも感覚的なものの話であって、どのシステムを選んでも大して変わりばえしないなどと言っているのではないですよ)。
 同じゲームなのだから当たり前、と言えばそうなのですが、デフォルトで6種類、ほとんど同じゲームとは思えないほど違いのあるシステムもある中で、剣戟格闘ゲーム「サムライスピリッツ」としての味わいは変わらないというのは、非常に興味深いことでありますし、また本シリーズの魅力が奈辺にあるか、再確認できた思いです。

 ダラダラと私個人の思い入れを書いてしまいましたが、ともかくもサムライスピリッツが好きな人であれば、プレイして絶対損はない作品であることは、間違いないと思います。
 ロード時間はそれなりにありますが、まあぎりぎり気にならないレベルですし(ただし、頻繁にキャラを変えることになる対戦モードだとちょっと気になるかな?)、格闘ゲームとしてはかなり堅実に作られている――安心してプレイできる――作品であるかと。
 登場キャラクターも40人+αと、唖然とするほどの人数が用意されているので、一人プレイのみの人でも、かなり長く遊べるのではないかと思います(シリーズファンとしては、アーケードモードのデモ画面でのキャラ同士の会話に、時々「おっ」と思わされる新設定が出てきたりするので全部クリアしないと気が済まんです)。
 もちろんシリーズ初体験の人でも――上に書いたようにチャンバラ好きの人であれば特に――楽しめるはずなので、まあ要するにみんなプレイしてみてよ、というのが正直な気持ちです。


 …と、まとまったところでよせばいいのに余談。
 このソフトを近所のゲーム屋で買ったら、初回特典のフィギュアが付いてきたんです。新キャラのいろはさんの。
 このいろはさん、リンク先を見ていただければわかりますが時代劇でメイドさんという画期的というか世も末というか、普段珍妙なサムライやニンジャに慣れっこな私でもいかがなものかと思わないでもないけどここまでやられたらいっそ爽快、実は正体が○○というのも面白いな(木下順二先生は泣きそうですが)、というキャラですが、とにかくこの作品の顔、というくらいあちこちに顔を出しています。パッケージでもヒロイン扱いですし、CDのレーベルイラストも堂々単独占拠。そしてこのフィギュアも…といったところ。
 で、折角だからこのフィギュアの写真でもアップしようかと思ったのですが止めました。いや、何というかその、露出度が大きすぎて――っていうか、明らかにゲーム中の絵やイラストより布が減ってるんですが。しかも一番まずいところが。
 …と書いて、お前はそんなところをチェックしたのか、と言われそうなことに気づいて恥ずかしくなったのでこの稿おしまい(いや、だって、自然に目に入るんだって…)。


「サムライスピリッツ 天下一剣客伝」(SNKプレイモア プレイステーション2用ソフト) Amazon

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2006.01.25

「霧隠才蔵 決定版・真田十勇士」 決定版への第一歩?


 これまで故・峰隆一郎の「人斬り弥介」シリーズを書き継いできた宮里洸氏の最新作にして初のオリジナル作品は、霧隠才蔵を主人公にした時代伝奇活劇。徳川と豊臣の暗闘に巻き込まれた信濃忍者の一人・霧隠才蔵が、真田幸村の下に身を寄せ、関白秀次追い落としの卑劣な陰謀に立ち向かう、というストーリーです。

 豊臣秀次といえば、動物や人間をあやめることを好んだ殺生関白として悪名高き人物ではありますが、この作品での秀次は、民を慈しみ平和を愛する名君。その、本作での秀次像と、史上伝えられる秀次像のギャップを埋めるものとして、ある人物の非道な陰謀と性癖が描かれるのが面白いところ。
 豊臣秀次があまりにも正義の人に描かれすぎているきらいもありますが、しかし、秀次を本来であれば豊臣の命運を左右するはずであった名君として描き出しているのはなかなか斬新な視点かと思います。

 また、終盤、この秀次を挟んで、真田軍vs徳川・伊達連合軍の戦闘という展開になだれ込むのも驚かされたところ。一見無茶のようですが、史実との整合性もうまく処理できている点にも感心しましたし、石川賢チックな秘密兵器を片手に暴れまくる筧十蔵も実に格好良い。

 なお本作は、前半は忍者対忍者の死闘、後半は上記のような戦国大名同士の陰謀戦と、途中で物語のスケール感が大きく変わってくるのですが、その双方を貫く背骨として、戦国の世で力強く、人間的に生きようとする才蔵の姿があるおかげで、違和感なく物語を楽しむことができました。

 ただ、タイトルで決定版と銘打ちつつも、登場する十勇士は、霧隠才蔵と筧十蔵、それとおそらく少年時代の猿飛佐助の三人のみという点は非常に残念なところ。
 また、ページ数の関係か、登場人物たちが存分にその力と魅力を発揮していると言い難いのも、残念――というより勿体ない、という印象があります。

 もちろん、作者の頭の中には、十勇士が集結・活躍する、この先の物語が構想されているであろうことは、まず間違いないところ。いわばこの作品は、決定版への第一歩と言ったところではないかと感じます。
 私としても、これから秀吉の死、関ヶ原の戦を経て大坂の陣へと続く巨大な歴史の流れの中で、幸村と十勇士が、果たして如何に徳川に、伊達に戦いを挑んでいくのか、そして敵味方を問わず、登場人物たちがどのような生き様を見せてくれるのか大いに楽しみですし、また続編の刊行を大いに期待するところであります。


「霧隠才蔵 決定版・真田十勇士」(宮里洸 集英社文庫) Amazon bk1

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2006.01.24

今週の「Y十M」 邪悪の反撃開始!?

 堀の女たちと天樹院のつながりを探り出すも、般若侠の扶けにより孫兵衛までも討たれ、怒りと恐怖に震える明成と五本槍。しかし五本槍は明成に一つの献じる。五本槍が般若面をつけて、新婚の男女を攫い、女は明成の贄に、男は天樹院の竹橋御殿の門前に晒そうというのだ。それこそは、明成の獣欲を満たし、天樹院の評判を貶め、そして般若侠をおびき出そうという一挙三得の策だった――

 新章突入記念…というわけでもないでしょうが、異常に格好良い見開きタイトルページ。十兵衛と堀の女たちの顔が並べられているのですが、そのレイアウトと皆の表情が実に素晴らしい。特にさくらの男前っぷりがもの凄くて素敵です。

 さて本編は、ほとんどが会話シーン。さりげに談合好きっぽい七本槍
マイナス2が対般若侠対策の悪計を巡らせますが…その中で一人負け犬オーラをこれ以上ないほどに放つ丈之進が情けないを通り越して哀れ。尻尾があったら絶対丸めています。
 その一方で明成は、堀主水らの亡霊に迫られる悪夢を見て側女の一人を斬殺。相変わらず夢見と寝起きが悪い人だなあ<そんな呑気な

 そして明かされる五本槍の策ですが――天樹院様が吉田御殿で、それこそ加藤明成の女版みたいなご乱行を働いたというのは有名な俗説、これはそれをベースにした非常に陰険な策であります。
 これまでは狩られる側だった七本槍がようやく反撃に転じ、めまぐるしいアタック&カウンターアタックの攻防戦が次号以降描かれることでしょう。はっきり言ってこれからが前半の山場、いよいよもって先が楽しみになってきました。
 先と言えば3巻は3月6日に早くも発売。こちらも楽しみであります。

 …そしてさりげなく、「水の墓場」の存在が描かれているのがナイス。

 ところで最終ページのハシラ、明成が精神に異常をきたしたって…あの人あれが普通ですよ。本当の異常ってのはもっとこう…と、それはともかく、これからアレな展開が多いので、予防線張っているのではあるまいな、編集の人。


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2006.01.23

八犬伝特集その八 「忍法八犬伝」


 八犬伝特集第八回は、第一回でも採り上げた山田風太郎によるもう一つの八犬伝、「忍法八犬伝」。タイトルからも明らかなとおり、山風忍法帖のうちの一冊ではありますが、もちろん凡手を嫌う作者のこと、単純に八犬伝の世界に忍法を持ち込んだだけではなく、なんと八犬伝の物語を「史実」として受けた上で、その後日談を描いているのです。

 舞台となるのは江戸時代初期、お取り潰しの危機に瀕した里見家を…いやいや美しき姫を救うため、八犬士の子孫たちが死闘を繰り広げるというお話。この八犬士たちの子孫、それぞれ先祖の名前を引き継ぎながらも、それこそ人間の徳目の化身の如き品行方正なご先祖サマに似合わぬろくでなしばかり。
 そのろくでなし八犬士たちが、半端に習い覚えた忍法でもって、服部半蔵配下のくノ一衆に文字通り必死の戦いを演じるのですが、そうした本筋のみならず、随所に山風らしい八犬伝パロディが挿入されているのがなかなか面白い(やっぱり“忠孝悌仁義礼智信”が“淫戯乱盗狂惑悦弄”に変わるというのはよく考えたものだと感心しますな)。

 正直なところ、ろくでなしどもが、天真爛漫な美しき姫君を救うため、身を捨てて一世一代の勝負に挑むという基本設定は、同じ忍法帖でも「風来忍法帖」という大傑作があり、あちらと比べると、構成・展開の点で数段落ちると個人的には思っているのですが(あくまでも忍法帖として、ね)、一種の八犬伝パロディとして見た場合、実によくできていますし、何よりも一つの伝奇物語を確固とした現実として踏まえた上で、更に伝奇物語を構築してみせる神業には、ただただ感嘆するのみです。

 「八犬伝」とは別の意味で――もちろん忍法帖だからなどという即物的な理由ではなく――山田風太郎ならではの八犬伝と申せましょうか。


「忍法八犬伝」(山田風太郎 講談社文庫) Amazon bk1


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 八犬伝特集インデックス

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2006.01.22

2月の伝奇時代劇関連アイテム…というかとあるDVDの話

 2006年2月の伝奇時代劇関連アイテム発売スケジュールを更新しました。右のサイドバーからも見ることができます。

 今一つ伝奇アイテムが不作だった一月以上に寂しい月となっている二月。
 これまでの室町ものとは一風変わった趣の作品という噂の朝松健の「暁けの蛍」、そしてシリーズも早三巻目のえとう乱星「書院番殺法帖」最新作の他は、特にこれ! というのが感じられないのが残念です
 長編コミックの最新巻など、読みたい本はたくさんあるのですが、新しい刺激が足りないかな…と全くもって贅沢かつ生意気なことを考えたり。
 もっとも、私の情報収集能力もザルなので、あまり偉そうなことは言えないのですが…

 そうそう、昨年劇場公開された「SHINOBI」のDVDが発売されますが、面白いというか何というかなのは、全部で4バージョンソフトが発売されること。
 最近では映画などのDVDが発売される時に、通常版限定版が発売されるのは当たり前のようになっていますが、この「SHINOBI」では、その他に「甲賀版」「伊賀版」という謎のバージョンが発売されます。
 これ実は、限定版の廉価版とでも言うべきもので、限定版の特典ディスクの内容(それとおまけのカード)が、二つに分かれてそれぞれ付いてくる、ということのようです。内容は、甲賀版は予告篇・VFX・美術等に関するもの、伊賀版はメイキング・主役二人へのインタビュー・舞台挨拶等で、それぞれカラーは分かれているような気はします(詳しい4バージョンの内容はこちら)。
 とはいえ…こうした特典に興味を持つ方は、一度に全ての特典が見れる限定版を買うような気がするんですが、どうなんでしょうね(役者さんにだけ興味のある方が伊賀版を買うかもしれませんが…)。

 ちなみに「SHINOBI」という作品自体は、以前も紹介しましたが、オダギリジョーがどうしようもなかったのと終盤がダラダラしているのを除けば(本当に褒めているのかそれは)なかなか面白い作品でしたので、劇場まで行くほどではなかった方でも、一度見てみてもよいのではないかな、とは思っています。

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2006.01.21

「修羅の刻 陸奥圓明流外伝」第15巻 戦いの中のその生き様


 昨年三ヶ月にわたって集中連載された「修羅の刻」「雷電編」が単行本化されました。表紙だけ見ると一体どこの萌えコミックかと思いますが、しかし内容は実に骨太の人間ドラマ。私は雑誌掲載時に全て読みましたが、まとめて読んでみると、これがやはり、改めて実に良い作品だな、と思った次第。

 これは漫画に限らず、現実世界でもそうですが、格闘技の世界というのは、ただ単に強いヤツ、巧いヤツが戦えば名勝負になるかと言えば、必ずしもそうではない、というのが実際のところ。どれだけ強かろうが巧かろうが、戦いの中に感情…というよりも(気障な言い方ですが)自分の生き様・信念・想いetc.を見せられない人間は、名勝負を生み出すことは、人々の心の中に残ることはできないのではないか、と思います。

 そういった観点からすると、本作の雷電は、間違いなく戦いの中に自分の生き様や想いを見せつけた男。
 終盤で初めて語られる雷電の戦う理由は、既に雑誌掲載時に読んで知っていてもなお衝撃的ですし、そして雷電の人生最後の死闘の有様からは、雷電の切なくも壮絶な想いが強く伝わってくることです。
 もっとも、その雷電の相手である陸奥兵衛は、正直キャラ的には薄いのですが…この戦いの相手は――本人が言っているように――雷電の死闘を見守る葉月であることには、心情的には大いに納得できるので問題なし。

 「修羅の刻」のシリーズ中、個人的に、時代アクションとして一番好きなのは「寛永御前試合編」であることは今なお変わらないのですが、ドラマとして一番好きなのは、と聞かれたら、間違いなくこの「雷電編」と答えます。
 漫画ファン、格闘技ファンのみならず、普段漫画は読まないよ、という時代ものファンの方にも、ぜひ読んでいただきたい作品であります。


 と、最後に蛇足と野暮を承知で兵衛の父について。作者は賢明にも明言していませんが、私個人としてはやはり…と思っているところ。共に己を超える強さを持つ者を求めつつも、遂に果たせなかった二人が結びつき、兵衛が誕生するというのは、ドラマ的――という表現が適切かはわかりませんが――に納得できるものがあります。
 もちろんそれは、客観的に見れば悲劇であり、またおぞましさすら感じさせるものがあるかもしれませんが、当人たちにとってみれば、それはそれで一つの幸福な結びつきであったのではないかな、と感じた次第。もちろん、勝手な思いこみ前提ですが…


「修羅の刻 陸奥圓明流外伝」第15巻(川原正敏 講談社月刊マガジンKC) Amazon bk1


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2006.01.20

今週の「SAMURAI DEEPER KYO」 さすがに紅虎は泣きすぎと思った

 先代の謀計により朔夜の前で望を斬り、慟哭する京四郎。鎭明は、先代が憎ければかつての暗殺者に戻り、真の壬生一族である狂を倒してその躯を奪えと唆す。その言葉に逆らう京四郎だが、狂が朔夜に構わず先代を斬ろうとしていることを知り、遂に狂に刃を向ける。死闘の果て、狂を追いつめる京四郎。しかし京四郎は親友である狂を斬ることができず、狂の躯を封印すると、自らは薬売りとして人助けの旅に出たのだった。そして京四郎の躯にも終わりの時が――

 冒頭で鎭明のもの凄い説明長台詞があった他は、スムーズすぎるほど物語は進み、京四郎の回想も(おそらく)今週で終了。京四郎も先代と同じくらい回りくどいことをすると思わないでもないですが(そしてその二人にいいように使われる狂って…)、京四郎と狂の因縁はそれなりに納得できました。

 少し気になったのは、四守護士に関する鎭明の台詞。生まれが早いほど先代に近い力を持つという四人ですが、それならば一番先代に近かったはずの京一郎は一体…実は先代に反逆してすり替わっていました、というベタな展開だったらどうしましょう。

 そして風化が始まった京四郎の躯。果たして京四郎に赦しと安らぎの時は来るのか…

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2006.01.19

「にんにん物語 忍者無芸帳」 情けなくも無邪気な忍者たちを愛せよ


 気がつけば既に十数冊刊行されている双葉文庫の「ひさいち文庫」シリーズですが、以前に発売された「眠れる森の忍者」に続き、「忍者無芸帳」第二弾として「にんにん物語」が発売されました。
 いしいひさいちファンの方であればよくご存じと思いますが、多岐にわたるいしいひさいち作品の中で、決して小さくない割合を占めるのが時代もの――なかんずく忍者ネタでありまして、「忍者無芸帳」はその総称ということになるでしょうか。
 この「にんにん物語」には、全123本の忍者ネタ、時代劇ネタの四コマ漫画が収録されていますが、そのいずれも、時代劇ファンなら「あるある」「わかるわかる」とニンマリしそうなものばかり。天井裏の曲者ネタ(「むっ、曲者」と天井裏に槍をブスッというあれですな)などをはじめとして、時代劇を見ていれば一度は目にするお馴染みのシチュエーションを、何とも情けなくも愛らしい忍者たちが徹底的にパロディにしてみせる――それも本人たちは必死なのがまた可笑しい――のが、本当に楽しい一冊です。

 個人的に、元ネタに対する「毒」と「愛」はいしいひさいち漫画の二大要素と感じていますが、この「忍者無芸帳」シリーズは、特に「愛」の側面が強く出ているな、というのが私の印象。時代ものゆえに風刺という「毒」を混ぜにくいというのもあるとは思いますが(いや、このシリーズの存在自体が時代ものへの風刺ではありますが)、それ以上に時代ものへの作者の「愛」が、どの作品からも強く伝わってきます。
 このシリーズに登場する忍者たちは、忍者とは言いながら、みな実にセコくて間が抜けていて、しかし無邪気な連中。そんな何とも憎めない忍者たちの姿には、よく見てみれば「バイトくん」シリーズの、本当に情けないんだけど何だか凄く共感できるビンボー学生たちの姿とダブって見えてくるものがあります。
 そんな、しょーもない連中の生き様への優しい眼差しが、ここにはある…というと大袈裟に聞こえるかもしれませんが、時代もの・忍者もののパロディ漫画は様々な漫画家が描いている中で、このシリーズは他の作品とはまた別の――一種心地よく、暖かい――味わいがあるのは、紛れもない真実であります。

 話をこの「にんにん物語」に戻せば、収録作品は「忍者無芸帖」「新忍者無芸帖」「ドーナツブックス」等に収録されたものからのチョイス。そのため、これらの作品集を既読の人間(私わたし)にとってみれば、正直なところ見たことのある作品がほとんどではあるのですが、これらが現在結構入手困難になっている現状を考えれば、こうした形で傑作選が出るのはまことに結構な話ではないでしょうか。少なくとも、今まで「忍者無芸帖」シリーズに触れたことがない方にとっては、格好の入門編であることは間違いありません。


 …そういえば、昔は「忍者無芸帖」なのに、今は「忍者無芸帳」なのですね。


「にんにん物語 忍者無芸帳 」(いしいひさいち 双葉文庫) Amazon bk1

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2006.01.18

八犬伝特集その七 「魔空八犬伝」


 八犬伝特集第七回、今回は「南総里見八犬伝」のリライトではなく、八犬伝のモチーフを使って全く新しい物語を作り上げてみせた作品。作者はあの石川賢、ということで、果たしてどのような八犬伝世界になるかとワクワクして読んでみると…いかにも石川賢らしい時代伝奇アクションバイオレンス漫画となっておりました。

 ストーリーを簡単に紹介しますと――時は戦国時代、壮絶な合戦が行われた上空に現れる黄金城、実は伏姫により魔空(魔界のようなものと思し召せ)に封印された禁断の魔城を巡り、魔空封印の八つの玉を持つ八犬士たちと、黄金城入城を目指す信玄・信長ら戦国大名たち、更に魔空解放を狙う魔物が死闘を繰り広げるというもの。
 これを見れば大体わかるかと思いますが、原作(南総里見八犬伝)との共通点は、伏姫と八房、八つの玉と八犬士が登場するくらいのもの。八犬士も、犬塚信乃と犬山道節の名を持つ犬士が登場するだけで(道節は何故か「仁」の玉を持っていますが)、後の六人は完全にオリジナルとなっています。

 じゃあこれのどこが八犬伝なんじゃい、と言われると困ってしまうところもあるのですが、しかし、八犬伝の道具立てを使うことによって、この作品に様々な意味で奥行きを与えているのは事実。また、この作品の背後にあるテーマが輪廻転生であることからも、作品のバックグラウンドに八犬伝を持ってきたことに意味が感じ取れます(まあ、石川賢の長篇時代伝奇はほとんど輪廻転生が絡んでくるのですが…)

 と、八犬伝ものという観点から見るとあまりすっきりしない文章になってしまいましたが、八つの玉を持った勇士が戦国時代を舞台に暴れ回るというのはシチュエーションからして胸躍るものがありますし、何よりも単独で読んでも伝奇時代アクションとして面白いこの作品。八犬伝の一つのバリエーションとして、興味深い作品であることは間違いないと思います。

 ちなみに伝奇好きとしてもう一つ気になるのは、この作品に登場する、虚空の黄金城というモチーフが、おそらく…というよりまず間違いなく日本の伝奇SFの金字塔、半村良の「妖星伝」から来ていると思われること。いわばこの作品の中では、近世の伝奇小説の傑作である「南総里見八犬伝」と、現代の伝奇小説の傑作である「妖星伝」が出逢っているわけで、実に興味深いことであります。


「魔空八犬伝」全3巻(石川賢 講談社漫画文庫) Amazon bk1


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2006.01.17

「松平長七郎浪花日記」 松平長七郎、ここに復活


 突然ですが学陽書房の人物文庫というのは本当に何が飛び出してくるかわからないところで、お堅いイメージとは裏腹(?)に、ええっこんな本もアリなの!?的な作品が登場することもしばしばです。
 この「松平長七郎浪花日記」もその一つで、まさかここでこの作品に出会えようとは…と嬉しい驚きでした。

 本作の主人公・松平長七郎は、里見浩太朗の「長七郎江戸日記」でご存じの方も多いと思いますが、かなり不思議な人物であります。
 一説によれば(というより本作をはじめとするフィクションの世界などでは)駿河大納言忠長(あの「シグルイ」の既知外殿さまですね)の長男で、紀伊の徳川頼宣の庇護のもとで成長したというお話ですが、本当に実在したのか、ちと怪しい(新潮日本人名辞典によれば忠長は1606年生まれですが、長七郎は1614年生まれなんですな)。
 とはいえ、島原の乱の際には幕府軍に加わろうとするも板倉重昌に拒否されたため、単独で戦ったという素敵なエピソードも伝わっており、実在だろうと架空だろうと、実においしい人物であることは間違いありません。

 さて、本作の松平長七郎様は、母の実家の江戸屋敷でお供と三人で暮らす文武に優れた快男児。人に抜きんでた能力を持ちながらも、その生まれ故に飼い殺し同然に暮らす長七郎の耳にある日飛び込んできたのは、父の名をかたり、国姓爺鄭成功への軍資金を集める謎の一味。
 亡き父の名を汚す奴らを許しておけぬと(格好の暇潰しに)勇躍立ち上がる長七郎ですが、事件の背後には紀伊徳川家を巻き込み、海をも越える謎と陰謀が…というのが本作のストーリー。

 やがて事件は反清復明の軍資金を巡っての攻防戦に発展、勇躍長七郎一党は、謎を追って九州に向かいますが、このあらすじから見てもわかるように、本作は純然たるエンターテイメント。今で言えば文庫書き下ろし時代小説的ノリ、と言えばわかりやすいでしょうか、颯爽たるヒーローに、美しいヒロイン、次々と起こる怪事件に満載のチャンバラと、大衆娯楽の王道を行くかのような内容であります。
 こいつ怪しい!と思った人間が100%敵方の人間だったり、タイトルでは「浪花」なのにあんまり浪花が舞台じゃないとか、突っ込みどころは多々あるのですが(ぶっちゃけこのシリーズは大抵そうなんですが)、しかし、そうした点も含めて、肩の力を抜いて安心して楽しめる作品かと思います。

 シリーズと言えば、この村上元三先生の松平長七郎シリーズは、これまで光文社文庫から発行されていましたが、私の記憶に間違いがなければ、この「浪花日記」はこれまで文庫化されていなかったように思います。
 そういう意味では、こうして文庫化されるのは本当にありがたい話ですし、本作と、同時発売の「江戸日記」に続くシリーズ続刊も、ぜひ文庫化復刊していただきたいものです。


「松平長七郎浪花日記」(村上元三 学陽書房人物文庫) Amazon bk1

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2006.01.16

「劇場版 仮面ライダー響鬼と7人の戦鬼」 仮面ライダー戦国世界を駆ける


 レンタルが開始された「劇場版 仮面ライダー響鬼と7人の戦鬼」を観ました。
 作品自体は昨年9月に劇場公開されたものですが、いかに時代劇とは言え、さすがにいい年こいて映画館で観るのは如何なものかと思ったのと、公開当時のネット上の雰囲気があまりよろしくなかったため(婉曲な表現)、今まで観ておりませんでしたがようやくDVDで観ることができました。

 この作品は、現代の日本で響鬼を倒した巨大魔化魍オロチを倒すため文献を漁っていた明日夢少年が、戦国時代の文献の中に自分と同じ名前の少年と、オロチと戦った響鬼と7人の戦鬼がいたことを知る、という形で、戦国時代の鬼たちの戦いが描かれていくという趣向。
 魔化魍の脅威から逃れるためにオロチに生贄を差し出していたとある村の少年・明日夢が、生贄に選ばれた幼馴染み・ひとえを救うため、人間ならざる力を以て魔化魍と戦う「鬼」を探して旅をし、いずれも一癖ありげな助っ人っちが集まってくる――という、一言で言ってしまえば「七人の侍」パターンであります。

 5月にはディレクターズカット版も発売されるということで、きちんとした感想はその時にまた書きたいと思いますが、粗は多いものの、普通に特撮ヒーロー時代劇として楽しめる作品でありました。
 わずか一時間強で劇場版オリジナルの鬼たちのキャラクターを描けるのかな…と気になりましたが(そしてその懸念はかなり当たった部分もありましたが)、異常にインパクトのある鬼たちのデザインの楽しさもあり、終盤、ちょっと登場しすぎじゃないの? というくらいに増殖した戦闘員を蹴散らすのはヒーローものの王道として気分がよかったですし(特に銅鑼を使った凍鬼の豪快な必殺技は面白かった)、「変身忍者嵐」などの昔懐かしの特撮ヒーロー時代劇を今の映像クオリティでやるとこうなるのかなという印象でありました。

 また、人ならざるものである鬼が、人を守るため、鬼の力を以て魔化魍と戦うというシチュエーションは、なかなかに石ノ森章太郎先生チック、元祖仮面ライダー的な香りがありますが、TVの方では完全に鬼(…というか鬼の力を持った人間)が人間社会の中に溶け込んでいる、受け容れられているという状況なのに対し、この劇場版では、鬼が人々から畏怖と同時に嫌悪の目で見られる存在という、設定の違いが面白いところ。
 何で仮面ライダーで時代劇? という疑問は当然つきまとうであろうこの作品ですが、時代劇(=現代と異なる時代の物語)として設定したことにより、より元祖仮面ライダー的味わいを見せようとしたということなのかな、と個人的には(あくまでも個人的に、ね)思った次第。
 もちろんその試みが成功しているか、というのは別な話で、もう少し鬼が差別される理由・背景を掘り下げて描く必要があったのかな、と思わないでもないですが、戦国時代の鬼の存在の持つ一種の矛盾を体現したような歌舞鬼のキャラクターがかなり面白く、彼の言動(ひとえや明日夢に裏切り者としての正体を知られてからの表情が見事)を見ていればある程度のことは読みとれるかな、とも思います。

 といったところはいいとして、構成等に勿体ない点が色々とあったのも事実。
 現代にオロチとの決戦を持ってきたため、戦国時代での決戦は、ほとんどポッと出の魔化魍ヒトツミがボス扱いになって、カタルシスに欠ける部分があったのは残念なところ。特にヒトツミは、デザインは「変身忍者嵐」の血車魔神斎、人間の姿をしているときは安倍麻美という二重においしいキャラクターだったのですが、結局「異常に耐久力のある敵」くらいの扱いになってしまったのが何とも勿体ない。少女の姿で手鞠をついている姿がなかなか雰囲気あっただけに、もう少しボス敵としてのキャラ立てがしてあれば面白かったのに、という感はあります(というか安倍麻美、よくこの役引き受けたなあ)。
 もう一つ、上記の歌舞鬼が響鬼との決闘の後、どこに行ってしまったのか、生死不明のままフェードアウトしてしまったのも、それまでのキャラが立っていただけに勿体ないと感じました(これはディレクターズカットで何かありそうですが…ていうか歌舞鬼って音撃技出していないような気が)。

 とはいえ、子供向けの特撮ヒーロー映画として見れば、なかなか楽しい作品であったかと思います。 TV版の熱狂的ファンの方はどう思うかは知りませんが、例えばヒーロー好きのお子さんなどと一緒に、あまり難しいことを考えずに見る分には十分以上に楽しい作品なのではないかと思います。


 …というか、いい年こいた大人がフラフラしている姿って、現代劇より時代劇の方が違和感なく見ることが出来ますね、と怒られそうなことを書いてこの稿おしまい。


「劇場版 仮面ライダー響鬼と7人の戦鬼」(東映ビデオ DVD) Amazon

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2006.01.15

映画「大帝の剣」続報

 映画「大帝の剣」撮影現場レポート
 いつの間にやら映画「大帝の剣」の公式サイトらしきものができておりました。

 メインキャストの写真が掲載されていますが、阿部ちゃんの万源九郎は…うーん何だかとても暖かそうな格好。猟師の人のようです(大丈夫、おなかから犬の顔は生やしていません)。佐助役の宮藤官九郎が、妙にイメージに合っていて素敵。
 その他、確か今まで公開されていなかったように記憶する映画のストーリー、キャストなども掲載されていて、決して情報は多くないものの、色々と想像力を刺激されることです。
 というかキャスト、メイン三人以外が「遠藤憲一 大倉孝二 六平直政 谷口高史 船木誠勝 本田博太郎」って妙に濃いキャスティングで、色々な意味で期待大です。

 …ていうかさ、牡丹は!? 上のキャスティングを見た限りでは、どう考えても牡丹役がいないような――


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 「大帝の剣」の勢力分布をまとめてみましたよ
 「大帝の剣」大復活!

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「幕末浪漫 月華の剣士1・2」 名作チャンバラ格闘が2in1で


 発売が昨年から延期になっていたプレイステーション2版の「幕末浪漫 月華の剣士1・2」がこの12日に発売になりました。
 月華の剣士シリーズは、サムライスピリッツシリーズと並ぶSNKのチャンバラ格闘ゲームの一つ。発表が97年と98年と、もう十年近く前の作品ではありますが(というか、もうそんな前の作品になるのかと時の流れの速さに愕然となったり)、SNKの爛熟期とも言える時期の作品だけあって、なかなかそつなくまとまったゲームだったという印象があります。
 そしてまた、サムライスピリッツが「剛」とすれば、キャラクター的にもゲーム性の面からも、「柔」の印象が強く、同じチャンバラものでもこれほど変えられるものかと感心した覚えがあります。

 さてこのPS2版は、タイトル通りシリーズ2作品を1本にまとめたもの。どうやらネオジオ版の移植という扱いらしく、プレイステーション版月華1(追加隠しキャラ3体、ギャラリーモード等)やドリームキャスト版月華2(ギャラリーモード、花札等)にあったオマケがないのは家庭用版として何だか寂しいのですが、ゲームとしての出来自体には、私個人としては特に不満はありませんでした(キー入力にオリジナルとは違うタイムラグがあるらしく、オリジナルをやりこんだ方には不評のようですが…)。ロードは1か2の選択時に一括して読み込んでいるらしく、選択時には結構待たされますが、一度ゲームを始めてしまえば、ほとんど気にならない程度ですし。
 独特のムードを持った音楽やグラフィック(特に2は秀逸)は健在ですし、何よりも1と2が1本で、比較的安い価格で手に入るというのはやはり魅力。初めてこのゲームに触れる方には十分楽しめるのではないかな、と個人的には思っています。

 ちなみに以前にも書きましたが、本作には劇団☆新感線の役者さんが何人かキャラの声を当てられています。どこかで見たようなビジュアルの長髪美形剣士・御名方守矢役の橋本じゅんさん、白い洋装に身を包んだこれまた美形剣士・嘉神慎之介役の粟根まことさんが、舞台上からは想像もつかないような渋い声でそれぞれのキャラを格好良く演じている一方で、豪快な大男キャラ・神崎十三役のタイソン大屋さんが、普段と全く変わらない声出しているのが激しくウケましたよ(あと、中谷さとみさんの男装の麗人ぶりも素敵でしたわ)。


「NEOGEOオンラインコレクション 幕末浪漫 月華の剣士1・2」(SNKプレイモア プレイステーション2用ソフト) Amazon

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2006.01.14

八犬伝特集その六 「新・里見八犬伝」


 八犬伝特集第六回は、角川映画全盛期に真田広之と薬師丸ひろ子で映画化された「里見八犬伝」の原作小説「新・里見八犬伝」。八犬伝をいわゆる「超伝奇バイオレンス」のフォーマットで描き出した作品とでも言えばよいでしょうか(本当は「超伝奇~」の語が出てきたのはこの作品よりもう少し後のように記憶していますが…)。

 ストーリー自体は、もちろん八犬伝を冠する物語であるからして伏姫の八つの玉を持つ八犬士の物語であり、敵や脇役の中にも聞いた名前がちらほらしてはいるのですが、各キャラクターの設定自体や物語構成は相当に大きく異なります。
 その相違点を詳しくは採り上げませんが、やはり全体を貫く最も大きな相違点は、この物語全体が「光と闇の対決」という構図に貫かれていることでしょうか。もちろん元の八犬伝においても、八犬士は人間の徳目を具現化したいわば善なる存在。そして彼らに対立する存在として幾多の悪人、時には妖怪変化までもが登場しますが、あくまでもそれは善の障害物としての存在という色彩が強いように感じられます。
 一方で本作においては、悪=闇は、善=光と対等以上の力と存在感を持つものとして描かれています。本作では、光の側に八犬士がある如く、闇の側にも八人の妖鬼が存在していることが、そのことを端的に示しているように思えます。
 ちなみにこの妖鬼たちの顔ぶれ、オリジナルキャラもいますが、原作に登場するキャラクターをモディファイした者もいるのが八犬伝ファン的に面白いところ。原作でも里見家を大いに苦しめた蟇田素藤、八犬士で悪女といえばこの人な船虫の登場は十分納得として、かなり小悪党の籠山逸東太と泡雪奈四郎がこちらでは猛烈にバイオレンスなキャラになっていたのは、違和感ありすぎてかえって愉快でしたよ。

 なお、光と闇、と言葉だけ聞くと、どうしても今の目で見ると陳腐な印象があるかもしれません。が、本作においては相当に光側の八犬士の生い立ち・前歴が半端ではなく悲惨であって、それでもその中にあって何とか自分の生まれてきた意味を探し求め、また、自分が孤独ではなく信じうる絆がこの世には存在することを命を賭けて証明しようとする姿が力強く描かれており、そうした陳腐感は感じませんでした。

 いずれにせよ、現代における八犬伝リライト…というよりオリジナル八犬伝を考えた時に、やはりまず採り上げられるべきであろう本作。八犬伝という古典の中に、現代のエンターテイメント世界に通用する要素が含まれているとはっきりと見て取れるだけでも、本書の持つ意味は決して小さく内のではないかと思う次第です。北斗信仰とか八字文殊菩薩とか、妙にマニアックなところに題材を求めているのもポイント高いです。

 まあ、全く個人的な話をすると、終盤「ここは俺に任せて先に行け!」の連発だったのが大好きなんですが…(でも荘助の死に様はいまだにトラウマ)


「新・里見八犬伝」全2巻(鎌田敏夫 角川文庫) Amazon bk1


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2006.01.13

今週の「SAMURAI DEEPER KYO」 そしてまた真実が…

 朔夜に連れられ壬生を出た京四郎。朔夜が毎年楽しみにしている桜の樹の下で出会った狂と京四郎は斬り合いとなるが、桜を守るため避けずに刃を受けた京四郎を狂は気に入り、二人の奇妙な友情が始まる。そして朔夜と二人市井に暮らす京四郎は、自らの力で人々を癒す暮らしに安らぎを覚えるのだった。が、鎭明に、朔夜に対して刺客が放たれたと告げられ京四郎が斬った相手は、朔夜の兄・望だった…

 何だか伏線続々解消で面白くなってきました、京四郎の過去話。今回も、
・なぜ京四郎は壬生を捨て外の世界で生きることとなったのか
・狂と京四郎はいつ知り合ったのか
・朔夜が外の世界に出ることができたのはなぜか
・なぜ京四郎が望を斬ったのか
などがまとめて判明。なるほど、(全てそのためではないにせよ)朔夜のことも含めて脱走者・望を討つための罠だとは思いもよりませんでしたよ。
 そして京四郎を罠にはめるのが、かつて彼と同じく未来視の巫女と愛し合い、そして無惨に引き裂かれた鎭明というのが興味深いことです。

 しかしこれまでの物語を見るに、狂もまた朔夜に惹かれ、朔夜もそれに応えていたはず。果たして、今回の事件が三人の関係をそのように変えていくこととなるのか、そしてその先にあるのが、ある意味全ての始まりである京四郎による狂封印なのか。まさに佳境でありますな。

 …しかし、何故に京四郎は裸マントで望を斬ったのかの謎は解けなかったのでした。
 いや、単にコミックス8巻の描写に合わせただけなんでしょうけどね。

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2006.01.12

「私のこだわり人物伝・山田風太郎」第1回 ファンもマニアも必見!

 すでにご存じの方も多いと思いますが、NHK教育テレビの「私のこだわり人物伝」という番組で、今週の火曜日から山田風太郎が取り上げられています。様々なジャンルの方が、それぞれ自分にとって多大な影響を与えた/大いに興味をそそる人物について語るこの番組、山風を語るのは仏文学者の鹿島茂氏。なかなか意外な取り合わせであります。

 もちろん私も大いに楽しみにしていたこの番組ですが、第1回を見たところ、思っていた以上に充実した内容でした。
全4回の第1回ということで、序論という趣もありましたが、ネガとポジの関係と称される司馬遼太郎との比較を通して、山風の大ウソと司馬遼太郎の小ウソを浮き彫りにし、山風(と司馬遼太郎)の小説の本質、さらには小説というものの本質まで迫っていくのはなかなかに興味深いものがありました(司馬先生の小ウソはありゃ単なるミスじゃないか、という気もして、ちょっと野暮な話と思わなくもないですが、まあそれはいいとして)。
 何よりも、鹿島氏が冒頭で語る、(山風作品の)大ウソの中に真実がある、大ウソだからこそ描き出せる人間の真実がある、という主張は、山風作品に限らず伝奇小説(なかんずく伝奇時代小説)の本質を指す言葉であって、大いにうなづけるものがありました。

 と、真面目に見ても非常に楽しく興味深い番組なのですが、山風ファンにとっては、また別の方向でも色々と楽しかった第1回。何せ、山風作品の紹介ということで、現在書店に並んでいるちくま文庫版のみならず、懐かしの佐伯俊夫先生による角川文庫版忍法帖の表紙が映し出されたりして、驚かされました。
 しかも、この角川文庫版の忍法帖、よりによって変更前のえらくナニな表紙の「くノ一忍法帖」が映し出されたりして、この歳になって親と一緒にTV見ていて気まずくなることがあるとは思いませんでしたよ<つうか一緒に見るな
 その他、山風の短編集の目次が映されるところでなぜか伝説の「うんこ殺人」の題名が長く映されたり、初期作品の紹介で「陰茎人」が採り上げられるなど、もうやりたい放題。昔から好きですが、やっぱり好きだNHK教育。
 そもそも、上記の山風ー司馬遼比較で採り上げられたのが、川路利良のパリ大便放擲事件だったりするのも凄い。
 もちろん、そういうネタばかりではなくて、生前山風先生がNHKのインタビューに応えた映像も流れたりとお宝映像もあり(昨年末に放映されたETV特集で山風を演じた三國連太郎が見事だったので、ご本人もああいうしゃべり方かと思いきやえらい早口でちょっと面食らいましたが)、そういった角度からも、山風ファンであれば必見の内容かと思います。

 残る放送は3回、ファンの方もマニアの方も、山田風太郎先生に興味をお持ちの方は、火曜日夜は是非NHK教育のチェックを。ちなみに再放送も翌週火曜日の早朝からやるようなので、第1回を見逃した方はぜひ。
 テキストも発売されています(しかも併録はオーケン語る江戸川乱歩先生)が、こちらはこちらでなかなか面白い内容なので、こちらもどうぞ。


 と、しつこくこの手の話で恐縮ですが、画面に山本タカト先生によるちくま文庫の忍法帖短編全集の表紙がアップで流された時、放送事故になるんじゃないかと余計な期待心配した人は決して私だけじゃない…ですよね?

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2006.01.11

今週の「Y十M」 先生、頑張りすぎです

 途中まで渡った槍の橋を斬られるも、十兵衛のフォローで宙に舞い、孫兵衛を斬ることに成功したお鳥。丈之進の犬・天丸の攻撃を躱した十兵衛は、あくまでも堀の女たちに一人一人七本槍を討たせるために、丈之進をあえて見逃すのだった。加藤屋敷に戻った丈之進は腹いせに孫兵衛らの死体を運んだ駕籠かきたちを斬ろうとするが、そこに般若侠から孫兵衛の槍が投ぜられる。その柄には「蛇の目は五つ」と書かれた紙が巻かれていたのだった。

 新年第一回なのですが、いきなり十兵衛先生それはないでしょうな展開。いや、丈之進を見逃したことではなく、お鳥さんの名場面を奪ってしまったこと。
 原作では、宙に舞ったお鳥さんが「おまえは、おまえのいのちを斬った!」と言葉のリズムの心地よいいかにも山風調の名台詞と共に孫兵衛をばらりずんと斬るのですが、こちらでは十兵衛がその台詞を言ってしまうのが何とも興ざめ(しかも「槍」と書いて「いのち」とルビをふっているので、一瞬「お前はお前の槍を自ら斬った」と当たり前の台詞に書き換えられたかと驚きましたよ)。

 …と、ちょっとエキサイトしたのですが、冷静に読み返してみると、原作を知らない人の目で見れば、十兵衛のフォローは小技が利いていて面白いし、説得力も原作よりもこっちの方が上かなあ、とも思わないでもなく。

 それはさておき、必死に堀をガリガリする天丸は、丈之進の心情と重なるようでなかなか良い演出だったと素直に思いました。

 次号から新章に突入、やられっぱなしだった七本槍もえげつない反撃にでるわけですが…いよいよ青年誌の本領発揮か!?


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 今週のY十M

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2006.01.10

八犬伝特集その五 TVドラマ「里見八犬伝」後編

 八犬伝特集第五回は、昨日に引き続き、TBSのTVドラマ「里見八犬伝」。今日は後編、まずは感想をざっと。

○富山で伏姫の墓に詣でる親兵衛たち。親兵衛の左手ネタは色々アレでオミットされるかと思いましたが生きていて良かった。…と、ここで親兵衛の超能力・風遣いが登場。うわ、犬たちが可愛すぎる。

○悪の秘密基地でぞんざいな縛られ方している浜路。顔を傷つけてやろうという玉梓に、あなたは醜いと言い返す浜路の無神経発言。いい勝負だこの二人。

○山賊を退治していたら馬加大記と出逢った荘助と小文吾。何故か荘助に興味があるらしい馬加大記。佐野さんにしてはいい人っぽいかなあと思った印象、30秒でひっくり返る。

○妙椿、管領のところにも出現、強引な話題振りで管領と成氏を組ませて里見攻めをそそのかす。浜路の暴言を気にして籠山逸東太に自分の美しさのことを確認するのが哀しい。しかし逸東太のくせにいい役だなあ。

○信乃・現八チームは化け猫話のある庚申山に。と、真っ昼間から襲ってくる化け猫。アップになると妙に可愛いですが、なかなか合成も頑張っていると思いました。そして何とか撃退した二人の前に赤岩一角の亡霊登場。何故現八と顔見知り!? と思ったら、そういえば赤岩親子は成氏に仕えていたのでした。

○足を洗えなかった上に失明までしている船虫。これだけ見ると船虫には見えません。普通に悲劇のヒロインです

○やっぱり荘助さんに目を付けていた馬加大記。荘助逃げて逃げて逃げてーっ!! 原作の親兵衛と細川政元ネタがこんなところに…? しかし佐野史郎さんは相変わらずいいお仕事してます。そして馬加の腹心らしき畑上語路五郎、原作では真面目でそれゆえ可哀想な目にあうキャラで、山口馬木也が演じているのでここでも良い人かと思ったら…

○船虫が悪女となって登場。何か時勢が混乱しそうな…しかし大角の奥さんの雛衣さんは? いや、さすがに妊婦のおなかを…というのはまずいですが、大角に切れって言ってもよろこんで腹切りそうだからなあ…あ、本当に切ろうとしてる!

○何はともあれ、雛衣が登場しないおかげで玉は何故か一角の頭蓋骨から飛び出すことに。そして再登場の化け猫、、確かに強いし怖いけど、神通力がありそうに見えないのがちょっと残念。どう見ても大きな黒ぬこです。ありがとうございました。

○踊りに乗じて馬加を斬る毛野。かろうじて三人で逃れたと思ったら、いきなり毛野を口説きまくる小文吾。俺は男だ! と胸はだけたときには素直に驚きました。しかしあの顔で女と思うなというのはやはり詐欺ではないかと思いますが、小文吾、男でもいいぐらい言えよ!<無茶言うな

○あっさりと合流した犬士たち。なんかいつの間にか仲間に入っていた道節ですが、玉梓に操られて出発直前の道節を襲う船虫。悪女というより可哀想な人だよなあ…。そして女でも全く容赦しない現八さんにキャラクターが出ていて楽しい。

○玉梓の支配から逃れるために腹を刺す船虫。全く、最後まで可哀想な目に遭うために出てきた人だった…正直、別に船虫でなくとも良かったと思いますが、「八犬伝に登場する敵方の女性=船虫」というイメージなのでしょうね。しかし道節と船虫というカップリングは(原作でも接点なかったし)意外ではありますが、他に女性とくっつけて面白い展開になりそうなのは復讐鬼の道節くらいでもあり、これはこれで面白いアレンジであったかと思います。

○籠山が浜路に対して「これは若くて美しい」と言ったときの菅野ちゃんの表情の変化が素敵。こうして見ると玉梓と対置されるのは浜路だったのかなあ。と、単身玉梓の秘密基地に乗り込んで浜路を救出する丶大法師。この人が一番役に立つ気がしてきた。その後もたった一人で蜘蛛忍者たちと大立ち回り。さすがだ!

○蜘蛛忍者たちと駆けつけた犬士たちの対決。ここで籠山と単身対決するのが信乃というのはどうなのかなあ。浜路を挟んでということでしょうが…。そして犬士として覚醒した嬉しさに空中大回転して突風を起こす親兵衛。さらに道節が追い打ちファイヤー。これは使える。

○絶対どこか別の国の軍隊としか思えない管領・公方連合軍の皆様に対して、遂に八人勢揃いして名乗る犬士たち。もうちょっと決めポーズとか欲しかったですが(それじゃヒーローものだ)やっぱり八人勢揃いは心躍るなあ…。そしてナントカ無双なみに攻めてくる人たち相手にどうするかと思ったら、親兵衛の風+道節の火の合体攻撃。この二人だけで滅茶苦茶強そうだ…

○しかしやっぱり多勢に無勢。そりゃあ八犬士が増えたくらいで戦況が覆せると思えないよなあ…原作では色々と作戦や計画を仕掛けて戦って勝ったから納得できたのですが…と、突然妙に強い敵が出てきたと思ったら、本作のアクション監督も務める坂口拓さんでした。

○里見義実を追いつめる玉梓と、そこに駆けつけた浜路と信乃の対決。通常の武器は効かない玉梓ですが、浜路の持つ八玉の数珠が輝き、それと呼応するように村雨丸の刀身にも輝きが…この辺りは素直に美しいシーンでした。そして玉梓もバッサリですが…これで玉梓の恨みも浄化できるの?

○と思いきや、富山(?)で倒れ伏した玉梓の前に伏姫が。玉梓に対する伏姫の優しい心が、玉梓の心をときほぐしたか、ようやく玉梓も成仏。「何やら疲れた」という玉梓の台詞が印象的でありました。正直、碧也ぴんく先生の「八犬伝」とほとんど同じオチではあるのですが、まあこれはこれでよしとしましょう。しかしこれ、玉梓が調子に乗って里見城に乗り込んでこなければ確実に里見は滅んでましたな

○信乃が、里見義実がテーマっぽいことを言い出す。玉梓でなくとも綺麗事をと言うかもしれませんが、まあいいんじゃないですかね。綺麗事が綺麗事でなく成立したのが原作の世界と言えなくもないですし…ただ、道節が復讐をあきらめたのは、ちょっと唐突感あったかなあ。

○そして主人公カップルの婚礼でめでたしめでたし。何だかお人形さんみたいで微笑ましい二人ですが、個人的にはそれ以上に荘助とぬいさんの律儀者カップルの方に目が行きましたよ。

 といったところでしょうか。八犬士それぞれについても述べておけば

犬塚信乃(滝沢秀明):可もなし不可もなし、というところで。過ぎるくらいの甘いキャラクターは似合っていたとは思います。
犬川荘助(佐藤隆太):全身からお人好しオーラが感じられて良かったかと。ぬいさんとお幸せに<これは意外なカップリング
犬山道節(小澤征悦):原作ではもう少し線の細いイメージがありましたが、これはこれで良し。船虫との関係については上にも書きましたが、色々な意味で面白かったと思います。
犬飼現八(押尾学):なかなかいいキャラクターだったなあ…我が道行くバカという感じで素敵。いや、現八のことですよ。
犬田小文吾(照英):いつもの照英さんでした。これはこれで良し
犬坂毛野(山田優):山田優さん自体は素敵ですが、やはり毛野とは少し違うような…あと、腰の入っていないチャンバラは本当に勘弁していただきたい。動ける女優さんの方が少ないですが…
犬村大角(勝地涼):雛衣が出ないのでキャラはちょっと薄かったですが、知識バカのオーラが漂っていて素敵。チャンバラは毛野の次くらいにヤバイ感じでしたが
犬江親兵衛(山下翔央):こちらも可もなし不可もなし。原作から一番キャラが変わっていますが、原作では無敵キャラ過ぎるのでまあ仕方がないですか。


 以上、ずいぶんと長くなってしまいましたが、「里見八犬伝」の感想でありました。
 前編後編通しての感想としては、なかなか良かったのではないのかな、というところでしょうか。八犬伝と聞いてこちらが思い浮かべる有名どころのシーンはほとんど押さえられていましたし、わずか四時間弱のTVドラマという制約の中で、うまくまとめて見せた、という印象です。
 船虫のキャラように、やりたいことはわかるけれども、うーん…という部分もありましたが、総じて致命的な「やってもうた」感がなかったのが大きいかもしれません。
 もの凄く面白い! 大傑作! という作品では正直ありませんが、正月休みに家族全員でのんびりと肩の力を抜いて見る分には良いドラマだったと素直に思います。


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2006.01.09

八犬伝特集その四 TVドラマ「里見八犬伝」前編

 八犬伝特集第四回は、ようやくまとまった時間が作れたので、ビデオに撮っておいたTBSのTVドラマ「里見八犬伝」。この特集のきっかけとなった作品です。前後編で約四時間前後の大作ということで、今回はまず前編のみで。
 前編では、原作で言えば玉梓と里見家の因縁・伏姫の自害・一連の信乃のエピソード・道節の火定・芳流閣の決闘・荘助の刑場破り・道節の管領暗殺失敗の辺りまで。以下、ざっと感想を。

○全ての発端となる玉梓の事件。原作よりも一世代後に設定されており、伏姫の悲劇とほぼ同じ時期の出来事となっています(つまり玉梓と伏姫はほぼ同世代。二人を対比させるのであれば、まあアリの改変でしょう)

○しかし何だか不思議なのは、八房のやの字も登場しないこと。ネガティブな意味で「犬」を使うというのは、まだわからないでもないですが、そうすると主人公たちが犬士と呼ばれるのはどうなのでしょう。人畜婚姻譚が何かまずかったのでしょうか。

○無駄にガチっぽいイヤらしさを醸し出す泉ピン子。非常にはまっているのですが、TBS臭さ全開のキャスティングですな

○寂寞道人(道節)の火定シーンは合成もなかなかうまくいって迫力あるシーンに。

○左母二郎にバッサリやられる間もなく道節に助けられる浜路。しかし浜路、いくら助けてくれたとはいえ初対面の相手に村雨丸預けちゃいかんよ

○左母二郎あっさり退場…と思ったら何か変な感じになって左母二郎復活! 勝手に崖から落ちた浜路(…)に気を取られた道節の肩から現れた玉をくらって今度こそ退場しますが、田辺誠一がいい具合に色悪的キャラを演じていて良かったですね。

○村雨丸を届けに来た信乃の前に現れた足利成氏を演じるは、角川映画「里見八犬伝」で信乃を演じた京本政樹。面白い因縁ですし、ヒステリックな成氏のキャラにも似合っています。

○あれ、古河の御所に陣内孝則と勝地涼がいるように見える…と思ったら赤岩一角と大角でした。この辺り、設定が相当変わっている様子(というか、ここで大角が出ないと前編で八犬士全員が顔見せできなかったことがラストまで見てわかりました)

○何というか微妙なアジアンテイスト漂う芳流閣。うーん油断できんな室町文化。そして大暴れする信乃ですが、もうアクションがアクロバティックすぎ&飛びすぎ。さすがは牛若丸だ(違

○悪の秘密基地っぽいところで悪の幹部っぽいことを言う玉梓。おお、菅野ちゃん頑張りました両肩脱ぎ。胸には蜘蛛っぽい印章。今作の玉梓のイメージは蜘蛛なのですね。

○小文吾の実家・古那屋で犬士たちに因縁を語る丶大法師。「その牡丹の花は里見の紋章…」ってそうだったでしたか? 「安房は未だ日の光が差すことなく…」って、さすがに滅びますよ物理的に、とつまらない突っ込みを入れたくなりました。

○しかしぬいさんいい女だ…機転が利くし可愛いし。原作での古那屋の下りは歌舞伎チックな展開で好きなのですが、こちらでは一切なり。残念ですが、ぬいさんが生きてるからまあいいか<そうか?

○里見義実と丶大法師が久々の対面をしているところで突然樹から樹へ飛び移る忍者チックな刺客が…と思ったら何と犬江親兵衛。山下定包の家臣が父だったそうですが…古那屋の下りがオミットされたためにこの子が一番設定変わったんですなあ。そして丶大捨て身の説得にあっさり籠絡される親兵衛。素直な子だ…

○荘助のところに向かう途中で毛野の一座に出逢った信乃一行。ああっ、浜路がいる! ほとんど不死身の浜路ですが、信乃ともの凄いすれ違いっぷりに何故だか微笑ましい気分に。

○荘助が簸上宮六に刃を向けるのが、虐待されていた庄屋夫婦の仇討ちではなく浜路を守るためというのは、今の人間の感情からするとわかりやすくてなかなかいいアレンジではないかと思います。しかし渡辺いっけいさんはいい芝居するなあ

○道節の前に現れる船虫。顔見知りだったのかこの二人…って姨雪代四郎の娘って設定なのか! 今回のドラマ化で一番驚いた改変かもしれません。しかしその後で船虫を襲う悲劇は、ファンタジーものから一転バイオレンスものになってしまったようで後味悪かったですね。

○そして単身管領を襲う道節ですが、原作通り失敗。そして彼の前に立ち塞がる籠山逸東太がTUEEEEEEE! さすがはハンガーヌンチャクの使い手(違。にしても武田鉄矢悪人顔になったなあ

○「名もなき通りすがりのただの坊主」(ってすごい念の入った部外者のふりだ)丶大の助っ人でその場を逃れる道節ですが、冷静に考えれば火を操る人が村雨丸を持つのはやはり相性がよくないのでは…。しかし村雨丸は振るう度に水しぶきがあがりまくっていて、一歩間違えればギャグですがなかなか面白い映像表現だったと思います。

○蜘蛛から忍者を生み出す玉梓様。ますます悪の女幹部みたいだ。この忍者たち、外からでは全く目や表情が見えないところといい、非人間的な動きの構えといい、化け物めいていてなかなかよろしい。…しかし、ライオン丸とか出てきても違和感ない世界になってきました。

○そして毛野の奮闘虚しく怪忍者たちに奪われた浜路…いや浜路姫。彼女を求めて四犬士は走る…というところで後編へ


 と、色々と突っ込みはいれましたが前編までの段階では、予想していたよりもなかなかよくできていたと思います。ちゃんと前編中に(覚醒していない者・仲間入りしていない者も含めて)八犬士全員登場しましたしね。
 原作にある有名なシーンもイメージを崩さない程度のアレンジでビジュアライズされていましたし、八房が全く無視されたのを除けば、それなりにきちんと「里見八犬伝」していたのではないかと思います。
 ただ、(あまりこういうことは書きたくないのですが)浜路のキャラクターはもう少しどうにかならなかったのかしら…典型的な足手まといのお姫様ヒロインすぎて、何か深い意図があるのかとすら考えてしまいましたよ。

 何はともあれ、後編も楽しみに見ることが出来そうです。


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2006.01.08

「手習重兵衛 暁闇」 夜明け前が一番暗い?


 手習重兵衛シリーズの第三作は、いよいよシリーズの本筋、重兵衛自身の物語。
 重兵衛が国元を出奔する事件の際に、心ならずも斬ることとなってしまった親友の弟にして天才少年剣士・松山輔之進が登場、重兵衛に迫ります。更に密命を帯びて重兵衛の元に向かっていた彼の弟が何者かに惨殺されるという悲劇までもが起こり、更に目に見えない刺客たちまでもが重兵衛を狙って蠢き出すというピンチに次ぐピンチの展開です。

 それでも物語が重くなりすぎずに楽しむことができるのは、重兵衛を取り巻く人々の存在あってこそ。重兵衛の頼もしい友人である左馬助と惣三郎、重兵衛の住む白金村の人々、そして何よりも、重兵衛の手習所の生徒たち――自分の過去の罪と向き合わされ、肉親をも失った重兵衛にとって、彼らの存在がどれだけ大きいかは想像に難くありません。

 そして、その苦闘の果てに重兵衛が掴んだ真実は、驚くべきものでありました。重兵衛が国元で着せられた公金横領の濡れ衣については、よくあるパターンではありますが、親友殺しについても、ちょっと驚かされるどんでん返しが(正直、物理的に可能かなあ、という気もしますが、まあ面白いし有り難いのでアリでしょう)。

 夜明け前が一番暗いという言葉もあるように、苦境の先で明るい光が差してきた重兵衛の人生。しかし、濡れ衣を晴らした重兵衛は、あれだけ親しんできた白金村から離れて侍に戻ってしまうのか。そして本当にこれで全ての悪が滅んだのか? 嬉しい中にも悩みの種を残して、シリーズは後半戦に入るのでした。


「手習重兵衛 暁闇」(鈴木英治 中公文庫) Amazon bk1


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2006.01.07

「大帝の剣」の勢力分布をまとめてみましたよ

 やはり時代伝奇ファンにとって、今年(来年?)気になるのは「大帝の剣」の映画化だと思うのですが、異形列伝「大帝の剣」を載せるための下調べがてら、ノベルズ版第5巻までの勢力分布をまとめてみましたよ(ネタバレなのでご注意を)。

a)万源九郎
 一応主人公で三種の神器の一つを所有。蘭を目的地まで連れて行くことを請け負う。現在舞を連れた牡丹を追跡中
b)蘭(舞)
 豊臣秀頼の娘・舞の体内に入った宇宙生物。ある目的からユーラシア大陸に行こうとしている。才蔵のチョンボで現在蘭は休眠中。トラブルメーカー一号。
c)真田残党
 申と霧の才蔵の二人(その他お館さま)。申はお館さまに相談に行って別行動。才蔵は倒した黒鉄鬼の中の宇宙生物に取り憑かれて蘭を追跡?
d)破顔坊&土蜘蛛衆
 破顔坊は舞を追う伊賀忍び。土蜘蛛衆は破顔坊に依頼されて協力の怪忍軍団。江戸の服部半蔵や柳生にも極秘で行動中。
e)牡丹
 三種の神器全てを集めて魔王の力を得ることを狙う美青年(現在一つ所有)。実は天草四郎。現在舞を連れ、最後の神器のある飛騨玄覚寺に向かう。トラブルメーカー二号。
f)宮本武蔵
 牡丹を追跡中。牡丹を追ううちに源九郎・才蔵と衝突、さらに黒鉄鬼が登場したため共同戦線を張る。
g)柳生十兵衛
 天草四郎生存説を確認するため、武蔵を追跡中。才蔵の妨害工作にかかって現在見失い中。
h)宇宙からの追っ手たち
 蘭を宇宙から追ってきた宇宙生物たち。これまで権三・黒鉄鬼が登場。権三は源九郎に倒され、黒鉄鬼も源九郎・武蔵・才蔵に倒されたが中の宇宙生物が才蔵に取り憑いた。全部で五体いる?
i)海野六郎&三島以蔵
 黒鉄鬼と佐々木小次郎に山賊仲間を皆殺しにされた二人。黒鉄鬼を追っていたが、佐々木小次郎と対面。
j)佐々木小次郎
 武蔵に敗れた直後に宇宙生物に取り憑かれて26年後に再生した小次郎。武蔵を斃すため執拗に後を追う。中の宇宙生物はh)とは別もの?
k)外法僧祥雲
 玄覚寺で何かが起こることをひたすら待つ怪僧。三種の神器の秘密を知る?

 というわけで、ざっとまとめただけでもこんな感じ…というか逆に言うと5巻かけてこれくらいしか話が進んでいないといいましょうか。
 とりあえず物語の中心は二つ、牡丹で、つまり宇宙からの逃亡者/豊臣家の末裔追跡と、三種の神器争奪戦がこの物語の縦糸横糸と言えるでしょう。が、牡丹が源九郎にもd)の連中にもちょっかいを出しているため、蘭ルートの物語と牡丹ルートの物語がかなり近づきつつあります。どうも三種の神器とh)の連中の間にも関連ありそうですしね。

 まあ、時代伝奇に限らず、伝奇ものというのは複数の勢力・登場人物が入り乱れて大乱戦を展開している時がある意味一番面白いわけで、そういう意味ではこの「大帝の剣」は脂の乗りきっている時期にあると言えるかもしれません。
 また、拡散する一方に見えた物語も、こうしてまとめてみると、ゆるやかながらいい具合に収束しつつある面もあって、なかなか面白いですね。

しかしこのような状態で映画はどこまでやるんでしょう、と思っていましたら、ここの記事を見るに映画はノベルズ第1巻がベースらしいんですが…
 第1巻時点の登場勢力は、a) b) c) d) e) h)のみ。牡丹、ちゃんと活躍(登場)できるのかしら?

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2006.01.06

「武蔵伝 異説剣豪伝奇」 石川賢流チャンバラアクション全開


 「コミック乱ツインズ」誌で昨年から連載開始された石川賢の最新作の単行本第1巻が昨年末発売されました。宮本武蔵「たち」と江戸柳生の総力戦を描いた伝奇時代活劇であります。

 既に本誌連載開始時にも採り上げましたが、何と言っても天下の宮本武蔵がぞろぞろと10人余りも登場してしまうのが愉快な本作、一応(?)武蔵らしいイメージの二人の武蔵、新免武蔵と義経武蔵はともかく、それ以外の武蔵は坊主はいるわ爺はいるわ、はては美少女までいるわといい意味でムチャクチャです。
 武蔵複数説というのは伝奇ものの世界ではさほど珍しくない話ですが、それをここまでブッ飛ばしたものにしてしまうのはさすがは石川賢。しかし考えてみれば情報メディアなどというものがほとんど未発達だったこの時代、ただでさえ素性の怪しい宮本武蔵という剣士の名を名乗っていた輩は山といたと思いますし、そういう意味ではずいぶんリアリティがあると言ってもいいかもしれません。

 さてこの作品、本のオビでは「超伝奇剣戟活劇」と謳っていますが、石川賢作品にしては伝奇度は薄め。(いまのところ)魔界も怪物も巨大ロボットも出てきません。それどころか人情話的なものもあったりするのですが、しかしそれで面白くないかといえば勿論答えはNo。
 技巧派というよりどう考えてもパワーファイターの印象が強い宮本武蔵ですが、そのイメージそのままの豪快無比な武蔵のチャンバラがこれでもかと満載、やはりアクション(特に大乱戦)を描かせたら屈指の作者の作品だけあって、理屈抜きのチャンバラアクション活劇となっています。

 また、バイオレンスものでありながらカラッと脳天気なまでに豪快な主人公が多い石川作品ですが、本作の新免武蔵もまさしくその系譜の快男児。特に、この武蔵、豪快なだけでなくどこかすっとぼけた可愛げのある人物に描かれていて、どうにも血腥くならざるを得ない物語の印象を和らげていると言えます。

 なお、この第1巻に収録されているのは第7話、武蔵たちが宿場町の罠を乗り越えて、箱根関に入ったところまで。最新号では武蔵といえば…のあの人まで復活(?)、果たして物語自体がどこに向かっているか謎だらけで、先が気になる作品であることは間違いありません。


「武蔵伝 異説剣豪伝奇」第1巻(石川賢&ダイナミックプロ リイド社SPコミックス) Amazon bk1

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2006.01.05

病床で「日本妖怪大事典」を読むこと


 なんだかんだで毎日blogの更新はしていますが、昨年末から高熱が続き、年末年始の結構な時間を床の中で過ごしています。といっても睡眠を取るのも限界があるので本など読んでいるわけですが、徒然を慰めるのに存外役に立ったのが村上健司氏の「日本妖怪大事典」(病気の時にそんなの読むなよ、というのはまあ置いておくとして)。
 私は昔から事典の類が大好きで、小さな項目が集まっていることからちょっとした時間に少しずつ読むことが出来るのがその理由の一つだったりするのですが、まさにそういう意味では病床で目を通すにはうってつけの一冊でありました。

 この本、氏が以前毎日新聞社から出された「妖怪事典」のマイナーチェンジ版というべき本で、全ての項目を比べたわけではありませんが、ほぼこちらの方の記述がそのまま掲載されているように思います(むしろこちらの方に掲載されている日本各地での怪異の呼称等の民俗学的項目が「日本妖怪大事典」では省かれている分、項目数は減っているかもしれません)。
 そういう意味では、妖怪ファン・マニア(私もその一人ですが)でもない限り両方買う必要はないように思いますが、こちらの大事典のウリは水木しげる先生のイラストが入っていること。水木しげる先生の妖怪本こそ、それこそ山のように出ているわけでさほどのアドバンテージにならないように思えるかもしれませんが、村上氏の簡明ながら押さえるべき所をしっかり押さえた解説と、水木イラストが組み合わさった時の相乗効果は、想像以上に大きく、大袈裟に言えば、人間のビジュアライゼーション能力の大きさというものをつくづくと感じさせられた次第です。

 と、もう一つ感心したのは(これは「妖怪事典」にも共通することですが)、村上氏が、個々の項目で出典を明記し、その伝承の根拠・起源の有無を明確にしていること。
 妖怪ファン・マニアであればよく知っていることですが、この世界、想像以上にフィクションの(そもそも想像の産物にフィクションという言葉を使うのも如何なものか、という気はしますが、要するに伝承・伝説等に根拠がない、後世の書き手の筆先の産物という意味と考えて下さい)妖怪、いわゆる捏造妖怪が多いのですが、それをきちんと指摘し、明示しているのは、妖怪本としてはコロンブスの卵的アプローチではないかと思います。
 考えてみれば、妖怪絵師の神様的存在の鳥山石燕先生であっても、相当数妖怪を創作しているわけで、その辺りを一度はっきりとさせておくことは、やはり意味のあることではないかと思うのです。

 この「日本妖怪大事典」、内容的には(項目数の多寡はあれ)ほぼ同一のものでありながら「妖怪事典」よりも千円以上定価が安いこともあり、濃いファン・マニアの方はさておき、ちょっと詳しめの妖怪解説/概説本をお探しの向きいは、一度手にとってもらいたいものです。


「日本妖怪大事典」(村上健司 角川書店) Amazon bk1

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2006.01.04

「新選組!! 土方歳三最期の一日」に泣かされました

 昨日は「新選組!! 土方歳三最期の一日」を見ましたが、いや泣いた泣いた。
 半日近く大河ドラマの総集編を流した上での「土方歳三最期の一日」、いやが上にも期待が高まりましたが、いやはやその期待に応える快作であったと思います。以下、感想をざっと。

○冒頭にいつもの主題歌は流れず。炎をバックに立つぼろぼろになった隊旗を見ただけで涙腺が…

○初登場の鉄之助、ずいぶん可愛らしいです。「組!」にも出ていたら面白かったかもしれないですね。というか、あの「鉄人28号」の可愛くなかった正太郎とは同一人物とは思えず。

○「組!」とはキャストが変更になった榎本総裁。どんな人物に描かれるか期待していましたが、なるほど、才子肌でありながらカリスマ性のある「ろまんち」であり、またいざという時の気迫は土方にも負けないという、実に魅力的な人物に描かれていて感心しました。片岡愛之助氏の江戸弁の綺麗さにも感心。

○その一方で、登場シーン以降、ひたすら格好悪かった大鳥圭介。ああ、そういえば男らしい吹越さんて見たことなかったな…などと思っていたら、終盤でひっくり返されました。土方の奇策を聞いて雄々しく立ち上がり、それまでのわだかまりを捨てて共に戦いを挑む姿は本当に格好良かった。

○間違いなく本編のクライマックスの一つは、土方と榎本が、榎本の部屋で対峙するシーンでしょう。二人がひたすら己の主張をぶつける、会話のみで構成されたシーンなのに実にエキサイティングで、最後まで全く気を逸らされることなかったのはやはり素晴らしい。そしてその中で、妄執とすら言える土方の闘志の正体が浮き彫りにされていく様はとにかく圧巻でした。

○非常に熱い三人の握手シーンもあり、こりゃ本当に箱館軍勝っちゃうんじゃないか!? と感じさせられたのはやはり三谷マジックでしょうか。それだけにその後の敗戦シーンが本当に悔しく、切ない…(いや私、東北生まれの関東育ちなので尚更そう思うんですよ)。何よりも、近藤の死後初めて生きるために戦うことを決意した矢先の土方の死、というのがもう…

○島田・尾関、あとは会津シーンでの斎藤以外、ほとんどカメオ出演(だよな?)だったのが残念ですが、舞台を絞ったため仕方ないのでしょう。ネットなどで見ると賛否両論の近藤さん登場シーンですが、あそこで初めて最後の近藤さんの呼び掛けが土方に届いたと解釈すると、やはりあれはあれでよいのだと思います。少なくとも僕は大いに唸らされました。

○そして要所要所で実に味わい深い言葉を残す永井様役の佐藤B作氏。「組!」の頃から、本当にこういう配役はうまいと思います。「ごめんなさいでいいじゃないか」の言葉に涙腺が決壊した人はきっと多いはず。

○ラスト、やはりここで流れるか! の主題歌をバックに、遠く多摩へ向けて原野を駆けていく鉄之助の姿。「組!」の最終回同様、悲劇の結末であるのに、不思議と爽やかで、どこか希望すら感じさせる、美しいラストであったと思います。


 というわけで、個人的には非常に満足のいくドラマでありました。確かに、箱館戦争だけでももっともっと見たいシーンはありましたし、箱館に至るまで、会津からの戦いの道程も見たいという気持ちはあります。また、箱館組以外のその後の姿も見たかったな、とは感じますが、わずか90分弱という限られた時間の中では、ほぼベストの内容であったと思います。
 大河ドラマの続編としても、単発の歴史ドラマとしても、見事に成立している一種神業めいた作品であったかと思います。
 新年早々、いいものを見せていただきました!


 あ…「!」の数が一個増えてたのか…<気づくの遅いよ。


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2006.01.03

「天下騒乱 徳川三代の陰謀」を観ましたよ

 昨日放映された新春ワイド時代劇「天下騒乱 徳川三代の陰謀」。さすがに10時間フルには見ることは出来ず、後半を重点的に見ることになりましたが、原作小説(こちらもいずれ紹介したいと思います)と比較したりしつつ感想をざっと書きたいと思います。

○キャスティングはほぼ納得の顔ぶれ。特に渋いオヤジ陣最高(蜂須賀蓬庵のあまりの悪役ヅラには苦笑しましたが)。あらかじめキャスティングをほとんどチェックしていなかったので、新しい人物が登場するたびに驚いていましたよ(笑)。一番心配だったのは柳生十兵衛役の中村獅童だったのですが、いや、良い意味で青臭い熱血漢ぶりだったと思います。すっかり貫禄の増した村上弘明も、ある意味剣の超人と言える本作の荒木又右衛門像にピッタリでありました。

○原作と大きく異なる点は、柳生一族の絡み方…というか十兵衛の出番の多さ。原作では土井利勝と荒木又右衛門の二人が主人公格でしたが、ドラマでは十兵衛がもう一人の主人公として活躍。正直、無理矢理出番を増やしていた感がなきにしもあらずですが、しかし、大義のためにあえて悪となる、あるいは己を滅することのできる「よくできた」人間と対比される存在として、十兵衛のキャラクターは面白い立ち位置だったと思います。

○また、対比という点で原作よりも強調して描かれていたのは、鍵屋の辻の決闘に挑む男たちの陰に在った女性たちの存在。鍵屋の辻で甚左衛門・半兵衛・又五郎と河合側が一人ずつ散っていく場面は、まあ、演出的にちょっとくどいかな、という気もしましたが、大義の陰で、ごくごく普通の幸せを求めつつも涙にくれるしかなかった一般人の姿を描くという意味ではそれなりに納得できるものがありました。しかし毒男は用無しね、この世界('A`)

○その鍵屋の辻での決闘シーンは、通常の(?)鍵屋の辻では槍を持つまでもなく討たれてしまう桜井半兵衛が、しっかりと槍を手にして又右衛門とガチバトルを展開してくれたのが面白かった。半兵衛役の榎木孝明の渋さもあって、霞の半兵衛の名乗りシーンはかなり燃えました。そしてまた、渡辺数馬と河合又五郎の決闘は、「ヘタクソ同士が刀を振り回して本人たちは必死だけど端から見るともうグダグダの殺し合い」という状態を、うまく描き出していたと思います。

○そういえばこのドラマでは河合又五郎がかなり良い(おいしい)キャラクターとして描かれていたのが印象的でありました。己の短慮から多くの人々を巻き込んだとはいえ、あくまでもごく普通の、心優しい若者として又五郎が描かれていたのは、なかなかユニークでした(歌舞伎や講談だと単なる恩知らずの卑怯者だし、その他のメディアでも横恋慕のホモ野郎だったりするからな、又五郎)

○そうそう、原作と一番大きく異なっていたのは、この騒動を利用して家光を廃し、徳川忠長を将軍につけようとしたお江与の方・天海僧正の陰謀の存在なわけですが、あまりに杜撰な陰謀で本筋から浮きまくっていたというのはまあ置いておくとして、なかなか面白い切り口だと個人的には感心しました。大名方と旗本方が、共に大局を考えずに己の立場を押し通さんとしたばかりに天下騒乱の火種が生まれるというのが原作の展開ですが、ここではそれを一歩押し進めて、その火種を己のために自覚的に利用しようとした勢力が描かれたわけで、原作の設定を活かしたなかなか面白いifだったかと思います。

○ただ一つ、どうにかして欲しかったのは鍵屋の辻の決闘が終わってからもなお一時間ほど話がダラダラと続いてしまうことで、しかもその締めくくりが徳川一家のホームドラマで終わってしまうのが何とも残念でありました。

○というわけで、原作もののドラマでは毎度毎度の感想となりますが、原作の生真面目なファンの方はともかくとして、TV時代劇ファンとしてはかなり楽しめるドラマになっていたかと思います。原作からの脚色も、上記の通りまあ納得(理解)できる範囲のものでありましたし、「正しいTV時代劇」をおなか一杯楽しむことができました。


 と、ここから先はまた台無しの感想。
○林隆三演じる河合甚左衛門を慕うのが加藤夏希というのは幾ら何でもあんまりだと思いました。幾つ年の差があると思っているのですか! 「早春物語」の頃から林隆三は許せん。
○サトエリはこの手のくノ一を演じさせたら日本一なのではないかと思います。絵に描いたような「主人公に仕えるけど衝突してばかりででも本当は主人公ラヴなくノ一」っぷりに感動しました。

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2006.01.02

「寛永御前試合」 これぞ夢のオールスター戦

 お正月らしくなんぞ賑やかなお話を…と考えていて思い出したのが「寛永御前試合」。時は寛永15年8月15,16日(この辺は諸説ありますがこの本ではこういう設定ということで)、江戸城吹上御苑で開催された武術者・武芸者のオールスター大決戦であります。

 とにかくこの御前試合、顔ぶれがもの凄い。

竹内加賀之助(真揚流柔術)   vs 渋川伴五郎(渋川流柔術)
山田真龍軒(山田流鎖鎌)    vs 井伊直人(柳生新陰流)・井伊貞女(薙刀)
吉岡又三郎兼房(吉岡流小太刀) vs 毛利玄達(毛利流手裏剣術)
日置民部(日置流弓術)     vs 鷲津七兵衛(鹿島神道流棒術)
大久保彦左衛門         vs 加賀爪甲斐守
荒木又右衛門(柳生新陰流)   vs 宮本無三四(新免二刀流)
浅山一伝斎(一伝流)      vs 伊庭如水軒(心形刀流)
山田伴山(鎖鎌)        vs 土子土呂之助(一羽流)
樋口十三郎(馬庭念流・磯端流) vs 穴沢主殿助(鹿島神道流棒術)
曲垣平九郎(曲垣流馬術)    vs 和佐大八郎(弓術)
羽賀井一心斎          vs 磯端伴蔵(磯端流)
柳生飛騨守(柳生新陰流)    vs 由井民部之助

 メジャーどころマイナーどころ(といっても現在から見て、ということですが)取り混ぜて、空想にしてもよくもまあこれだけのメンバーを…と感心してしまうオールスターキャスト。
 ちなみにこれはまだ良い方(?)で、立川文庫版の「寛永御前試合」ではこれをさらに上回る時代年代無視のドリームマッチで、読んでいて大いに興奮&呆れた記憶があります。

 何はともあれ、一流の達人二人を並べて、さあどっちが強い!? とやりたくなるのはある意味人のサガでありまして、それを紙の上で実現させてしまう人間の想像力って素晴らしいと思います。
 駿河城で開催された御前試合は実に悲惨な結果に終わりましたが、こちらは(えらい政治的決着はあったものの)徳川の天下を言祝ぐめでたいイベント、まずは新年最初に紹介するにふさわしいお話かと。

 なお、寛永御前試合というイベント、色々と面白いネタの宝庫でありまして、前述の立川文庫版も含めて、また稿を改めて紹介したいと考えているところです。


「寛永御前試合」(講談社講談名作文庫)

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2006.01.01

あけましておめでとうございます

昨年は一年間いろいろなことがありました。面白い本、ゲーム、映画等々に巡り会うことができ、このblogも七ヵ月以上の間、毎日更新することができました。
今後ももちろん、毎日更新を目指しますが、実は昨年末より高熱を出してダウンしており、早くも挫折しかかっております(笑)。
何はともあれ、今年もよろしくお願いします。

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