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2006.02.24

「松平蒼二郎無双剣 陰流・闇始末 流浪斬り」 そして新たなる旅へ


 復活した松平蒼二郎シリーズ第二弾が発売されました。前作で白河藩から死闘を続けた果てに江戸に帰り着いた蒼二郎は、修羅の道を離れた一人の華道人・花月庵蒼生として、西へ修行の旅に出ますが、その彼の前に現れたのは、白河松平家の継嗣である弟。謎の刺客に狙われているという弟の言葉も、既に松平家とは縁を切った身と、一度はすげなく振り切った蒼二郎ですが、しかし罪のない弟を害さんとする敵を見過ごすことはできず――と、再び剣を持って立ち上がる、という趣向。

 実は蒼二郎の弟が狙われる背後には、二人の父・松平定信が関わった、いわゆる尊号事件――光格天皇が実父・典仁親王に太上天皇の尊号を贈ろうとしたのに定信が待ったをかけた一件――が。この時の恨みを定信の一族を相手に晴らし、更には王政復古を狙って暗躍する一党を倒すために、蒼二郎は西に、京に向かうことになります。
 形上は、またもや蒼二郎が父の尻拭いをする形ではありますが、父の言いなりの暗殺行ではなく、己に関係のないことで命を狙われる弟への情と、道理に外れた主張を、力を持って通さんとする一党への怒りから、自発的に立ち上がるのがこれまでとは異なるところ。そしてまた蒼二郎が、あれほど憎んだ相手であっても、道理に外れたことはたとえ朝廷が相手でも毅然と跳ねつける父の態度に敬意を払う描写があるのも、また彼の心の変化・成長を示すものかもしれません。

 この「陰流・闇始末」、前巻も含めて考えてみるに、第一シリーズとも言うべき「陰流・闇仕置」全5巻が、いわゆる必殺もののテイストであったのに対し、時代ロードノベル路線で行くのかな、という印象。前巻から登場のはぐれ忍び・百舌丸との道中で見せるすっかりくつろいだ蒼二郎の姿は、前シリーズからはあまり想像できない――もちろんいい意味で――姿で、なかなか愉快でした。
 往年のTV時代劇をこよなく愛する作者のこと、本シリーズも前シリーズと同様、時代劇が最も熱かった時代の味わいを思い起こさせる快作となることを期待します(正直、もう少し文体のくどさがなくなれば…と思わないでもないのですが)。


 …にしても、百舌丸の蒼二郎ラヴっぷりはもの凄いものがあると感心しましたよ。


「松平蒼二郎無双剣 陰流・闇始末 流浪斬り」(牧秀彦 学研M文庫) Amazon bk1


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