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2006.03.09

「コウヤの伝説」 少年たちはコウヤを目指す


 ロマンスの色濃い時代伝奇「業多姫」シリーズの時海結以と、「コミック戦国マガジン」でフレッシュな作品を描いてきたゆづか正成のコンビによる、児童向け時代ファンタジー。鎌倉幕府滅亡直後の時期を舞台に、それぞれの運命を背負った少年少女が、神の野「コウヤ」で繰り広げる冒険を描いた作品です。
 文章もイラストも、どちらも気になるクリエイターの方だったので楽しみにしていたのですが、期待通りなかなかに楽しめる作品でありましたよ。

 最後の執権・北条高時の子で、寺でその存在を隠して育てられたきじゅ丸。北条家に仕える武士の子で、自分も戦場で戦うことを夢見る少女・みさ可。そして、戦乱で両親を失い、病弱な弟を育てるために奔走する平民の子・吾郎。この生まれも育ちも、立場も信条も違う三人の子供たちが、本作の主人公であります。

 それまで全く交わることなく暮らしながら、幕府滅亡の混乱の中で出会った三人が、伝説の金竜に導かれて辿り着いたのは、神の力が眠るという禁断の地、コウヤ。しかし彼らだけではなく、コウヤの力を奪わんとする帝方のバサラなる怪人たちまでもがコウヤに入り込み、吾郎とみさ可に、他者を斬りたくなるという呪いをかけてしまいます。
 更にきじゅ丸の手には彼を血塗られた運命に導かんとする妖刀・鬼丸があり、二巻目では冒頭で新たな仲間として彼らより更に幼い子供・いぶき(その正体は後醍醐天皇の皇子・世良親王――ってまたずいぶんと珍しい人物を…史実ではこの時既に故人ですが)が加わり、いよいよ状況はややこしいことに。

 吾郎は侍の争いで両親を失い、みさ可はきじゅ丸を守って父を失い、きじゅ丸は帝方に刃を向ける運命を背負わされ、いぶきはその帝の皇子…と、一歩間違えれば大変な惨劇になりかねない人間関係ですが、そこは子供たちの素直さというべきでしょうか。仲違いはしつつも、コウヤの力を奪おうとするバサラを阻むため、三人+1の冒険が始まります。

 正直なところ、コウヤという特殊な舞台設定の解説のために金竜がいちいち出張ってくるのが物語のテンポを削いでいる部分はあるのですが(例えていうならば、自分が操作するよりもデモ画面を見ている時間の方が長いTVゲームのような感覚)、しかし二巻までで基本的な設定は出揃ったようなので、これからが本番というところなのでしょう(というか、対象年齢から二回りも上のおっさんがあれこれ言う事じゃないですな)。

 子供でなければ体験できない、そして子供の目を通してしか描けない物語というものは、確かにあると思いますが、本作がそんな物語として、これから発展することを大いに期待しますし、この先の展開を楽しみにしているところです。


 …それにしても、子供の頃親しんだフォア文庫がまだ存在している――どころかバリバリと新刊が出ていることになんだかとても嬉しくなったことですよ。


「コウヤの伝説 1 金色の竜」(時海結以 フォア文庫) Amazon bk1
「コウヤの伝説 2 まもりの刀」(時海結以 フォア文庫) Amazon bk1

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