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2006.03.16

八犬伝特集その十の三 「聖八犬伝 巻之三 対牛楼の仇討」

 八犬伝特集その十の続き、「聖八犬伝」の第三巻は、一度は一つ所に集まった四人の犬士が、関東に散らばり、それぞれの冒険を繰り広げていくことになります。

 本作は原作で言えば、犬坂毛野の初登場、対牛楼の仇討ちまでが描かれていますが、中心となって活躍するのは、気は優しくて力持ちの犬田小文吾。その直前の、これまた初登場の毒婦・船虫のエピソードにも絡んでくるだけに、この巻の半分以上は小文吾の活躍を描いたもの、と言ってもいいかもしれません。
 考えてみれば小文吾、かなり陰影に富んだ人物造形にアレンジされている本作の八犬士の中では、一番と言っていいほどの素直なキャラクター。混沌とした関東平野の中で繰り広げられる物語の中では、それが逆に異彩を放つように見えないでもないのがユニークなところであります。

 では他の八犬士は、と言えば、前巻でも少し語られていましたが、元不良少年(!)の犬川荘助が、子供ばかりの義賊団を率いて大暴れすると思えば、犬山道節は、自分の一族を皆殺しにした(と信じている)太田道灌を討つため、単身テロ活動を敢行。そして、初登場の毛野は、馬加大記を仇とするところは同じですが、その正体は何と何と…と、物語も半ばを過ぎたこの巻になって、オリジナル展開が目立ち始めました。
 もちろん、それはこの物語が勢いに乗り始めたということの裏返しでもあって、私としては、どれだけ八犬伝をアレンジしてくれるのか、むしろ楽しみであります。

 また、何よりも最大の驚きは、八犬伝物語で異彩を放つ悪役の一人・蟇田素藤が早くも登場すること。そしてその正体が、これまた八犬伝ではおなじみのあの人物の後身とくれば、やってくれたなあと嬉しくもなるものです。
 おそらくは、こればかりは原作同様、素藤は里見家の大敵として立ち塞がってくれるのではないでしょうか。

 そして、関東の梟雄・太田道灌も、八犬士を討ち滅ぼすよう、妖尼・妙椿(!)に吹き込まれ、これまた八犬士たちの前に立ち塞がる模様。
 虚構の大敵と実在の大敵、二つの大敵を向こうに回して、果たして八犬士たちの冒険行やいかに――


「聖八犬伝 巻之三 対牛楼の仇討」(鳥海永行 電撃文庫) bk1


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