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2006.03.04

「山賊王」第8巻 深編笠の…


 少年漫画版「太平記」である「山賊王」の最新刊は、吉野での宮方軍と幕府軍の攻防戦。楠木正成の命で吉野に立て籠もる大塔宮の元に向かった主人公・樹長門は、そこで一徹な武士・村上義光と、その子・義隆と出逢いますが、そこに思わぬ悲劇の影が…という展開です。

 「太平記」で吉野で村上義光とくれば、太平記ファン(?)にとってはご存じでしょう、落城し落ち延びる大塔宮の身代わりとなって彼の鎧兜を身につけ、大軍を引き付けた末に、その前で立ち腹切って息絶えたという有名なエピソード(国枝史郎の「あさひの鎧」のクライマックスでもありますな)。
 そのエピソードは、本作「山賊王」のこの巻でも一番のクライマックス。義光の中に、今は亡き父の姿を見ていた長門にとって、義光の死は大きな痛手、それでもなお、その遺志を無駄にすまいと必死に大塔宮を護って落ち延びる彼ですが、悲劇はそれで終わらずなおも彼の前から仲間を奪い――というわけで、これまで正成の下に身を寄せてから、連戦連勝(まあ、千早城落城はありましたが)であった長門にとって、父の死以来の近しい人の死という展開で、今後の彼の心の動きが気になるところであります。

 が――個人的にそれ以上に気になったのは、本作があまりに善悪はっきりと分かたれすぎていること。これは連載開始当初から感じていたのですが、本作、悪くてバカな幕府軍vs知勇に優れた立派な宮方(悪党方)という構図が、どうにも目立ちます。この巻でも、吉野落城に繋がり、結果として村上義光を死に至らしめた裏切り者は、卑怯卑劣な男として描かれておりました。
 まあ、少年漫画の歴史ものとして、この手法もアリだとは思いますが、モノが「太平記」だけに、どうにも気になるというのが正直なところ。あの世界を善悪はっきりと分けるというのは、それはそれで一つの見方でありますが、果たしてそれで済ましていい題材なのかな、という気持ちが、個人的にはあります。
 この作品が、平成の御代に現れた、山田風太郎先生言うところの「深編笠の太平記読み」とは思いたくありませんが…


「山賊王」第8巻(沢田ひろふみ 講談社月刊少年マガジンKC) Amazon bk1


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