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2006.02.09

「書院番殺法帖」 主役設定の妙が光る


 もうじきシリーズ第3巻が発売されるのにまだ第1巻すら紹介できていなかったので慌てて紹介。面白いのにどうもすみません。
 さて、本作はタイトルの通り幕府の書院番――若年寄の下で、城内警備・儀式の世話役・将軍の外出時の随従等に携わった役職――同心である加納左馬ノ助の活躍を描く痛快時代小説であります。

 時は天保の改革の直後、改革の中で経費削減のため多くの旗本が役を解かれた時代。ふとしたことから二ヶ月前に死んだはずの間宮林蔵の生存を知った左馬ノ助。林蔵を訪ねてその訳を尋ねた左馬ノ助ですが、林蔵は何者かに殺害され、左馬ノ助は林蔵の娘・お凛と共に林蔵殺害の犯人と、彼が生前探索していた事件の謎を追うことになります。やがて、役を解かれた旗本たちが、不穏な動きを見せていると知った左馬ノ助たちですが、その陰謀は薩摩、そして水戸にまで繋がり、果ては江戸城中にまで魔手が及ぶという大事件に…というストーリー。

 内容的にはかなり手堅い作品、という印象で、時代小説のツボをきちんきちんと押さえて丁寧に作られている作品と言えるでしょうか。陰謀あり、剣戟あり、恋愛ありと娯楽時代小説の要素をうまく盛り込み、また、キャラクター面でも、左馬ノ助を助ける仲間たちとして島田虎之助や勝麟太郎が、更に物語の重要な鍵を握る人物として調所広郷や藤田東湖も登場し、史実虚実織り交ぜてバラエティに富んだ顔ぶれとなっています。

 しかし何よりも感心したのは、主人公を書院番という役職に設定したこと。書院番という役職自体は、もちろん私も知っていましたが、その書院番が逮捕権を持って市中見回りを行い、また遠国調査で遠く旅に出ることもあったというのは、恥ずかしながら初めて知りました。つまり、その気になれば、江戸城内から江戸市内、はたまた江戸を離れて遠国までと、自由かつ自然に舞台を設定し、主人公を活躍させることができるわけで、これは作者の着眼点の勝利と言えるでしょう。

 しかしながら左馬ノ助の冒険はまだ始まったばかり。シリーズ第2巻では、左馬ノ助の前に意外な人物が次々登場するのですが…そちらの紹介はまた後日。


 と、今気づいたけどここの名前はやっぱりミスなのでしょうなあ…自分が間違えたかと思ってちょっと焦ったよ。


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コメント

あらあ、佐々木錠之介って誰でしょう?こんな人、出した覚え無いぞ。(笑)面倒だから、次に出しますかね。

投稿: えとう乱星 | 2006.02.10 21:56

うはは、作者も知らない謎の主人公!
面倒だからって…(笑)

投稿: 三田主水 | 2006.02.12 20:11

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