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2006.04.15

「手習重兵衛 天狗変」 これまさに大団円


 全六巻の「手習重兵衛」シリーズも本作で完結。前巻で故郷の諏訪に帰った重兵衛が、主家とりつぶしの陰謀を巡らせる謎の天狗面一党を相手に、最後の大活躍を見せます。

 遂に故郷である諏訪に帰り着いた重兵衛。が、故郷の人々は、罠にかかったとはいえ友を斬って出奔した重兵衛に対し、非常に冷たい態度で当たります。そんな人々の態度に憤りと哀しみを覚えつつも、しかし侍を捨てることを決意した重兵衛は、新しい生に踏み出そうとするのですが――
 そこに影を落とすのは、これまで重兵衛たちを抹殺するために数々の陰謀を巡らせてきた諏訪忍びの一党と、彼らを操る謎の天狗面の男。更には宿敵・遠藤恒之助もまた、新しい一歩を踏み出すために重兵衛を斬ろうと狙います。

 が、天狗面の狙いは更に深いところに――重兵衛の主家を取り潰しに導かんとするところにありました。ここで面白いのは、天狗面の陰謀遂行のために、重兵衛のかつての主家が諏訪であることに、きちんとした意味が持たされていること。詳しくは書けませんが、なるほど、この手があったか、と陰謀が明かされた時には大いに感心いたしました。この辺り、一貫して剣豪ミステリをものしてこられた作者の巧みな業前と申せましょうか。

 そして遂に発動した天狗面の計画の前に、風前の灯火と思われた諏訪家の命運ですが、もちろん重兵衛たちが黙っているはずがない。苦心の果てに敵の陰謀の正体を掴み(ここで反撃の糸口を見つけるのが、ぼんくら同心の河上惣三郎というのがシリーズファンには何とも嬉しいところ)、後は一気にクライマックスの大殺陣になだれ込みます。

 まあ、折角江戸から駆けつけたのに、その大殺陣に加われずお留守番で終わってしまった人がいたり、結局人捜し屋の出番が短編一作しかなかったり、師匠の角右衛門の恋話は不明のままだったり(と、これは後に意外な形で語られるのですが)と、微妙に残念なところがなくもないですが、まずは見事というほかない大団円、これで文句を言ったら時代劇の神様にバチを当てられるでしょう。
 それどころかむしろ、続編を期待したくなる本シリーズではありますが、まずはこれにて全六巻の完結。
 設定的にはまだまだ続けられるように思えるシリーズですが、本作での重兵衛の決断を思えば、これ以上の戦いを彼に求めるのは酷というものでしょう。まずはこの痛快な作品を最後まで読むことができたことに感謝したいと思います。


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