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2006.01.30

「手習重兵衛 刃舞」 キャラ立ちの妙が生む楽しさと暖かさ


 手習重兵衛シリーズも後半戦、第4巻目である本作で描かれるのは、重兵衛と、前作に登場した剣鬼・遠藤恒之助との真っ向勝負。
 重兵衛に罪を着せ、また上司や弟を次々と憎むべき敵でありますが、恒之助の実力は重兵衛よりも遙かに上。心身ともに追いつめられた重兵衛は、新たに師について剣を磨き始めますが…というストーリー。

 言ってみれば二人の剣士の決闘を描いた非常にシンプルなお話なのですが、それでも全く退屈しないのが本作の凄いところ。クライマックスへの盛り上げ方や、剣戟描写が巧みなのはもちろんなのですが、それ以上に登場キャラクターの描写が実にいいのです。
 かねてから個性的な人物が登場――というよりむしろ登場人物の個性を浮き彫りにするのが非常にうまい――シリーズであり作者ではありますが、本作で新登場するキャラクターたちも実にキャラ立ちが見事なのです。

 まず、重兵衛に「人を殺すための剣」を教える師となる長坂角右衛門。実に物騒なことを教える師匠で、一体どんな人斬りが出てくるかと思いきや、出てきたのは子沢山子煩悩で、浮気性の妻に頭が上がらない男という何とも意外な人物。もちろん腕前の方はただ者ではない冴えを持ち、何やら訳ありの人物なのですが、およそ殺人剣の遣い手とは思えない造形で、いい意味ではぐらかされた気分です。
 また、重兵衛の許嫁・吉乃とその世話役のお以知のコンビも賑やかかつ愉快なキャラクター。吉乃は美しいは美しいが気が強く、腕前も男勝り、でも家事は苦手…というより周囲に被害甚大という、こう書くとまた実にステロタイプに見えるキャラなのですが、しかし手習所の子供たちやヒロインの飼い犬・うさ吉とムキになって張り合うところなど、本人が意図していないであろう可愛げがあったりして実に楽しい。そしてさらにそこに、主人に対し全く容赦のないお以知のぼやきと突っ込みが入るので楽しさは尚更、であります。

 もちろんレギュラー陣も相変わらずの賑やかさ&暖かさで、重兵衛でなくともこの世界に居心地の良さを感じてしまうほど。憎むべき剣鬼である恒之助にしても、弱い重兵衛を倒しても仕方がないと、重兵衛の修行が終わるまで待ってやるという、(ライバルキャラとしてはままあることではありますが)一種の人の良さを見せてくれて、いやはや全くもって油断ができません。

 そしてラストの決闘で遂に恒之助を退けた重兵衛。しかしながら、一連の事件の背後で暗躍する忍者集団は未だ健在、まだまだ重兵衛に平和な暮らしが訪れるのは先になりそう…というわけで、物語は第5巻に続くのでありました。


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