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2006.04.17

「KAIKETSU!赤頭巾侍」 赤頭巾侍、人の世の狼を斬る!?


 鯨統一郎氏による、正義に燃える覆面の剣士を主人公にした連作時代ミステリ(…と言ってよいのかしら)の怪…いや快作であります。
 主人公・久留里一太郎は、父の創始した津無時円風流を操る無敵の浪人剣士。普段は寺子屋で子供たちを教えている一太郎ですが、江戸で次々と巻き起こる無法な事件に彼の怒りが頂点に達したとき! 彼は赤頭巾に顔を隠して、人間の皮を被った狼をバッサバッサと斬り倒す赤頭巾侍となるのです。なるんですが…

 格好良く悪を倒して気分もすっきり…と思いきや、そこで顔見知りの同心から知らされるのは、アリバイやら何やらで、斬った相手が実は犯人ではなかった!? というショッキングな「事実」。これじゃ俺って単なる殺人鬼…という訳で頭をフル回転させた一太郎が、「事実」の背後に隠された「真実」を見破ってめでたしめでだし(?)というのが本作の毎度のパターンとなっています。

 いや、本当に呆れるのを通り越して感心するくらい毎回毎回おんなじパターンで物語が展開される本作。作中の雰囲気や作品としての完成度等、全てをひっくるめて一言で表するとすれば、「ユルい」という言葉が一番しっくりくる作品であります。表紙イラストを唐沢なをきが担当しているのも伊達じゃない(?)。
 時代小説としても、推理小説としても、合わない人は徹底的に合わないだろうな、と正直なところ感じます。

 しかしこのユルさ、私にとっては決して不快なものではありませんでした。そりゃあ作品毎のトリックには苦しいものもありますが(特に最終話のはヒデエ)、しかし二段、三段返しで展開していく物語はなかなかに面白いですし、一太郎をはじめとする登場人物たちの微妙な間の抜けっぷりが、実はかなり重い・黒い各話のストーリーの印象を、うまく中和していると言えます。

 ちなみに本作の登場人物中、もっとも破壊力があるのは、間違いなく一太郎の顔見知りの同心・小田左右衛門丞和正。一太郎に冷厳な「事実」を突きつける役のこのお方、冒頭数話はごく普通のお堅い人物に見えましたが、実は一太郎のことを…というとんでもない人物であることが途中で判明。以下、登場するたびに、切ない胸の内をどこかで聞いたようなフレーズ(ヒント:名前)に乗せて一人口ずさむという怪キャラとしての地位を、作中で確立するのでした。
 いや、この人についても、正直、途中でネタが苦しくなってくるのですが、それでもこのキャラ立ちは素晴らしい。

 最終話で、探し求めていた父の仇を倒して江戸を離れる一太郎の姿を描いて、ひとまずの終わりを告げる本作。しかし、ここまできたらユルさと繰り返しギャグをとことんまで極めて欲しいところ。
 いつの日かまた、赤頭巾侍の勇姿と――あてが外れて真っ青になる一太郎の顔、そして切なくため息をつく小田様に会いたいと感じた次第。


「KAIKETSU!赤頭巾侍」(鯨統一郎 徳間書店) Amazon bk1

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