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2006.03.28

「豪談岩見重太郎」 内なる獣との訣別


 講談ヒーローの一人である岩見重太郎の半生を描いた「豪談」シリーズの一冊。
 本作は、元の講談から登場人物とシチュエーションを借り、あとは自由に物語を膨らませた「豪談」の中では珍しく、かなり原典(以前紹介したこちらを参照)に忠実な内容――すなわち、武術の達人岩見重太郎が、父の仇・広瀬軍蔵、そして妹の仇・高野彌平次を追って旅をし、後藤又兵衛・塙団右衛門の両豪傑と交誼を結び、首尾良く仇たちを討ち取る――となっています。

 そうした中で、本作ならではのアレンジとして、「己の中の獣の克服」が中核となるテーマとして描かれているのが目を引くところ。人並み優れた力を持ちながらも、己の心の中の凶暴性――獣により、過剰に力を振るってしまう業を持った重太郎が、如何にしてその獣を静め、人として力を正しく使うか、という一種の成長譚として構築されており、その角度から狒狒退治や両豪傑との出会いが描かれているのが面白いところです。
 考えてみれば永井豪作品のキャラクターには、己の中に獣=暴力性を抱える者も多く――時にはその力の前に本当に獣になってしまったりする者もいて――そんな作者の作品だからこその、このアプローチと言えるでしょう。

 そしてついに己の中の獣と訣別し、人として剣を振るうことを知った重太郎が、爽やかな心境で迎える天橋立での三千人を向こうに回しての決闘は、永井豪、ダイナミックプロならではの屍山血河の大殺陣。そしてその果てに広瀬軍蔵を追いつめた重太郎が、
「待ったぞ! この日がくるのを…どれほど待ったことか! 父…母の…兄の…そして妹の! 恨み!! 今こそ晴らしてやる!!」
という爽やかさ皆無の台詞とともに、情念溢れる素晴らしく永井豪キャラな表情で軍蔵をブッたぎる様を見たら、色々な意味で「ああやっぱりこうでなくちゃ」と思ったりしてしまってちょっと反省。
 でも本当、デビルマンに変身しそうなくらいイイ表情なんだこれが…


「豪談岩見重太郎」(永井豪 リイド文庫「豪談猿飛佐助」収録ほか) Amazon bk1


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