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2006.02.21

「花の十郎太」 赤槍天狗純情記


 文武に優れながらも自らの巨大な鼻にコンプレックスを持った勇士が、美しい姫に恋いこがれつつも、姫の恋を成就させるために尽力する…と書くと、あれ、と思う方も多いと思いますが、「シラノ・ド・ベルジュラック」を日本の戦国時代に翻案した作品であります。
 が、単なる翻案には終わらない魅力を持っているのがこの作品。まさに柴錬ならではの美しい男の心意気というものを描ききった、熱くも哀しい名作となっております。

 主人公・修羅十郎太は、名家の出ながらこれを惜しげもなく捨てて戦国の世に旅立った快男児。赤槍を持たせれば天下無双、更に古今の典籍に通じた文武両道の士で、その気になれば一国一城の主も夢ではないという男ながら、これが極めつけのロマンチストというのが面白い。
 男の本懐は富でも名誉でもなく、美しい女性に恋することと広言してはばからず、ただひたすらに美女に出会うことを夢見て旅する彼ではありますが…悲しいかな、彼の鼻はあまりにも大きすぎるのでありました。
 そしてプラトニックな女性遍歴(?)の果てに出会った理想の女性・由香里姫は、かつて彼が救い出した少女が美しく成長した姿。これぞ運命の女性! と思いつつも、自分の鼻へのコンプレックスから素直になれない十郎太。そうこうしているうちに彼女は復従兄妹のの美青年・醍醐主馬に恋してしまうという…嗚呼。
 しかも姫の幸せを願う十郎太は、風流など解さない主馬に代わり、名前を偽って由香理姫に手紙を書き、送り続けるという…シラノだ、やっぱりシラノだ。

 しかしそこは柴錬作品、己の心根を貫くためであれば信長であろうと秀吉であろうと屈しない十郎太の剛胆な男ぶりは実に爽快でありますし、その十郎太が己の知勇で戦国の世を渡っていく部分の物語は、実に面白く、決して分量の少ない作品ではありませんが――他の柴錬作品同様――ラストまで全く飽きることなく一気に読み通すことができました。
 そして何よりも…終盤に見せる十郎太の男ぶりは天下一品、最後の最後まで自分の誇りと生き方を捨てなかった十郎太が物語の最後に残す言葉には、もう涙ナミダの他ありません。
 一環して無頼=ダンディズム=男の心意気を描いてきた、柴錬先生ならではの、見事な男ぶりでありました。

 …まあ、やっぱり人間素直にならないと自分も周囲も不幸にしますわね、と身も蓋もないことを感じないでもないですし、何よりもこんなblogを書いているような非モテの毒男が読むと過剰に感情移入して大変なことになりかねないので要注意だなとも思うのですが、その一方で、柴錬ファン、時代小説ファンはもちろんのこと、世の純愛ものファンにもこの作品を読んでもらったら楽しかろうなあと感じたのも正直な気持ちであります。

 それにしても柴錬先生、若さ故の未熟・暴走というものに対していつもながらに厳しいと思います(大抵ロクな目に合わないんですよね、青臭いダメ人間キャラは)。


「花の十郎太」(柴田錬三郎 集英社文庫) Amazon bk1

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