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2006.04.20

「雨柳堂夢咄」其ノ十一 変わらず在り続ける物語


 実に2年ぶりの「雨柳堂夢咄」最新巻。前の巻で物語にひとまずの決着のついた贋作師の篁氏もつくろい師の柚月さんも今回は出番なしで、純粋に、雨柳堂の蓮君を狂言回しに、骨董とそれを取り巻く人々(ヒト以外もあり)の物語が描かれているというシリーズ初期に近い味わいとなっています。

 この巻では比較的掌編に近い作品も幾つか収録されており、全体としての読み応えはちょっとあっさり目ではありますが、しかしそれと作品の完成度はもちろん別の話。ぐっと来る泣かせの人間ドラマあり、ミステリアスな物語あり、コメディータッチの奇譚あり…と、バラエティに富んだ構成で楽しませてくれます。

 冒頭に書いたとおり、一つの長編として本作に流れと動きを与えていた篁と柚月の二人が登場しないことで、全体の流れとしては留まって動かないのですが、しかしそれが欠点にならないのはこの作品の読者であればご存じの通り。
 時の流れと無縁な――いや、時の流れが凝縮されたかのように変わらず存在する骨董品たちと同様、変わらないことこそがむしろ重要であり、味わいとなるものが、世の中には間違いなくあるのだと思います。

 もちろん、そんな世界を成立させることができるのは、作者の確かな筆力あってのこと。本作では、美しい美術品や妖しくユーモラスな人外のもの、佳人や美男子などが、活き活きと存在感を持って描かれているのはもちろんですが、それ以上に、登場人物たちの浮かべる表情それぞれが、実に見事で、心動かされるものがあります。
 厳格なヒロインの養父が見せた一瞬の表情が大きな感動を生む「秋の鈴音」、高慢な姫人形が人間以上に豊かな表情を見せる掌編「銀の台・金の盞」など、読んでいてハッとさせられるものがあったことです。

 いずれにせよ、時の止まったような世界で変わらず続く優しい物語である本作。雨柳堂の佇まい同様、いつ訪れても安心できる世界が、ここにはあります。


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