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2006.06.19

「楚留香 蝙蝠伝奇」上巻 怪盗紳士、怪事件に挑む

 陸小鳳のおかげで古龍熱がぶり返したので、古龍の既刊をも一度チェック&紹介しますよ。
 まずは陸小鳳と並ぶシリーズヒーロー楚留香シリーズの「蝙蝠伝奇」の上巻。死んだはずの少女が、別人の魂を宿して復活したという「借屍還魂」の謎に怪盗紳士・楚留香が挑みます。

 本作の主人公たる楚留香は、盗賊の元帥、「盗帥」の異名を取るほどの凄腕の義賊。見た目は瀟洒な美男子ですが、軽功(体を軽くして跳び、走る武術の一種。香港映画でワイヤーアクションですっ飛ぶ様を想像していただければよろしいかと)の腕は天下一品で、その侠気と冒険心から江湖で知らぬものとてない存在であります。

 物語は、その楚留香が旧知の友人・左軽候の館を訪れるところから始まります。折しも館では、左軽候の最愛の娘が、原因不明の病で息を引き取ろうとしていたところ。が、楚留香らの眼前で息絶えたはずの娘が、別の少女の魂を宿したとしか思えない有様で復活するという怪事が発生します。
 これぞ伝説の怪現象「借屍還魂」か!? と驚く一同ですが、その身に宿ったと思しき少女の魂が、左軽候の宿敵の剣客・薛衣人の縁戚の娘の名を名乗ったことからさらに事態はややこしいことに。
 かくして楚留香は「借屍還魂」の謎を追って、血衣人の異名を持つ凄腕・薛衣人のもとへ赴き、件の娘がほぼ同時期に確かに亡くなったことを知るのですが、そこに更なる怪事件が…という、ホラーミステリタッチの作品となっております。

 以前も述べたように、ミステリ色の強いストーリー展開が特長の古龍作品らしく、本作でも一つの謎が新たなる謎を呼び、また、次から次へと登場する怪人・妖人たちが物語をどんどんややこしくしてくれるのが楽しいところ。ぶっちゃけ、オチ自体は相当のバカミスっぷりなのですが、そこに至るまでに派手なアクションあり、ちょっと色っぽいシーンもあり(何せ楚留香氏も酒と美女をこよなく愛する古龍ヒーローですから)、十分以上に楽しむことができました。

 そしてラストは一波乱を予感させる事件が勃発、体を休める暇もなく楚留香は次の冒険へ…というところで物語は「蝙蝠伝奇」中巻・下巻に続きます。
 …実は本作、「蝙蝠伝奇」と銘打ちつつ、上巻のみ別の作品なのですね。上中下とあるうちのなぜ上巻のみ先に取り上げたか、不思議に思う方もいたかもしれませんが、こうした理由です。


 と、ここからはマニアの蛇足。上記の通り、単発として読むと楽しい作品なのですが、楚留香…というより古龍の本邦初訳が本作だった(そうだったんですよ)のが正しいチョイスであったかは正直なところ疑問符が付きます。
 楚留香が個性的で魅力的なヒーローであることは間違いないのですが、本作がシリーズ第一作というわけでもなく、また、本作ではそのキャラクター設定の要たる義賊としての活動がほぼ見られない(つまり派手な盗みをしない)というのはちょっと苦しい。 私は本シリーズの設定に予備知識を持っていたから良いのですが、そうでなければシリーズ特有の固有名詞・人物名に置いてけぼりをくったように思います。
 色々と事情はあったのでしょうし、もう何年も前のことではあるのですが、満を持して本邦に紹介された(と思える)金庸に比べると、ちょっと勿体なかったなあとファンとしては思うのでした。


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