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2006.03.01

「後藤又兵衛」 個人の生き方としての武士道

 大坂の陣において、真田幸村と並んで大活躍したと言われる豪傑・後藤又兵衛の半生を描いた本作。
 朝鮮での虎退治や名槍・日本号を呑み取るエピソードから、自分のみならず息子まで辱めんとする暗君・黒田長政を見限って出奔し、乞食同然の暮らしを送りながらも、大坂の陣が始まらんとしたとき、颯爽とした武者ぶりで大坂城に入場するという、フィクションの世界での後藤又兵衛の活躍の集大成とも言える内容となっています。

 そういう意味では非常にオーソドックスであって、さほど新味はないとも言えますが、しかし、己の信念と誇りを貫くためであれば、高禄も何のためらいもなく捨てて野に下り、浪々の身となりながらも、節を曲げず義を重んじ、一朝事あらば武人として敢然と立ち上がる又兵衛の生き様は痛快の一言で、実に気分が良いのです。

 私が後藤又兵衛という武将のことを知ったのは、横山光輝先生の名作「時の行者」の一エピソードにおいてで、その中で描かれた義侠心に富んだ快男児という後藤又兵衛像が刷り込まれていたのですが、本作の又兵衛のキャラクターは(いかにも講談らしいお茶目なところはあるものの)、まさにそのイメージ通りの快男児でありました。
(余談ですが横山先生、「兵馬地獄旅」の中でも、「時の行者」の時とほとんど同じキャラで後藤又兵衛を登場させていて、かなり後藤又兵衛好きなんじゃないかなと思っている次第)

 この後藤又兵衛という人物が一廉の武士であることを疑う人は――又兵衛の事績を知る人間であれば――いないと思いますが、しかし又兵衛が貫いた武士としての道は、「君君たらざれは、臣臣たらず」を地でいくような、後世の武士道とは明らかに異なる道と言えるでしょう。
 封建社会維持のツールと化したマゾヒズム武士道でもなく、単なる格好にあこがれるだけのファッション武士道でもなく――言ってみれば、自立した、自律できる個人の生き方としての誇り高き武士道が、ここにあるのではないでしょうか。

 このような又兵衛のキャラクターが、庶民の喝采を受けていたことを考えると、昔の方が民度が高かったんじゃないの、とか思ってしまうのですが、これは蛇足でありますな。


「後藤又兵衛」(講談名作文庫)

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