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2006.01.25

「霧隠才蔵 決定版・真田十勇士」 決定版への第一歩?


 これまで故・峰隆一郎の「人斬り弥介」シリーズを書き継いできた宮里洸氏の最新作にして初のオリジナル作品は、霧隠才蔵を主人公にした時代伝奇活劇。徳川と豊臣の暗闘に巻き込まれた信濃忍者の一人・霧隠才蔵が、真田幸村の下に身を寄せ、関白秀次追い落としの卑劣な陰謀に立ち向かう、というストーリーです。

 豊臣秀次といえば、動物や人間をあやめることを好んだ殺生関白として悪名高き人物ではありますが、この作品での秀次は、民を慈しみ平和を愛する名君。その、本作での秀次像と、史上伝えられる秀次像のギャップを埋めるものとして、ある人物の非道な陰謀と性癖が描かれるのが面白いところ。
 豊臣秀次があまりにも正義の人に描かれすぎているきらいもありますが、しかし、秀次を本来であれば豊臣の命運を左右するはずであった名君として描き出しているのはなかなか斬新な視点かと思います。

 また、終盤、この秀次を挟んで、真田軍vs徳川・伊達連合軍の戦闘という展開になだれ込むのも驚かされたところ。一見無茶のようですが、史実との整合性もうまく処理できている点にも感心しましたし、石川賢チックな秘密兵器を片手に暴れまくる筧十蔵も実に格好良い。

 なお本作は、前半は忍者対忍者の死闘、後半は上記のような戦国大名同士の陰謀戦と、途中で物語のスケール感が大きく変わってくるのですが、その双方を貫く背骨として、戦国の世で力強く、人間的に生きようとする才蔵の姿があるおかげで、違和感なく物語を楽しむことができました。

 ただ、タイトルで決定版と銘打ちつつも、登場する十勇士は、霧隠才蔵と筧十蔵、それとおそらく少年時代の猿飛佐助の三人のみという点は非常に残念なところ。
 また、ページ数の関係か、登場人物たちが存分にその力と魅力を発揮していると言い難いのも、残念――というより勿体ない、という印象があります。

 もちろん、作者の頭の中には、十勇士が集結・活躍する、この先の物語が構想されているであろうことは、まず間違いないところ。いわばこの作品は、決定版への第一歩と言ったところではないかと感じます。
 私としても、これから秀吉の死、関ヶ原の戦を経て大坂の陣へと続く巨大な歴史の流れの中で、幸村と十勇士が、果たして如何に徳川に、伊達に戦いを挑んでいくのか、そして敵味方を問わず、登場人物たちがどのような生き様を見せてくれるのか大いに楽しみですし、また続編の刊行を大いに期待するところであります。


「霧隠才蔵 決定版・真田十勇士」(宮里洸 集英社文庫) Amazon bk1

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