« 今週の「Y十M 柳生忍法帖」 勝利の女神見参! | トップページ | 今週の「影風魔ハヤセ」とおまけ »

2006.06.14

「夢幻の剣」 悲劇と別れの果てに得たものは

 中国を舞台とした恋愛アクションもので知られる作者が、足利義教の時代を舞台に描いた時代アクション。無頼のヒーロー・夢路流之介が、己の実家である地方豪族・御櫛笥家を巡る暗闘に巻き込まれて死闘を繰り広げます。

 流之介は、赤子の頃に捨てられていたのを盗賊の頭領に拾われ、気侭に育った美青年。裏切りにより育ての親を初めとして仲間を失った彼は、ただ一人生き残ったところを謎の仙人・紅夢斎に救われ、五年の修行の後に、実の親を求めて旅に出ます。
 憎き裏切り者を討って京に出た流之介は、そこで自分が十数年前に鷹にさらわれた御櫛笥家の長子であったことを知ります。が、御櫛笥家は、かつて滅ぼした高辻家の残党の度重なる襲撃を受けて青息吐息。かくてなかば無理矢理御櫛笥家に誘われた流之介は、高辻家の遺児・阿修羅の操率いる恒河沙組の襲撃を退けつつ、御櫛笥家に伝わるという秘宝を探すために奔走する羽目に…というのがあらすじであります。

 全二巻の本作、第一巻のうちはあまりノれなかったというのが正直なところ。脳天気で自信過剰で女好きの流之介のキャラクターは、ある意味類型的で、あまり魅力や親しみが持てませんでしたし、ストーリー的にもよくあるパターンの作品なのかな、と思っていたのですが…
 第二巻に入って、その印象も少しずつ変わっていきました。気侭な流浪の旅暮らしから、突然一大名家の存亡を背負わされ、愛する者を犠牲にしてまで戦い続ける中で、少しずつ、この世界で生きていくことの重さ・苦さを知っていく流之介の姿には、単なる書き割りでないキャラクターの息吹を感じることができるようになりました。
 また、そんな流之介が、幾多の死闘を繰り広げながらも、己のネガとも言うべき存在である阿修羅の操に惹かれ、そして彼女もまた流之介に惹かれていくのも、頷けるところでありました。

 そして…幾多の戦いと、いくつもの悲劇と別れの果てにようやく彼らは小さな幸せを掴むのですが――ラストに来てとんでもない真っ黒などんでん返しが来たのには驚かされました。いやもう、このラストのためだけに読む価値がある、などとはさすがに言いませんが、一瞬頭の中が真っ白になるような驚きでしたよ。

 室町時代を舞台にした必然性があまり感じ取れなかったのは残念ですが、それなりに楽しむことができた作品でありました。


「夢幻の剣」全2巻(藤水名子 WANI NOVELS) 妖伝花影抄「春霞の章」 Amazon bk1/ 妖伝花影抄「昊天の章」 Amazon bk1

|

« 今週の「Y十M 柳生忍法帖」 勝利の女神見参! | トップページ | 今週の「影風魔ハヤセ」とおまけ »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/13655/10516556

この記事へのトラックバック一覧です: 「夢幻の剣」 悲劇と別れの果てに得たものは:

« 今週の「Y十M 柳生忍法帖」 勝利の女神見参! | トップページ | 今週の「影風魔ハヤセ」とおまけ »