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2006.04.07

「秘剣孤座」 剣士独り座す


 佐伯泰英先生の「秘剣」シリーズ第四弾は、前巻で描かれた徳川光圀と、柳沢吉保&水戸家の反光圀派の暗闘がいよいよ本格化。光圀の食客となった主人公・大安寺一松も、否応なしにその渦中に巻き込まれていくことになります。

 尤も、不動の巌の如き存在感を持つようになった一松は、繰り広げられる暗闘の中でも変わることなく剣を磨く日々。前巻辺りから感じられることですが、時に侮蔑の意を込めて、時には親しみを込めて「偽侍」と呼ばれる一松の方が、権力闘争に明け暮れ、あるいは己よりも弱い立場にある者を踏みつけにして顧みない生まれながらの武士たちよりも、遙かに真の武士らしく見えてくるのが面白いところです。

 そしてこの巻では、ついに一松が一家を――流浪の旅の合間に立ち寄る仮初めの宿とはいえ――構えることに。孤独の中に生まれ育った彼が、守りたいもの、守るべきものを得てどのように変わっていくのか、気になるところです。
 なお、この巻で彼が編み出す剣は、これまでの激しい動きを基本とした技とは大きく異なる、静の姿勢に始まる秘剣・孤座でありますが、この新たなる剣が、そのまま彼の変化しつつある生き様を映しているというのは、あながち穿った見方でもないでしょう。
 それにしても、一松の初登場時における「これだけ感情移入できない主人公も珍しい」という印象は、この巻までですっかり拭い去られた感があります。

 厳しいことを言えば、シリーズ初めからの宿敵である薩摩藩が、場繋ぎ的な便利な敵役扱いになってしまっているのが気になるところではありますが、今の一松を描き出すには、水戸藩の暗闘の中の方がより似合っているように思えますので、それもまあやむなしかもしれません。

 深みという点では他の作品に一歩譲るかもしれませんが、続刊が気になる作品であることは間違いありません。


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