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2006.02.28

八犬伝特集その十の二 「聖八犬伝 巻之二 芳流閣の決闘」


 八犬伝特集その十の続き、「聖八犬伝」の第2巻です。前巻は終盤に信乃が登場した他は、八犬士は登場しませんでしたが、今回は信乃・荘助・道節・現八・小文吾そして親兵衛と一挙に六人の犬士が登場します。

 前巻同様、基本的な「八犬伝イベント」は押さえているこの作品、今回は浜地くどきから副題にもなっている芳流閣の決闘、小文吾と房八の確執のくだりなどが再現されていますが、その一方でこちらも前巻同様、関東騒乱の様子も平行して描かれます。
 今回描かれるのは、関東管領・山内上杉氏の家宰・長尾氏の跡目争いをきっかけとした長尾景春の乱。古河公方を後ろ盾にした長尾景春と、山内・扇谷の両上杉家の激突でありますが、そこに登場するのがかの太田道灌、そしてこの道灌が、乱世の梟雄とも言うべき一癖も二癖もある人物に描かれているのが面白いところです。

 そしてまた――設定上、この長尾景春の乱と関係する八犬士が、犬山道節。犬山家は、景春方についた豊島泰経・練馬平左衛門に仕える家柄ですが、この乱によって豊島家が滅ぼされたことにより浪々の身となります。
 と、この辺りは原作とさほど変わりはありませんが、面白いのは犬山家と道節の設定が大きくアレンジされているところ。犬山家は代々練馬家の下に仕えて不思議な術を操る方士の家系であり、道節はその嫡男でありながら、何故か妖術を操れぬおちこぼれで、そのため家を離れて関東を駆けめぐる間諜として暮らす、という設定といなっています。基本的に設定自体は原典とさほど変わらない八犬士たちの中で、今のところ唯一道節だけが大きく設定を異にしているのが面白いところです。

 また、感心したのは、どんなヴァージョンの八犬伝でも必ずと言っていいほど登場する色悪・網乾左母二郎が、都から流れてきた青侍という設定になっていたこと。
 「南総里見八犬伝」において、室町時代の関東に、左母二郎のような江戸時代の素浪人姿の浪人がいて、しかも近隣の女性に遊芸を教えているというのは、さすがにいかがなものかなあと、その辺にはかなり無頓着な私も思ったりしたものですが、その辺りのナニをうまく解消しつつ、左母二郎のキャラクターを立てているのはなかなかうまい手だと思った次第です。

 そして物語自体も、きっちりと当時の史実を追う一方で、太田道灌に仕える謎の忍び・風魔や、水の妖術を操る怪しの男など、伝奇的なキャラクターも次々登場してファンタジックな色彩も強まっていきます。違和感なく史実と虚構を共存させる、この辺りのバランス取りはなかなか難しいのではないかと思いますが、今のところその試みは成功しているのではないかと思います。
 なお、これまで触れてきませんでしたが、本作においては伏姫の八玉に浮かぶのは仁義礼智忠信孝悌の文字ではなく、オン阿味羅ウンキャ左洛の八字真言に変更されています。この世を調伏するという文殊菩薩の八字真言(調伏は六字真言だったような気もしますが、まあいいや)を持って生まれた八犬士たちの行く末がどうなりますか…楽しみです。


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